第3話:何になりたい?
天国には入れないと聞かされた瞬間、ジンボは危うくその場に崩れ落ちそうになった。
しかし、『転生』という言葉を耳にすると、彼の気力はたちまち回復し、その瞳に光が宿る。すべてが失われたわけではないのかもしれない。この唐突なピリオドの先に、まだ続きがあるのかもしれないのだ。
彼は前へと進み出ると、ぴょんと跳ねてデスクの端に腰掛けた。
「転生……って、ライトノベルみたいなやつか?」
ジムはエネルギーでできた小太りな手を広げながら尋ねた。
「あるいはヒンドゥー教の聖典『バガヴァッド・ギーター』のようなものだな」
聖ペテロは片眉を上げて答える。
「ジンボ、これはご褒美ではない……新たな機会だ。我々の使命はすべての魂を超越へと導くことであり、心が歪みきるまで不満だらけの生を千回も繰り返させることではない。魂にまで届く傷やトラウマというものがあるのを、お前は知っていたか?」
「そいつは結構だけど、要するに全部ライトノベルみたいになるってことだよな?」
ジムは聖人の言葉の半分を聞き流し、自分が望む確認だけを求め続けた。
聖ペテロは長いため息をつき、疲れ切った表情で頷いた。
「よっしゃ!」
ジムは満面の笑みを浮かべてデスクから飛び降りた。
「俺のパソコンも、ゲームも、金も、トロフィーも全部置いていくことになるんだろうけど……その犠牲を受け入れよう! これで全能の神様からの評価も、1か2ポイントは上がるはずだ。どこにサインすればいい?」
聖ペテロが白銀の敷居を指差すと、扉がひとりでに開いた。
「この道を進みなさい、我が子よ。そうすれば、お前の守護天使に出会えるだろう。知るべきことはすべて、その天使が教えてくれるはずだ」
ジンボは聖ペテロに礼を言い、雪のように足跡に合わせて形を変える雲の間を進んでいった。背後で白銀の扉が静かに閉まる。
雲と光の道の間には、翡翠の両開き扉を持つ真珠色の神殿がいくつも並んでいた。白いトーガを纏った翼のある存在たちに導かれ、多くの魂が歩いているのが見える。醜い天使など一人もおらず、その顔立ちはまるで最高級のNPCのように、一つひとつ手作業で作られたかのようだった。
メアリーが、背が高くてハンサムな天使と一緒に神殿の一つへ入っていくのが見えた。ジンボはみんなの美しさにすっかり見惚れてしまい、誰かにぶつかって光の床に尻餅をつくまで気づかなかった。
顔を上げると、そこには小柄で華奢な少女がいた。金色の前髪が、眠たげな瞳を覆い隠している。白い二枚の翼をピクリとも動かさず、猫背のまま宙に浮いていた。その片手には、黄金のラッパが握られている。
「あんた、誰だ?」
ジムは床に座り込んだまま尋ねた。
「私はあなたの守護天使、チェルベラよ」
天使はそう名乗ると同時にラッパを唇に当てて息を吹き込み、ジンボの顔面に向けてやかましい音を真っ直ぐに放った。
ジムはぶつぶつと文句を言いながら手で顔を拭い、立ち上がる。
「あんまりいい仕事ぶりじゃなかったみたいだな、え?」
ジムは非難がましく言った。そもそも自分がここにいる理由は、彼女が死から守ってくれなかったからなのだ。
「警告はしようとしたわよ」
チェルベラの声は聖ペテロと同じくらい心地よいものだったが、まるで昼寝から起きたばかりのようにどこか気だるげだった。ジムは『他の守護天使たちはもっと有能そうに見えるのに』という感想をぐっと飲み込む。
「あなたがずっと無視し続けていた、あの慢性的な胃の痛み……あれは私よ」
ジムは、どうやってあの胃痛を引き起こしていたのかを尋ねるのはやめておいた。それよりも、新しい人生という約束に意識を集中することにする。彼は両手をこすり合わせ、無理やり笑顔を作った。
「それで……次のステップは何だ?」
「次のステップって、何の?」
「俺の転生の、だよ」
ジムの声に苛立ちが混じり始める。
「ああ、そうだったわね」
チェルベラは顔に手を寄せ、顎を撫でた。
「じゃあ、あなたは何を望むの?」
ジンボは驚きのあまり目を大きく見開いた。
「選べるなんて知らなかったぞ……」
チェルベラは微笑んだ。
「私の神殿に行きましょう」
彼らが近づくと、翡翠の扉がひとりでに開いた。目に見えない力によって照らされた真珠色の壁の奥には、聖ペテロのものと同じように質素なデスク、木の椅子、書類棚、そして何より目を引くものとして、神殿の奥に据え付けられた黄金の機械があった。その機械には座席に取り付けられた水晶の照準器、二本のレバー、開いた状態のバルブ、そして神殿の外へと伸びて雲の向こう側を狙う長い砲身が備わっていた。
ジンボがぴょんと跳ねて木の椅子に腰を下ろす一方、チェルベラはデスクの後ろへと浮かんでいき、ラッパを置くと、書類棚を開けて名前の書かれた何百ものフォルダーの中から探し始めた。
「ちょっと待て、あんたが担当してるのは俺だけじゃないのか?」
「ええっと、違うわよ」
チェルベラは書類棚の引き出しを調べ続けながら、穏やかな笑顔で答えた。
「私には約九千の魂が割り当てられているの」
