26話 高速道路での攻防
「叔父さんすいません」
「いえいえ、奏介君。気にしないで」
後部座席に燐火と僕は座った。
時計を見ると、もう21時。家に帰るのは23時前後となるだろう。お腹も空いた。
「もう遅いから、高速道路で帰るよ」
「あ、お任せします」
「あたしお腹空いた!お腹と背中がくっついちゃう!」
「燐火は食いしん坊だな」
「奏介!乙女にそういうデリカシーのない事、言わない!」
「何処が乙女何だ!?」
「ははは。インターチェンジで何処かに寄ろう。今日は僕の奢りさ」
「やった♪一番高いの頼んじゃう!」
「はは………足りるかな………」
叔父さんは財布の中身を確認した。
結婚した男の財布は、中身が少ない。小遣いが減らされ、更にそこから、煙草、お酒、ジュースといった経費がかさむ。
一般的なサラリーマンの小遣いは3万円。
多いようで少ない。
例えば、ジュースを日に2本飲むと、200円かかる。それが20日とすると、4000円だ。
煙草も日に1箱とすると、480円。これは毎日吸うから、30日で12240円。
お酒も毎日2本とすると、250円。30日で7500円となる。発泡酒でだ。
小遣いは、もう殆ど残らない。
中間管理職ならば、部下に奢ったりしなくてはならず、財布は常に炎上だ。
高速道路に乗り、暫くして異変が起こる。
燐火が震えているのだ!肩を震わせ、ガタガタと歯の音を鳴らす。両腕を抱え、汗が尋常ではない!
「燐火!大丈夫か!?」
すると、燐火の震えはピタリと止まる!
ゆっくりこちらを見て、ニタリと笑った。
「な!?」
燐火は車の扉を開けた!
飛び降りようとする!それを僕は必死に止めるのだ!扉は全開になり、このままでは落ちて怪我する!いや、怪我するだけでは済まない!後方から来ている車に跳ねられ、死ぬかもしれないのだ!
「燐火!!やめろ!!」
「うひひひひ!!離して!あはははは!」
腕を掴んでいるが、それを振りほどこうとする!ヤバい!手が滑るのだ!もう片方の手で燐火の服を掴む!
「叔父さん!車を止めて下さい!!」
「奏介君!?どうなっているんだ!?」
「早く!ハザードたいて!車を止めて!」
「ダメだ!後方からの車が来る!次のインターチェンジまで!」
「そんな悠長な事言わないで下さい!早く!燐火が飛び降りてしまう!!」
叔父さんはハザードをたき、路肩に止めた。幸い、車を止めるスペースがあった。
が、ここで気を抜く訳にはいかない!
燐火を逃がせば、車に引かれる可能性がある!そして、このガードレールの下に落ちれば、間違いなく死ぬからだ!
「叔父さん!縛るモノありませんか!?何でもいいです!服でもタオルでも!!」
「そ、そんな!?」
「離せ!くそが!」
僕は燐火に抱き付いた!
顔や体を爪で引っ掛かれる!血塗れになりながら、燐火を強引に押さえ付けた!叔父さんがタオルを持って後部座席に来た。
「とりあえず足をくくりつけて!」
「ど、ど、とうすれば、いい!?」
「燐火が車に向かって行ったら、間違いなく引かれて死にますよ!早く!足をくくりつけて!」
「な、な、何で燐火がそんな事を!?」
「説明している暇はありません!娘を殺したいんですか!」
「ひぃ!?わ、分かった」
叔父さんは燐火に蹴られながら、タオルを結ぶ。
でも、そんな簡単にはいかない。燐火が暴れるからだ!僕は足でカニ挟みして、何とか動きを封じる!
「無限大にタオルを巻いて、真ん中に通す!」
「そ、奏介君!?私にはり、理解出来ない!?」
この忙しいのに!叔父さんは使えない!
僕の代わりに燐火を押さえる事は出来るのだろうか?叔父さんには無理そうだ。
「電話して!警察に!」
「け、け、警察!?奏介君!本気か??」
「さっさとしろ!!僕はもう10分も持ちませんよ!!」
「お父さん!助けて!お願い!奏介に襲われてる!!」
「騙されないで!こいつは燐火じゃありません!」
「あわ、あわ!私はどうすれば!?」
僕を振りほどき、燐火は外に飛び出した!
不味い!とりあえずスマホで警察に電話して、燐火を追いかけた!
燐火は走ってくる車に向かう!
ヤバい!ギリギリで燐火を避ける!向こう側のガードレールを登ろうとしているのだ!僕は燐火を捕まえる!
「離せ!犯される!助けて!」
「警察ですか!高速道路です!名賀白インター付近です!助けに来て下さい!」
『どうされましたか!?』
「緊急事態です!高速道路で!名賀白インターの登りです!今直ぐに来て下さい!お願いします!」
「奏介に犯される!警察さん!助けに!お願いします!」
30分後、警察に僕は捕まった。
燐火の叔父さんは、全く役に立たなくて、本当にイライラしたのだ。




