25話 忘れていた思い出
「何だって!?」
僕は慌てて、藤堂院さんの元に走る!
燐火の両親から電話が入った。昨日の夜から、燐火が居ないらしいのだ!
スマホにも出ない。
何処に行ったかも不明との事だ。
この事を藤堂院さんに説明する。
「何処かに行くアテはないのかい?」
「燐火の行きそうな場所は………」
GPSを探ってみるが、スマホの電源が切られていて、何も分からない。何処か行きそうな場所を考える。そういや、僕の部屋以外、思い付かない。
とりあえず、妹に電話して、部屋を見て貰う。
が、誰も居ないとの事。念の為、押し入れも探してくれと頼む。やはり居ないと言われた。
後は学校か。
「学校を探してこようと思う」
「鷲はこの辺りに居ると思うのじゃが」
僕は口に人差し指でシーのポーズを取る。
盗聴して、僕の行動を見ているだろう。ここに入らないのは、入れないからだと思う。
妹と伊集院さんに連絡し、学校へ誘き寄せようと考えた。
1時間後。
学校へ到着する。合流はせず、校内を捜索する事にした。
先ずは教室、音楽室、図書館、そして体育館と見て回ったが、誰も居なかったのだ。今日は日曜日。学生が来ているハズもない。クラブ活動は基本的に日曜日はお休みなのだ。大会間近でなければ、生徒は学校等、行きたくはないだろう。
体育館の倉庫を開く。
湿った香りが充満しており、真新しいボールの匂いがした。電気をつけると、そこには燐火が居たのだ。三角座りをして、僕の方を見上げた。
「探したぞ」
「………うん」
「帰るぞ」
「ねぇ…………」
「何?」
「ちょっと行きたい場所があるの」
「分かった。ここから遠いのか?」
「少しだけ」
僕は燐火に着いていく事にした。
学校を出て、2時間は歩いたと思う。何度も何処へ向かっているのか尋ねるが、何も言わない。無言での沈黙はかなり辛かった。
そこからバスに乗り、目的地へと辿り着く。
県内最大の公園だ。大きな滑り台が設置されており、大人でも怖いと有名である。辺りを見渡すと、ジャングルジムや鉄棒、ブランコ等がある。真ん中に大きな船のようなモノが置かれており、そこの中に入れる。勿論、甲板にも上がれ、頑張ればタイタニックポーズも出来そうだ。
「………燐火」
「奏介、ねぇ、覚えている?」
「ああ」
そう。ここは二人の思い出の場所だ。
燐火が初めて家出をした日。ここに訪れたのである。
僕も燐火に着いて行った。
二人での逃避行。まぁ、小学生の小さな反抗であるが。
両親に二人共、怒られた。
殴られはしなかったが、その時の事を鮮明に思い出す。僕はその時の事をスッカリ忘れていたのだ。
「あたしね。あの頃に戻りたいと思ってた」
燐火はジャングルジムに登り、一番上に座る。
もう外は薄暗く、公園には僕達2人だけだ。燐火を見上げ、何か言った方がいいのかと思う。が、気の効いた台詞等、出てくる程、僕は女の子慣れしていない。
「でも、奏介が居てくれて良かった。あたしは…………奏介が好き」
素直に喜べなかった。
燐火は多重人格となっている。このままだと、また殺されてかねない。この問題を何とかしなければ、僕の日常は戻って来ないのだ。
「燐火、そろそろ帰ろうか」
「………うん。そだね」
ジャングルジムから降りて、燐火は笑った。
帰る手段だが、もうバスもない。電車はここからでは遠い。親に電話して迎えに来て貰おうか?
「親に電話するから。迎えに来て貰うよ」
「ああ、頼む」
燐火はスマホを取り出し、連絡した。
1時間経過して、燐火の親が車で迎えに来たのだ。




