第14話:不完全な算盤(そろばん)の珠
黄金色の草と雲が広がる丘の上、大きく枝を広げたリンゴの木の下で、一人の人物が胡座をかいて座っていた。永遠に刻まれたかのようなその眉間の皺をもってしても、彼の顔の美しさを損なうには至らない。その天使の厳格な瞳はエレクトリック・ブルーの輝きを放ち、髪はくすんだ銀色をしている。神がハリケーンや嵐を形作ったのと同じ物質から彼を創造した、と伝えられているためだ。彼が身につけているライトブルーのスーツとネクタイは一点の曇りもないほど完璧に整えられており、持ち主の厳格な性格と見事に調和していた。
ラミエルが並々ならぬ集中力で調べているのは、両手でしっかりと握りしめた古びた木製の算盤だった。その珠は光と色彩で膨れ上がっており、もし定命の者が一目でも見ようものなら、その眼球はたちまち塵へと変わってしまうだろう。だがラミエルは、珠の美しさなどまるで認識できないかのように振る舞い、カチャカチャと激しい音を立てながら高速で珠を弾き続けていた。どこに異常があるのかを突き止めようとしていたが一向に成果は上がらず、ついに苛立ちを募らせた彼は片手で頭をかきむしり、せっかくの整った髪を乱した。
「まだそれをやっているの?」と、柔らかな声が尋ねた。
ラミエルが後ろを振り返ると、そこには紫色の口紅を引き、肩を露出した黒いイブニングドレスにピンヒールを履いた、ほっそりとした女性が立っていた。彼女の短い髪は宇宙の虚空の闇よりもなお黒く、その浮かべる笑みは存在し得る限り最も慈悲深いものに見えたが、同時に多くの者が考える間もなく逃げ出してしまうような類の「慈悲」でもあった。
「アズラエル、これはお前の問題ではない」
ラミエルは毅然とした口調でそう言うと、再び手元の作業へと戻った。
アズラエルはヒールを脱ぎ捨てると、会計士の背後に膝をつき、後ろから彼の首元へと腕を回して抱きつきながら一緒に算盤を覗き込んだ。
「ねえ、もうそのまま放っておくって考えはないわけ? どうしてそんなに頑固なのよ?」
彼女は、まるでその会話をこれまでに百万回繰り返してなどいないかのように尋ねた。
「その会話はこれまでに1046万4698回繰り返したが、一度として合意に至ったことはない。私の時間を無駄にするな」
「もしかしたら、1046万4699回目がラッキーナンバーになるかもしれないじゃない」
ラミエルは鼻を鳴らし、呆れたように首を振った。アズラエルもまた、心から手伝いたいというよりは単なる好奇心から、視線で様々な珠を観察し始める。神の創造物に対する二人の哲学が根本から異なっている以上、彼女が口を出したところで何の意味もないのだ。
ラミエルは『決定論者』である。彼にとって創造とは一つの鎖であり、点Aから点B、そして点Zへと至る因果と反応の連続に過ぎない。そして今彼が手にしている算盤のような適切かつ強大な道具があれば、万物の始まりと終わりを知ることができると考えている。数学的な審判を振るうことで、魂が超越すべきか、輪廻転生すべきか、あるいは地獄の責め苦の中で浄化されるべきかを決定する……その揺るぎない結果の永続性の中にこそ、ラミエルは神の完全性を見出していた。
一方のアズラエルは『確率論者』である。彼女にとって神の完全性とは、すべてのピースが隙間なく収まり、駒が常に決まった場所へと行き着くような窮屈なシステムの中にあるのではない。偶然性や予測不可能な結果が生じることを認め、自発的に生まれる事象の美しさを愛でる。彼女は「自由意志」の忠実な信奉者なのだ。
「もしかしたらあなたの勘違いで、エラーなんて最初から存在しないのかもしれないわよ。考えてもみて」
アズラエルは相棒の耳元でそう囁いた。
「自分のやっていることは理解している。誰かが計算を狂わせたのだ。たとえ千世紀かかろうとも、必ずや犯人を突き止め、この異端を正してみせる」
ラミエルの揺るぎない口調は、それが冗談ではないことを明確に物語っていた。
「……ん?」
会計士の注意が、ある一つの珠へと引き寄せられた。彼は目を細め、より近くで見ようと身を乗り出す。その中に『ファンタジア』が垣間見え、星屑の奥深くへと視線を凝らすと、剣と魔法の王国が広がる世界が見えてきた。だが、彼がさらに詳しく調査しようとしたまさにその時、アズラエルが彼の肩を叩いて注意を引き、別の珠を指差した。
「あれ、なんだか問題になりそうよ」とアズラエルが指先で示す。
ラミエルはアズラエルが指差した珠へと意識を向け、ファンタジアのことは忘れた。算盤の隅に位置するその別の銀河からは、エネルギー・ドリルと反物質エンジンを搭載した超巨大な宇宙船団が次々と姿を現していた。新たな地平を開拓するため、現実そのものを引き裂こうとしているのだ。それは潜在能力の極限にまで到達した単一勢力による銀河であり、惑星を小石へと変えてしまうほどの軍勢を率いて、創造主によって定められた限界を突破しようと準備を進めていた。
ラミエルは心の中で忌々しげに唸ると、算盤の軸を一本慎重に外し、その問題のある珠を抜き取った。そして右の掌に乗せ、不満げな顔へと近づける。天使がギュッと拳を握りしめると、ミシッという破砕音が響いた。指の隙間から、サラサラと星屑の粉がこぼれ落ちる。
会計士は算盤の軸を元に戻すと、再び計算を続けた。アズラエルは退屈になり、その場を立ち去った。




