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神と悪魔を差し置いて最強を名乗る。  作者: あるみホイル
種族総合闘技大会編
8/17

対談

魂の悪魔ヤボラの出現により地上の妖精族の村は壊滅した。

妖精族は事件の真相を知るため一馬と煌牙を地下街の妖精族部隊の一室で尋問を行っていた。


「では、その悪魔は自分を魂の悪魔ヤボラだと言ったのか?」

「ええ、さっきからそう言ってるじゃないですか」


薄暗い部屋には二本のロウソクがユラユラと小さい火柱を立て微かに明かりを拡散させる。

木で作られた椅子に一馬と煌牙は座らされ、一人の妖精に尋問を幾度なく繰り返され中々解放してくれない。二人は妖精族に危害を加えたわけではなく悪魔から村を守ったはずなのだがこの状況はいかにも二人が犯罪者のように見える。

その繰り返される尋問にさすがに耐えきれずついつい一馬は言葉と態度が悪くなる。


「いや、すまんな。事実確認は絶対に間違ってはいけないからな」

「それでもその質問五回ぐらいしてますよ」

「まぁまぁ、あと少し辛抱してくれ。」

妖精は低い姿勢で一馬をなだめ次の質問に移る。


「え〜と、じゃヤボラは殺された悪魔の報復をしに来て手当たり次第に虐殺していったと?」

「でしょうね、それらしい事も言ってたしな」

「う〜ん。そうか」

妖精は目を細め少し考える仕草をしながら再び立て続けに質問をする。


「情報によれば君たちはかなり強いと聞いているんだが、なぜヤボラを逃がしたの?」

一馬はその質問を聞き俯いてその答えに回答する。

「少し手合わせをしたが今の俺たち二人じゃ奴を倒すことなんてできないと直感がそう教えてくれたからだ」

「君たちよりヤボラは強いと?」

「あぁ、奴は俺たちの攻撃をかわしただけだがその少しのやりとりでも奴の力量は分かった。さすがは悪魔界の幹部なだけはある。」

一馬はそう答えると俯いていた顔を上げ同じく木で作られた机に肘を置き頬杖をつく。


魂の悪魔。当初その名前を聞いた時は大袈裟な名前だと二人は思っていた。しかし魂の悪魔の名の由来の意味を本当の意味で理解した時、二人は戦慄を憶えていた。

ヤボラが現れた瞬間二人は作戦も考えずただ怒りに任せ襲撃した結果見事にかわされた。最初に攻撃した煌牙はヤボラの顔面を狙っていた。がしかしパンチはヤボラの顔面には当たらず空を切る。その時、ヤボラは交差する煌牙の顔を直視し目があっていた。そんな一瞬の時間で煌牙はまるで魂を抜かれた感覚に陥っていたが一馬に悟られぬようヤボラと会話し余裕なように実況をしていたがヤボラには近づけなかった。

一馬が戦慄を憶えたのは砂ぼこりが空中を蔓延していた時だ。ヤボラは確かに地面に叩きつけられたはずなのだがいつの間にか二人の背後をとって煌牙の言葉を否定した。その時のヤボラは目を見開き煌牙の時同様一馬を直視した。

悪魔の恐怖をとてつもなく感じ取った二人は勝てないと悟った。

勝負していないのに最初から負けるなんて決めつけるなとは言うが例えば産まれたばかりの赤子と耐え難い修練をしてきた格闘家が闘えばまず赤子が勝つと言う人はいないだろう。まさに今回はそれだったのだ。二人は赤子同然だった。ヤボラはそんな赤子を少しからかっただけなのかもしれない。


「よし、お疲れ様。これで終わりだよ。」

「はぁ〜やっと終わった」

二人は終わったすぐに椅子から立ち上がり薄暗い部屋を出ようとする。

その時、妖精が思い出したように一言そえる。


「あぁ、そうそう。村長が終わったら来て欲しいって言ってたよ」

煌牙はそれを聞くとダルそうに返事をする。

「りょーかい・・・」





何時間ぶりに外の空気を吸った二人は両手を上げながら背伸びをする。外と言ってもここは地下街だからカビ臭い土の香りだけが鼻を通る。そんな中二人は村長ガンタイルのもとに出向くため休憩なしで歩きだす。


