力の一端
「なぁ、煌牙武具の使用も認めるって言ってたけどどうする?」
「んぁ?武具なんか必要ねーだろ、俺らにはこれがあるからよ」煌牙は右腕をパンパンと叩き得意げな顔をしている。
龍人族の長、ドドルガムから色々な話を聞きだし龍討伐のための大会に出場することに決まりドドルガムが宿を手配してくれ龍人サイズの特大ベッドで二人はひとときの休息をとっていた。
「んなこと言ったって相手は剣やら槍やら持ってくるだろ、さすがに丸腰では身がいくらあっても足りないぞ」
「でも俺らは武器より素手のほうが威力あんだろ?」
「それは間違いないが俺らは龍人族みたいな硬い皮膚じゃないんだぞ?斬られたら腕は吹っ飛ぶ」
「じゃーガントレットみたいな籠手でも装備するか?防具とかあったらスピードに欠けるだろ?」
「うん、とりあえず最低限の防具だけにしてスピード重視にするか」
「あと、相手が妖精なら魔法とか使うんだろ?対策はどうするんだろうな?」
「魔法か・・・一回妖精族の魔法を見る必要があるな」
「龍人族に村があるなら他の種族にも村みたいなとこがあるだろう。妖精族の村に行ってみるか」
「そうだな、アッシュに教えてもらうか」
「よし!そうと決まれば早速行こうぜ!」
「おいおい、外を見てみろもう真っ暗だぞ」時刻は地球の時間では夕暮れを過ぎたあたりで七時ぐらいだろう。
「ちっ、この世界の秘境とかスゲーだろうな、空から見た感じでは地球とは全く違う原理があるようだったしな、もしかしたらそれで俺たちもあんなデカブツをぶっ倒せたんだろ」
「まさかあんな岩石の岩を吹っ飛ばせるとは思わなかったよ、なぁ試しに地面殴ってみるか?」
「おぉ!面白そうな実験だな!行こーぜ!」煌牙はベッドから勢いよく降り早歩きでドアを開けて一段一段が高い階段をジャンプしながら一階まで降り、宿主の人当たりのいい女性の龍人族に入り口を開けてもらう。
「どこ行くんだね?」
「ちょっとね!実験だよ実験!」
「実験?あんまり危険なことするんじゃないよ?」
「了解!すぐ帰ってくるから!」
煌牙の後ろについていき宿を後にした。空を見上げたら月ではないだろうとは思うが紫色と緑色、赤色に青色に輝く四つの惑星が同じ間隔で並行に横に並んでいる。
「うぉ〜、月が四つだ、見てみろ煌牙」
「ん?うぉ〜、月が四つだ、変な色してんなー」煌牙は四つ並ぶ月なのか惑星を一瞬だけみて言って歩きだす。
「煌牙はせっかちだよな、もう少し落ち着けよ」
「これが落ち着ついていられるか、一刻も早く実験したくてたまらないぜ」
「へっ、どこに言っても相変わらずだな」
「あぁ、いつも通りだろ」
龍人族の村を出てから少し深い森まで入っていき煌牙は電柱を何倍にも太くした大木の前で立ち止まった。
「どうした?煌牙?」
「実験はこれで決まりだな」
「あ?大木をなぎ倒すのか?」
「あぁ、デカブツを吹っ飛ばしたんだ試しに殴ってみようぜ」
「そうだな、それにしても太い木だな」
「これぐらいがちょうど言いだろ」
煌牙はそう言うと大木の前で腰をググッと下げ左手を前に突き出して右手を横腹あたりで構える。
「んあぁぁぁ!!!!」煌牙の右手から繰り出された正拳突きは大木の真ん中でぶつかり根っこごと吹っ飛んでいった。煌牙は首だけ後ろに振り返り二カッと笑う。
「一馬もやってみろよ」
「じゃーあの木に・・・」煌牙が殴り飛ばした隣の大木のやや後ろで大木に正面で向き合う。
「ふぅ〜、せい!」一馬は少し前に左足を出し前方に高く飛び上がり右にクルクルと横に回り二回転したあたりで右足で上段回し蹴りを繰り出す。ヒットした大木は蹴ったあたりのやや下辺りから割り箸が折られるようにバキバキと音を立てながら倒れる。
「540°でこの威力か、ならぶん回しの後ろ回し蹴りはどうかな?」
一馬は続けて隣の大木に左上段回し蹴りとのコンボで後ろ回し蹴りを大木に当てるつもりだったが距離感を誤り踵が少し幹に当たった。しかし回ったあと大木と真正面になり蹴った場所を見ると大木は後ろ回し蹴りにより部分的にえぐられていた。
