第6話:プレニルニウム
第三部隊の隊長であるライネルは咆哮を上げ、鋼の棍棒を振り回した。武器の両端に備わったトゲ付きの鉄球は、肉を引き裂き、骨を粉砕する威力を持っている。幅広の体躯に豊かな灰色の口髭を蓄えたその男は、肉体の力を最後の一滴まで振り絞って敵を押し返し、城の庭園へとわずかに侵入していた連中を、西の城壁の入り口の外へと叩き出した。
「【マックス・パワー】!」
・技:マックス・パワー
条件:なし
消費:20気(Ki)
説明:60秒間、使用者の身体能力を二倍にする。
注意:この技の負担に耐えるため、健康な肉体状態での使用が推奨される。
隊長は内なる『気』を練り上げた。男の筋肉が大きく膨れ上がり、鎧を内側からさらに押し広げる。棍棒の片端で地面を強く叩きつけると、二つの現象が同時に引き起こされた。衝撃波によってダークエルフたちを吹き飛ばし、同時に彼自身の体を地上から三メートルも宙へと跳ね上げたのだ。
落下の勢いのまま、ライネルは棍棒をハンマーのように振り下ろし、ミノタウロスの頭部を強打した。頭蓋骨を胴体の中へとめり込ませ、石畳の上に尻餅をつかせる。数秒後、ミノタウロスの巨体はそのまま横向きに倒れ込んだ。
ライネルは荒い息を吐きながら着地した。鎧の下の肉体は燃えるように熱く、滝のような汗にまみれている。この過剰な負荷をずっと維持することはできないと自覚している彼は、一歩退くと棍棒を振るい、入り口の枠組みを続けざまに打ち据えた。レンガと鋼の鉄格子が悲鳴を上げて崩れ落ち、通路を完全に塞ぐ。
技の効果が切れ、ライネルの筋肉が元の大きさに戻った。即座に猛烈な疲労感が襲いかかり、鎧がいっそう重く感じられたが、隊長は決して力を緩めようとはしなかった。
「点呼!」
ライネルは生き残っている部下の数を把握しようと命じたが、庭園に視線を走らせた瞬間、立っている戦士がほんの一握りしかいないことに気づいた。膝をついている者も多く、戦うにはあまりにも深い傷を負っている。ライネルの表情が暗く陰った。
「お前たち、城へ退いてどうにか身を隠せ。負傷者も連れていくのだ。忘れるな、我々は『連合王国』という名のベルトを繋ぎ止めるバックルなのだ。怯むことは断じて許されん!」
自分の激励の言葉が士気を高めるのに役立つかどうか、ライネルには分からなかったが、それを確かめるために留まっている余裕はなかった。隊長は残る入り口の救援へと走る。横目で城を見上げると、彼の表情はさらに暗くなった。もはや、奇跡でも起きない限り自分たちは助からないと確信していたからだ。
***
一方、王国の郊外――馬で二時間ほど離れた場所には、『大亀裂』が存在する。世界の傷口、あるいは大きく開かれた口のように見える深淵だ。王国よりも古くから存在する壊れた石橋が、地下に広がる領域への入り口となっている。そこは『アンダーダーク(幽暗地域)』として知られる場所で、冷たく湿っていることもあれば、臓腑が焼けるほど灼熱になることもある、星々の代わりに宝石が輝く地下世界だった。
『大亀裂』へと向かう道の中間地点、小高い丘の上に、開け放たれた天幕が張られていた。近づいてよく見れば、その天幕のひだが極限まで引き伸ばされた人間の皮膚でできていることが分かるだろう。
ムーンソングは骨の玉座に腰を下ろし、単眼鏡を持ち上げて、『ストイcus王国』への侵攻がどのように進んでいるかを眺めていた。この国の名は、かつて実在したストイカスという男に由来する。もっとも、彼は王ですらなく、個人的な聖戦と称してアンダーダークから這い出てくるものすべてを殺し尽くすことに生涯を捧げた、一人の蛮族の族長に過ぎなかったのだが。
ムーンソングはダークエルフの女性だ。髪は月のように白く、肌は最も暗い夜の空のように黒に近い青色をしている。美しさが当たり前である彼女の種族の中にあっても、その美貌は群を抜いていた。彼女が身に纏う『プレニルニウム』製の軽装鎧は、胸元が大胆に開いており、太ももの一部と腰の肌が露出しているため、その抜群のプロポーションがいっそう際立っている。腰の左側には骨の笛が、右側にはプレニルニウムの曲刀が吊るされていた。紫、赤、青の反射光を放つその黒い鉱石は、美しく頑丈であると同時に、極めて致死性の高い金属だ。人間が作る粗悪な合金など、プレニルニウムの刃の前ではバターのように容易く両断されてしまう。