「きゅ、九千!?」
想像を絶する仕事量に、ジムは危うく椅子から転げ落ちそうになった。
「前は相棒がいたんだけれど、今は魂の数が多すぎて、みんな手分けすることになったのよ。もし私がこのまま良い仕事を続ければ、三枚目の翼をもらえて、智天使に一歩近づけるの」
自分の未来を想像したのか、チェルベラの頬がほんのりと紅潮する。
「じゃあ、いつ寝たり、食べたり、遊んだりしてるんだ?」
「食べる必要も眠る必要もないわ。それに、私の仕事は結構楽しいものよ」
ジムは視線を逸らした。都合が悪くなるので口には出さなかったが、神様というのはとんでもないブラック雇用主だと心の中で思った。
チェルベラはマニラフォルダーをデスクの上に置き、引き出しを開けていくつかのパンフレットを取り出すと、それを魂へと手渡した。
「なんだか旅行のパンフレットみたいだな」
ジムは最初の一冊の中身をパラパラと眺めながら言った。
「って、ちょっと待て、ここは俺がいた場所じゃないか!」
「それは『ホームカミング(帰郷)』パッケージよ」とチェルベラが説明する。「すごく人気があるの。ほとんどの人は、慣れ親しんだ場所を好むから」
「俺が何を求めてるか先に伝えて、それに合うパンフレットを出してもらうことはできないのか?」
「んー、いいわよ」
チェルベラはパンフレットを受け取ると、紙の角を折らないよう細心の注意を払って片付けた。
ジンボは椅子に深く座り直し、身振り手振りを交えながら、自分の望みを一つひとつ順番に語り始めた。チェルベラは耳を傾け、ちゃんと聞いていることを示すように時折頷く。ジンボの長話がようやく終わると、天使はこう言った。
「つまり、ファンタジーの世界を探しているのね」
ジムは笑顔を浮かべ、何度も頷いた。チェルベラが『ファンタジア』と記された紙を差し出す。ジムはそのパンフレットを受け取り、自分が求めたものがすべて――魔法、ドラゴン、財宝、王国、王女様など――揃っているのを見て、胸を高鳴らせながら読み進めた。
「比較的最近できた銀河だけれど、ここもすごく人気のある行き先の一つなのよ」
「エルフがいるぞ!」
「ええ、いろんな種類のね。ただ、みんなが思っているほど親切じゃないけれど」
「なんてこった! 俺が夢見ていたものがほぼ全部詰まってるじゃないか」
「じゃあ、気に入った?」
「ああ、めちゃくちゃな!」
「よかった。なら、あとはあなたが『何になりたいか』を教えてもらうだけね」
「何にでもなれるのか?」
「魔法の剣やスライム、さらには自動販売機になることを許された魂もいるわ。聖ペテロから聞かなかった? 私たち、すごく柔軟なのよ」
「自動販売機? マジで言ってるのか?」
「ちょっと、ここでは他人の趣味を批判したりしないの……まあ、審判はする場所だけど、言いたいことはわかるでしょ」
「紙と鉛筆はあるか? ちょっと長くなるぞ」
チェルベラはデスクから羊皮紙の切れ端と、インクなしで書ける黄金の羽根ペンを取り出した。ジンボは条件をすべて書き連ね、十分ほどかけて作業を終えると、その紙を天使に手渡した。チェルベラの視線が、書かれた文章の上を何度も上下に行き来する。
「ええと……優しい心を持った素朴な農夫で、ハーフエルフで、王の庶子(隠し子)でもあり、ドラゴンの卵の所有者で、さらには自分の内に封印された魔王の欠片の残滓である謎の破壊的な力を持っている……になりたいのね」
「裏にも続きがあるぞ」
チェルベラは紙を裏返した。
「武術と剣術の生まれつきの達人。そしてハーレムを作ることに抵抗がない女性たちを惹きつける魅力があり、その中には可愛い幼馴染と、四十歳の師匠のお姉様も含まれる、と。これで全部?」
ジンボは頷き、頭の後ろで腕を組んだ。
チェルベラは微笑むと、再びデスクを開けて、四つの皿がついた白銀の天秤を取り出した。続けてジンボのファイルを開き、まるで魔法のポケットから取り出すかのように、フォルダーの中から三つの小さな像――白、赤、そして灰色の像――を取り出し、それぞれ別の皿の上に置いた。
「これ、私が彫ったのよ。気に入った?」
ジムは身を乗り出し、エネルギーでできた目を細めた。
「これ、俺か?」
ジムは、広い顔をした小太りな像が自分だと気づいた。白い像は穏やかな笑みを浮かべ、赤い像はサメのように獰猛な笑みを浮かべ、灰色の像はすべてに無関心そうな顔をしている。
「なんで赤と白のやつは、そんなに小さいんだ?」
「それぞれ、あなたの『罪』と『善行』で作られているからよ」
「どういう意味だよ、それ……?」
チェルベラはその質問を無視し、ジンボの要望が書かれた紙を丸めると、最後の皿の上に置いた。天秤はそれぞれの重さに迷うかのようにカタカタと揺れ動いていたが、やがて紙が宙へと弾き飛ばされ、くるくると広がりながら落ちてきて、ジンボの頭の上にすっぽりと被さった。
「もう少し要求を減らした方がいいみたいね。十語以内にまとめてみて」
天使は優しい笑顔を崩さぬまま、そう言ったのだった。