一馬と煌牙の正拳突きや540°回し蹴りは物凄いスピードで放たれていて一般的な人間の遥か上のスピードを凌駕し普通の人間なら目で追うことは不可能なスピードで二人の物理的打撃は繰り出されていた。それはゴーレムと闘った時同様、本人達は気づいてはいない。
「やるな一馬、地球じゃ絶対こんなことできないぜ」
「そーだな、あっ!そうだ!」
「ん?どうした?」
「俺らゴーレムの攻撃から避けた時かなり飛んでたよな?思いっきり真上に飛んだらどんぐらい飛ぶんだろうな」
「あぁ、確かに」
一馬は腕やら首の骨をパキパキと鳴らしながら準備運動し最後に屈伸をして準備が完了し木々があまり密集していないとこを探して歩きあるとこで止まる。
「俺からやってみるよ、煌牙はそこで見てろよ」一馬は膝を曲げ垂直跳びをしてみた。ダンッ!と地面から勢いよく跳んだ一馬は大木のてっぺんを楽々通り越しまだ上昇し続ける。
「うぉー!スゲー!雲に届きそうだ!」遥か上空にまで上昇した一馬は月のような惑星に照らされた雲をも通り越しなおも上昇する。
「ちょっ・・・跳びすぎだろ、着地どうすんだよぉー!!!!」上昇しすぎて慌てだした一馬はこの高度から落下したら間違いなく死ぬと直感で理解した。雲を通り越してから十秒後、徐々にスピードが落ちてき遠近感により雲が手の中に収まるぐらいでようやく止まり、次は重力により落下していく。
「ど、どうすんだー!!!!」徐々に落ちるスピードが速くなるにつれ焦りも一緒に激しくなる。
雲を突き抜け地上が見え始めた時、ついに死んだと思い焦ることもなく目を瞑り落下する。
そしてついに一馬は地面に物凄いスピードで叩きつけられた。
一馬の身体が地面で一回跳ね、大木に当たり地面にゆっくり着地する。
「おい、大丈夫か?」煌牙は別に心配する素振りをみせず机の角で足の小指を当て悶絶している人を気づかう程度のトーンで言い、人差し指で背中をツンツンする。
すると一馬はバッと立ち上がり身体のいたるところ眺め手をパッパッと閉じたり開いたりしてから足をブラブラとする。
「おい、大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫どころか気分はアゲアゲだよ、見たか?俺雲も越えたんだぜ?しかもあのスピードから落下して無傷だ。不死身だぜ不死身」
「走り幅跳びとかしたらどんぐらい飛ぶんだろうな、逃げ足なら世界一じゃないか?」笑いながら煌牙は自分達の能力の一端を垣間見たことにより満足気な顔で腕組みをしている。
「さぁ、帰るか、飛んで」一馬が言う。それに便乗して煌牙も応える。
「あぁ、飛んで、帰るか」
「いくぞ〜」
少し助走をとりルーロス村に向かって飛んだ。
「すげーな、一馬!」
「あぁ、すげー!マジ夢みたいだな!」
「俺ら飛んでるんだぞ!」
「あぁ、飛んでる!もうルーロスに着くぞ!」
「はははっ、楽っのしぃー!!」
やや力の入れを間違え宿を通り越しドドルガムの屋敷に突っ込んでしまった。
「つぁ〜、痛てて、ってあんまり痛くねーぞ」
「あぁ、痛くないんだよ、空から落下した時も転んだぐらいの痛さしかなかったよ」
「へへっ、門番達に見つからない内においとましようぜ」
「そーだな、行くぞ煌牙」
「明日は朝一にアッシュの所にいって妖精族の村について聞いて妖精族の村に行こうぜ」
「妖精族か、あのフェアリーもいるのかもな」
「そうかもな」
ドドルガムの屋敷から抜け出し宿につくと入口をドンドンと叩き宿の主の女性龍人が扉を開いてくれた。
「おかえり二人とも」
「たっだいまぁー!」
「何かあったのかい?」
「まぁね!」煌牙は上機嫌に言い返し一段一段高い階段を上がる。この階段ホントに高い、軽自動車より高い階段で一段上がる毎に休憩しなければいけない。
高い階段を上がりようやく部屋に帰ってきた二人は特大ベットにダイブした。
「はぁー、まだ興奮が収まらないぜ」
「煌牙は一旦熱が入ると冷めるの遅いからな」
「今回についてはお前もだろ?」
「まぁな、こんな経験誰もできねーからな」
「俺らを除いてな」
「ふっ、俺は疲れた。すまんが先に寝かせてもらうぞ」
「そうだな、俺も寝るか」
一馬はランプによって部屋が明るくなっているからフッ!と息を吹きかけ部屋が一瞬で暗くなりベットに横になると直ぐに眠りについた。