ストイカスの死から数世紀後、この地に前哨基地が作られた。最初はほんの小さな兵舎と見張り塔があるだけで、塔の上に立つ兵士が、今ムーンソングが使っているものよりずっと素朴で原始的な単眼鏡を覗き込み、地下からの侵略の兆候に目を光らせていた。やがて数十年が経過するうちに、緑豊かな平原や『大亀裂』の鉱山を利用しようとする人々が集まり、前哨基地は一つの町へと発展した。そして最終的に、ストイカス王国として正式に成立したのである。
他の王国とは異なり、ストイカス王国は血統によって統治されてはいない。百年ごとに『連合王国』が集まり、この国を率いる貴族の家系を選出する仕組みになっているのだ。現在の君主はマルク王であり、歴代の王たちと同様、彼の役割は地下からのあらゆる脅威を食い止める防波堤となることだった。
「人間というのは……いつも自分たちの『死』という宿命から逃げ回ってばかりね」
ムーンソングは、ユーモアのかけらもない冷たい笑みを浮かべて言った。
「私が新しい鎧を選ぶのに、あるいは自分のハーレムに新しい愛人を迎え入れる計画を立てるのに百年をかける間に、あいつらは王や英雄が生まれては死んでいくのを見届ける。これ以上にみっともない生き物が他に存在するかしら?」
実のところ、ムーンソングの頭にはもっと不快な生き物がいくつか思い浮かんでいた。ゴブリン、スライム、インプ……。だが、少なくとも連中は自分がいかに惨めな存在であるかを自覚しており、野生の獣として生きるにとどまっている。一方で人間どもは、自らの作り上げた建造物によって死を克服しようとでもするかのように、記念碑や城壁を築き上げるのだ。多くのエルフや長命種にとって、そうしたあがきは大自然に対する侮辱以外の何物でもなかった。
「あたしは人間が好きだけどね」
もう一つの女性の声が答えた。だが、その声は旋律的というよりはぶっきらぼうだった。
ムーンソングが横目で視線をやると、そこには護衛としての役割を果たしながら立つ『ブラッド・アンド・ガッツ』の姿があった。ムーンソングとは違い、ブラッド・アンド・ガッツは全身を覆う重厚な鎧を纏っている。その高い身長と首筋の逞しい筋肉から見て取れる通り、彼女は生粋の戦士なのだ。ブラッド・アンド・ガッツの笑顔は眩しいほどに明るく、長く波打つ銀髪は柔らかそうに輝いている。その外見は、実際の彼女の本性よりもずっと優しげに見えた。
「あいつらが自分たちの短い命を必死に守ろうとする姿、あんたも見るべきよ……すっごく面白いんだから。まあ、一番面白いのは、すべてが終わったと理解して命乞いを始める瞬間だけどね」
ムーンソングは目を丸くした。
「ダークエルフに慈悲を乞う人間なんているの? そこまで狂っていて、身の程知らずなの?」
「あたしは期待を裏切るのが嫌いだからさ、飽きるまではそれなりに希望を持たせてあげるのよ」
「ストイカスにやったみたいに?」
「その通り! 愛する妻と娘はまだ生きているって教えてやった時の、あいつのパッと明るくなった顔を見せてやりたかったわ。もちろん、二人が今『どういう状態か』までは教えてやらなかったけどね。そんなことしたらサプライズが台無しでしょ。まあ、あたし個人的には、あれを『生きている』とは呼ばないけどさ」
その時、馬に乗って近づいてくる一つの人影がブラッド・アンド・ガッツの目を引いた。彼女は青い手を持ち上げ、額にかざして日差しを遮る。
「見て! あんたの旦那が来たわよ、ムーンソング。新しい知らせを持ってきたんでしょ……良い知らせだといいわね」
ムーンソングはため息をつき、玉座の肘掛けに肘をついた。籠手の指先が、コツコツと骨の肘掛けを叩く。彼女は視線を落とし、天幕の外から差し込む一筋の太陽光が自分の金属製のブーツに触れているのを見つめた。プレニルニウムの微粒子がポロポロと剥がれ落ち、風に乗って消えていく。
「ええ……良い知らせだといいわね」
ムーンソングは高まる焦燥感を隠しながら呟いた。
プレニルニウム。暗闇の中では並外れた性能を発揮し、満月の下では無敵となり、血の月の下では恐怖そのものとなる金属。だが、太陽の下では……ただの塵と化す。少なくとも、通常であれば。
ダークエルフたちが今、真っ昼間の太陽の下で戦えているという事実は、彼らが信じられないほど強大な秘術の力によって支えられていることの証左であった。しかし、どれほど強大な支援であろうと、そこには限界がある。
残された時間は、そう多くはない。




