第13話:連合王国
フェニックスが城壁を越えて遥かなる地平線へと飛んでいくと、まもなくその炎の鳥の周囲に数十羽の伝書鳩が集まり始めた。数を頼みにすることで外敵から身を守ろうと、一つの群れを形成したのだ。
鳥による手紙のやり取りでは我慢できないほど気短な者たちは、魔術師たち――具体的にはテレパシーおよび千里眼センターのサービスを雇った。侵略の最中、ダークエルフたちは有害な魔法でこの通信網を妨害していたが、戦いが終わったことでエーテルの回線は再び開通していた。もっとも、回線はひどく混雑しており、テレパスたちは元々少なかった文字数制限をさらに削ることを余儀なくされていた。普段なら十単語送れるところを、今は四音節以内の単語を五つまでしか送信できない。
マルク王の『オラクル(神託機関)』――すなわちストイクス王国の諜報機関は、人類にとって有害なメッセージや裏切り者を炙り出すため、飛び交うすべてのテレパシー通信を傍受・解読するのに限界以上の労力を強いられていた。ダークエルフたちが、一時的とはいえ「太陽光」という絶対的かつ自然の障壁を克服してみせた今、王国中の警戒と猜疑心は最高潮に達していたのだ。
その朝、マルク王にとって王冠はいつになく重く感じられた。そのため彼は、十二種類の貴金属を融合させて作られたその塊を頭から外し、作戦室の中央に鎮座する円卓の上に置いた。円卓には『連合王国』の地図が精巧に彫り込まれている。三大大陸の主たる大陸『アリア』(他の二つはセルティアとエウラリア)の上半分に、巨大な円を描くように広がる領域だ。
俗に『人類の帯』と呼ばれるその領域には、十三の要衝――すなわち十三の王国が存在する。十二の王国が円の外周を形作り、その中心に一つ、『魔法王国』が位置している。人類間の戦争を終結させ、少なくともアリア大陸において人類を一つの勢力へと統合したのは『魔法王』であった。もっとも、連合王国が保たれているのは完全なる調和によるものではなく、すべての支配者たちが魔法王に対して抱いている「恐怖」ゆえである。もし何らかの奇妙な理由でかの至高の魔術師が姿を消すようなことがあれば、人類は間違いなく再び暴力と野望の螺旋へと堕ちていくことだろう。
「まあ、そんなことはあり得ないがな」
マルクは苦笑いを浮かべて独りごちた。
「魔法王が死ぬはずがない」
「死に背く者を、果たして人類の一部と呼べるのでしょうか?」
部屋の隅、他よりも一段と濃く影が落ちている場所から、甘やかな声が割り込んできた。
マルクは険しい表情で眉をひそめた。一人きりだと思っていた空間で不意を突かれ、苛立ちを覚えたのだ。振り返るまでもない、声の主が誰であるかはわかっていた。
「ライカラか……厩番と侍女の色恋沙汰のような、くだらんゴシップを持ってきたわけではあるまいな」
影の中から現れたのは、切れ長の緑の瞳を持つ女だった。頭は綺麗に剃り上げられており、心臓のあたりに黄金の瞳が刺繍された、体にぴったりと張り付く黒い衣をまとっている。彼女の笑みはあまりにも微かで、笑っているのかどうかすら定かではない。
「まさか、陛下。今回お持ちしたのは、もっと薄汚くて退屈なゴシップ――政治の囁きでございます。王妃様がすでに、あの方の鳥を放たれたことをご報告に参りました」
マルクは地図に視線を落としたまま、言葉にならない唸り声を上げた。ライカラは言葉を続ける。
「王妃様の父君が知れば、他の王たちも知ることになりましょう。そうなれば皆、この世界に現れた新たな『力の要素』について知りたがるはずです。たとえ王妃様のフェニックスが悲劇的な事故に見舞われたとしても、あれほど驚異的な現象を長く隠し通すことは不可能です」
「あの水晶のことか」
マルクは片手を顎鬚にやり、ボリボリと掻いた。手入れされた髭の柔らかさと香水の香りが鼻につき、自分自身に対する嫌悪感が湧き上がってくる。
「十中八九、魔法王は均衡を保つためにダンジョンコアの破壊を命じるだろうな」
「そして陛下は、むろんそれに従われる、と」
ライカラは嘲るような響きを帯びた声で言った。
マルクは振り返って彼女を見据え、背筋を伸ばした。二メートル近い巨躯を誇る王の前に立つと、魔女はより一層細く、儚げに見える。それでもライカラは臆することなく王の視線を受け止めた。
「俺は本物の王ではないし、王としての野心も持っていない。俺がここにいるのは、与えられた任務と責任を果たすためだ」
「ですが、支配するために生まれてきた他の王たちはどうでしょうか? 戦争の趨勢を一変させるほどの力を、みすみす手放すとお思いですか?」
「王たちが、アラクスの研究を欲しがると言うのか……」
「力を持つ者たちが、魔法王の目を盗んで秘密を隠し持とうとするのは、これが初めてではございません」
「そんなことをすれば自殺行為だ。破滅あるのみだぞ」
ライカラは肩をすくめた。
「実際のところ、魔法王が今も我々のことを気にかけているかなど、誰にわかりましょう? あの方はすでに超越の一歩手前にあり、我々の脆い体制を実質的に管理しているのは、年老いた魔術師どもによる茶番劇なのかもしれませんよ」
「反逆者のような口ぶりだな、ライカラ」
「真実を申し上げているだけです、マルク」
ライカラはそう言って笑みを消した。