「あぁ〜疲れた。腹減ったな」

一馬がお腹をさすりながら言う。


「そうだな、もう夜だからなガンタイルの件が終わったら飯にしようぜ」

「そーいや、昼に食べた飯代払ってないよな」

「あん時はパニック状態だったからな、後で行ってついでに飯食って帰るか」

「ん?帰るってどこに帰るんだよ?」

「ある動物は産まれた時最初に見た動物を親と勘違いするらしい。つまりだ最初の村は龍人族の村だからそこに帰る」

「待てよ、龍人族の村に帰るのはいいがまだ妖精族の魔法を見てないぞ」

「あっ、そうだったな」

煌牙は頭をポリポリと掻きながら照れ隠しする。

元々妖精族の村に来た理由が種族総合闘技大会のための予習のためだったがヤボラとの闘いでその事などすっかり忘れていたようだった。


「とりあえず今日はこの村で泊まっていこう。で明日クレアにでも頼んで魔法を見せてもらおうぜ」

「そうだな。今日は疲れたし飛ぶ気力もないからな」


二人が静寂を取り戻した地下街を歩きながら今後の予定を調整しているとあっという間に屋敷に着いていた。

屋敷の作りは龍人族の村長の屋敷とほとんど一緒であった。おそらく種族同盟により分かりやすくしているのかもしれない。

その屋敷の玄関にガンタイルが杖を支えに二人を待っていた。


「来たか来たか、疲れたじゃろ?中に入ってお茶でもせんか」

ガンタイルは開きっぱなしにしていた玄関を通り部屋に案内する。

外装内装ともに龍人族の屋敷と同じ作りでガンタイルの進む方向からして龍人族の村長がいた部屋と同じ部屋なのだろう。

二人はガンタイルの後についていき予想がついていた部屋に入る。

もう夜だから最小限の護衛の妖精達しかいなかったが相変わらず物騒な武器をチラつかせて立っている。

村長の部屋に入るなり村長が隣の部屋に行き二人はガンタイルが出てくるのを立って待っていた。

少し待ってからガンタイルが部屋から出てくると透明なガラスのような急須に褐色の液体を入れ持ってきた。


「ほれお主ら座らんか」


ガンタイルは急須を机に置き食器棚から白いティーカップを片手で三つ持ち急須を取り器用にこぼさずに入れる。注がれたティーカップからは湯気が立ちほのかに香る薬草のような匂いが部屋を充満する。


「ほい、妖精族特製よ。しかと味わってみよ」

一馬と煌牙はティーカップを手にとりまずは匂いを確かめる。

一番近い匂いはどくだみ茶独特の匂いだろう。最近の若い人はどくだみ茶を飲むことなどするだろうか?じいちゃんばあちゃんぐらいならまだ飲む習慣があるかもしれないが一馬と煌牙の同年代ではそうそういないだろう。だが一馬と煌牙は小学校の時、一時期だけ掃除担当場所が校庭で草引きをしていた。そんな時雑草だと思い引き抜いてみると手がすごく臭くなり先生に理由を尋ねるとそれはドクダミだと教えられついでに薬草で漢方として飲まれていると聞き校庭で引き抜いたドクダミを親に渡して加工してもらい飲んでみた。

二人は口を揃えてマズイ!と言いそれ以来どくだみ茶を飲んだことはなかったがまさかこの世界で再び飲むことになるとは思いもよらなかった。

二人は我慢しながら薬草茶を一気に飲み干し渋そうな顔でティーカップを机に置く。


「一馬に煌牙。今日はお主らに世話になったの、お前達が駆けつけていなければ今頃この村も壊滅してたかもやしれん」

「なのに何時間も薄暗い部屋に閉じ込めやがって、結果相応の報酬ぐらいあってもいいんじゃないか?」

煌牙は不貞腐れ、まだ根にもっている。


「いやぁ、気を悪くしたならお詫びしよう。だがの悪魔達の情報は金より大事なことなのだよ。」

「金よりだったらたいして重要でもないじゃないか」

「ふむ、そうかもな、だが分かってくれ民衆は悪魔に怯え恐怖しているのだ。些細な事でも悪魔について知って対処していきたいのだ。」

ガンタイルの言う対処とは一体どのくらいの対処なのだろうか?悪魔達から逃げる?闘う?死ぬ?または共存するのか?曖昧な意味で使われた言葉に煌牙は余計に苛立っていた。

だが一番苛立っていた理由は最強だと思っていた自分が最強ではなかったという事実だ。


一馬と煌牙は特に負けず嫌いだ。

二人は幼馴染で幼稚園の頃からの付き合いであり親友である。だが親友だからこそ相手をよく知っており何より弱点も認知していた。

幼い頃からの付き合いにより二人は事あるごとに競い合いで優位を決めていた時期もあった。

学業、運動、ゲーム、知識。

よく知る相手だからこそ負けた時の悔しさ、勝った時の嬉しさがあった。

そんな風に二人は共に競い合い育ち生きてきた。だから今回悪魔一人に負けた悔しさは相当なものだったのかもしれない。


「まぁ、煌牙苛立つ理由も分かるが勝てなかったのは俺たちが自惚れていたからかもしれない」

「自惚れ?ハッ、そんなの糞食らえだ。」

「認めたくないのも分かる。だが勝てなかったのは事実で俺たちが弱かったのも事実だ・・・」

煌牙がそれを聞くと軽く舌打ちをして腕を組み背もたれに寄りかかる。


そんな時にガンタイルはさらに絶望的な発言をし、二人から希望を無くしてしまった。


「実はの、昔話によれば悪魔は一度も神に勝てた事はなかったそうじゃ。」


この世界の森羅万象が生まれてから何千何億年経過しているかは定かではないが神と悪魔は幾度無く戦争をして結果悪魔は神より優位な関係になったことは一度もない。それはつまり悪魔より神の方が圧倒的に強いということだ。

一馬と煌牙がこの世界に来た理由は世界大統領になるという極めて単純な理由だったのだが、契約内容は神と悪魔を倒すこと。これも極めて単純なのだが今回のヤボラの件やガンタイルの今の発言は二人を絶望させるのには十分すぎるほどだ。


二人がガンタイルの言葉を聞き絶望感に追いやられていた時、ある一言の光明が二人を救う。


「と、もう一つあるのだがの、ワシも未だ見たことはないし存在場所も不明なのだがこの世界に《神魔の偶像》という自の魂を捧げる代わりにこの世界で最も強い存在にしてくれる神殺しの銅像があるらしいのぉ」


神殺し・・・

中学三年の時一馬と煌牙はいわゆる中二病で神々の神話や武器などをよく調べていた。

その時本にあった《ロンギヌスの槍》という武器があった。それは磔刑に処せられた十字架上のイエス・キリストの死を確認するため、わき腹を刺したとされる槍である。

ロンギヌスの槍には、《所有する者に世界を制する力を与える》また、逆に《失うと所有者は滅びる》という言い伝えがありロンギヌスの槍は神殺しの槍とも呼ばれていた。

一馬と煌牙は神殺しというワードに食いつき二人は同時にロンギヌスの槍が頭に浮かんだ。

だがこの世界には神話は存在せずこの世界には神が実在し悪魔が実在している。だから神話という何かを信じずにはいられない人間とは違い妖精族や龍人族はただ神は世界を救う都合のいい種族としか考えていない。

だが一馬と煌牙は神殺しというインモラルな行為がたまらなく響きがよく聞こえた。


「命の代わりに最強になれるか、ハイリスクハイリターンだな。いやどうせ死ぬからハイリスクじゃなくてデッドリスクだな。」

「おいおい一馬縁起の悪いこと言うなよな。死んだら夢もくそもねーじゃねーか」

「ああ、分かってる。それは使わない」


ガンタイルは二人の会話を聞きながらヒゲを撫でどくだみ茶もどきを音を立てながらすする。そしてガンタイルは立ち上がり悪魔の攻勢を忘れたかのように楽しんでいる街を眺めていた。


「一馬に煌牙よ、ワシはお主ら人間を過小評価していたかもやしれん。お主ら人間は賢い種族だったようだのぉ、ワシは闘いを好んでする輩はどうしても好きにはなれん。最初お主らの話を聞いた時ただの力自慢な種族と思っていたがどうも違ったようだ。普通は神魔の偶像の話をすれば誰であろうと探そうとしていたがお主ら探そうとはしなかった。力だけが世界を制すと思い込んでる奴ほど力に溺れ醜く変わっていくがお主らがそうならんことを祈ろう。」


ガンタイルの言葉にはどこか悲しいそうな感じがした。長く生きればそれだけ哀しみや喜びや絶望、希望と直面する。ガンタイルももうかなりの歳だというのが風貌だけで分かる。そんなガンタイルの言葉には色々な気持ちが込められているのも分かる。


「俺たちは死ににこの世界に来たわけじゃないしな。わざわざその力を借りなくてもどうにかしてみせるさ」

「ほっほっほっ。よきかな、よきかな」

「さて、俺らは腹が減ったしそろそろおいとまさせてもらうぜ」

「ほいほい。」


一馬は立ち上がったが煌牙は立ち上がらず俯いていた。不思議に思った一馬は煌牙の顔を覗き込む。するとスピースピーと寝息をたてながら煌牙は寝ていた。


「はっ、こいつ寝てやがる」

「ありゃ、そりゃ参ったのぉ」

「なんで俺がこいつを背負ってやらゃいかんだよ」

「もし、一馬よ今日は一階の客人用の寝室で夜を過ごすといいぞい」

「お?マジで?」

「おうおうマジでだぞ、一階にいる使いに聞けば案内してくれよう。」

「恩に着るぜ」

「お主らには感謝しなければならないからのぉ、ワシの性分でこんな事でも恩が返していかなければ気が済まんから今日はゆっくりして行け」


一馬は煌牙を背負いガンタイルの部屋を出て一階まで降りるとガンタイルの言う通り妖精の使いが玄関の出口で立っていた。


「すいません。客人用の寝室はどこですか?」


使いの妖精は黙って寝室の部屋を指差しそれ以来何も動かなかった。

一馬は使いの妖精が指差した部屋に行きドアノブを捻り部屋に入ると煌牙を乱暴にベッドに投げ隣にあるもう一つのベッドに腰を落としてから上半身をベッドに預ける。

ポリポリと頭を掻きながら天井を見上げているといつの間にか寝てしまっていた。

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