「あなたと同じく、私も責任を果たすためにここにいます。私たちは皆、かつての兄弟殺しの戦争の落とし子です。誰もあの時代に戻りたいとは思っていません……少なくとも、あなたと私は」
「……どうしろと助言する?」
「水晶を破壊し、アラクスの研究を破棄し、そしてアラクス本人とその弟子たちを全員始末なさいませ」
マルクは拳で円卓を激しく叩きつけ、分厚い木の板を震わせた。
「臣下の尽力に、血をもって報いろと? それが貴様の策か!?」
マルクは歯を剥き出しにして食いしばりながら問い詰めた。
「ほんの提案に過ぎません、陛下」
ライカラはそう言って影の中へと後ずさる。深い暗闇の中で、彼女の緑の瞳だけが浮かび上がっていた。
「最終的に王冠を戴いておられるのは、あなたなのですから」
オラクルの女は目を閉じ、そのまま闇へと溶けて消えた。
ようやく真の孤独を取り戻したマルクは、頭を垂れて数分間深く考え込んでいたが、やがて木製の扉をノックする音が響いた。
「誰だ」
「隊長一同でございます、陛下」とヒルダの声が答える。
「入れ」
マルクは声を和らげようとしたが、うまくいかなかった。まだライカラとの会話による苛立ちが尾を引いていたのだ。
扉が開き、鎧をまとったヒルダが、同じく武装したライネルとクラウスを伴って入室してきた。三人の隊長は横一列に並び、片膝をつく。マルクは、自らの騎士たちがそれぞれの責務の重みを背負っている姿を見て、再び王冠を頭へと戻すことに決めた。それから隊長たちに面を上げて立ち上がるよう許可を出す。王の視線が、左から右へと三人を見渡した。
「クラウス、今回も変わらぬ勇猛さで戦ったそうだな」
「悪に立ち向かうのは、いつだって私の喜びですからね、陛下」
王国最強の男は穏やかな笑みを浮かべてそう答えると、黄金の兜からいつもはみ出しているボサボサの茶色い前髪を軽く整えた。
「ライネル、新しい腕の具合はどうだ?」
「以前のものよりずっと調子が良いですぞ、陛下!」
ライネルは侵略戦の最中に切り落とされた左腕をグッと曲げてみせた。聖職者たちの治癒魔法のおかげで、今ではすっかり元通りになり、力強く機能している。
「ヒルダ、王国の復興状況はどうなっている?」
「皆、最善を尽くしております。貧しい地区では火事場泥棒の類いがいくつか現れましたが、兵士たちが迅速に鎮圧し、投獄いたしました。侵略者どもの死体につきましては……アンデッドの発生や疫病を防ぐため、すべて大亀裂へと投げ捨てるよう私が直接監督いたしました」
さらにヒルダは、大亀裂の周辺に敵の影はないものの、万が一エルフが再侵攻してきた場合に備えて国境に哨戒部隊を配置したことを報告した。マルクは頷いて隊長たち全員の労をねぎらったが、その表情はどこか上の空だった。
「陛下、何か気がかりなことでもおありですか?」とヒルダが尋ねる。
「言ってみろ、ヒルダ。クラウスとライネルには、実際に何が起きたのか話したのか?」
ヒルダは眉をひそめ、首を横に振った。
「陛下が、その件については口外を禁じられましたので……」
「ああ、そうして正解だったよ」
王は深いため息をついた。
「この事態は、俺が当初考えていたよりもずっと厄介なことになるかもしれん」
クラウスとライネルは顔を見合わせた。口髭を蓄えたライネルが片手を挙げる。
「陛下、一体何のお話をされているのか、お伺いしてもよろしいでしょうか?」
「サー・ライネル、おそらくはあの城壁のことでしょう」
クラウスが目を閉じたまま口を挟んだ。
ライネルは身震いし、昨日の出来事を思い出して再び興奮しながら何度も頷いた。
「まさに真の奇跡でしたな! 私の腕を治療してくれた赤衣の司祭たちは、あれぞミトラス神の御業だと誓っておりましたし、正直なところ私もそう信じております。ミトラス神は、我々のような誇り高き戦士に最も親しい神であられますからな」
ライネルがあまりにも敬虔で夢見がちな口調で語るのを聞いて、ヒルダの唇が皮肉げに歪んだ。マルク王も眉をひそめる。
「……私、何かまずいことを言いましたかな?」
ヒルダの不快そうな表情に気づき、ライネルが尋ねた。
「あの城壁は、いかなる神の御業でもない。魔術によるものだ」とマルク王が告げる。
ライネルは目を丸くした。クラウスは顎に手を当て、強い興味を示し始める。
「昨日我々が見たような現象を引き起こせるほどの力を持った魔術師が、この王国に存在するのですか?」
第一隊長が問いかける。
「ぜひとも、そのような領域に達した人物にお会いしてみたいものですね」
「アラクスよ」
ヒルダが視線を逸らしながら、ぶっきらぼうに答えた。
「ヒルダ、本気で言っているのか?」
ライネルは信じられないといった様子で聞き返した。
「サー・アラクスの実力を軽んじるつもりはないが、昨日見たあれは、彼の魔法の領域を遥かに超えているぞ」
「お前たち自身の目で確かめた方がいいだろう」とマルク王は請け合った。
他の王国があの水晶の存在を知り、奪い取ろうとする前に――あるいはさらに最悪なことに、連中が独自のコアを製造しようと試みる前に――ライネル、そして何よりクラウスの意見を聞けば、あのダンジョンコアをどう扱うべきか賢明な判断を下せるかもしれない。王はそう考えていた。




