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転生したらヒロインでした。強制イベント発動?! えっ、お断りします!!  作者: 紫乃月 聖巴


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第8話 図書室

 放課後、サティーナは一人で図書室を訪れた。

 入学してから一か月以上が経ち、ミシルトとの初期イベントの発生時期はとっくに過ぎた。

 図書室にはサティーナも読みたいものが沢山ある。

 ずっと避け続けることはしたくない。


(いろんな本を読みたいのよね。図書室に行けないのは、さすがに困るわ) 


 入口の扉を開けると、高い天井まで書棚が連なるように置かれていた。

 空間も広く、古書の匂いが漂っている。


(こんなにあるのね! 素晴らしいわ!)


 思わず感激した。

 これは来る価値がある。

 魔法関係の本を探して棚の間を歩く。

 光魔法の応用に関する本を見つけたかった。

 棚の分類が少し独特で分かりにくい。

 うろうろと彷徨っていると、後ろから声がした。


「何かを探しているのか?」


(うわー……いたわ……)


 振り向くと、ミシルト・キクシストが一冊の本を持って立っていた。


(話しかけてこないでほしかったわ……)


「何かを探しているようだったが?」

「実は、光魔法の応用を探していました」

「なら、この棚じゃないな。五番棚の中段にある」


 ミシルトはサティーナの顔を見てから、そちらだと棚の方向を指を指した。


「……ありがとうございます。助かりました」


 サティーナは礼を言って、そちらの方へ向かった。


(もしかして、図書室の本の配置を全部把握してるのかしら。……だとしたらすごい記憶力だわ)



 本を見つけてから、サティーナは閲覧場所である端の席に座った。

 ミシルトは中央部の席に座っている。

 なるべく、ミシルトから離れた場所にした。


(これくらいの距離感なら問題ないわね)


 頁を開いて集中して読んだ。

 光魔法の応用は、特殊な操作技術について詳しく説明されていた。

 支援魔法、障壁魔法、情報伝達魔法など、それぞれの理論と実践方法。

 サティーナは真剣に読み進めていた。


 時間はあっという間に経過していった。

 もう時間も遅かったので帰る支度をした。

 その時、ミシルトから声をかけられた。


「その本の作者はお勧めだ。他のものも読んでみるといい」

「……はい。覚えておきます」

「では」


 サティーナは首を傾げた。


(好感度は上げてないはずだけど、それでも話しかけてくるのね……)


 図書室から出ようとすると入口にウィニーが待っていた。


「サティーナ様、夕食どうするか聞こうと思って」

「一緒に行きましょう」


 二人で食堂に向かいながら、ウィニーが小声で言った。


「さっき、キクシスト様も図書室にいましたよね?」

「……ええ」

「なんか話しました?」

「少しだけ」

「どんな?」

「本の場所を教えてもらっただけよ」

「それって、仲良くなるきっかけになるのでは?」

「そんなことはないでしょう」 


 サティーナは否定したかった。

 ウィニーはロマンチストなのか、少し恋愛傾向にもっていくところがある。


(フラグが立つことはやめてほしいわ)


 ウィニーが突然、こんなことを言い出した。


「サティーナ様って、男性の方に冷たい感じがします……」

「……そんなことはないと思うのだけど」

「マストロク様もそうですけど、だいぶ距離があると思うんですよね。皆、サティーナ様に親しくしようとしているのに……」

「そうかしら……」

「はい、モテるのに勿体ないと思ってしまいました。って、ごめんなさい。もしかして余計なこと言いました?」


 ウィニーは心配そうな顔をしたが、サティーナは穏やかに答えた。


「気にしなくていいわ。ただ、今は恋愛よりは勉強に集中したいわ」

「あー、なるほど。そういえば、サティーナ様って勉強熱心な方でしたね!」

「学園生活の中で、できるだけ沢山のことを学びたいのよね」

「私も勉強頑張らないとですね……」


 ウィニーは遠い目をした。



 学園では入学して二か月目から、月一回の特別講義というものがあった。

 学園長であるカルシオン・ワナディールが行う講義だ。

 テーマは学術的なものから実践的なものまで様々だ。

 この月のテーマは魔法と文明の関係のものだった。

 サティーナは講義室に入りながら、少し緊張していた。


「本日の講義を始める」


 カルシオンが壇上に立ったとき、周囲は静かになった。

 男子生徒は真剣だが、カルシオンの美貌に女子生徒はうっとりしている。


(あの人達……ちゃんと講義、聞けるのかしら)


 カルシオンは静かで力のある声だった。

 難解な歴史の流れを要点を絞って、整理されている語り口は分かりやすかった。

 サティーナはノートを取りながら、講義内容に引き込まれていった。

 カルシオンは時々、周囲を歩きながら語ることもあった。


(聞きやすいし、分かりやすわ)


 カルシオンの涼しげな菫色の目が静かに会場を見渡す。


「質問はあるか」


 講義の途中で、カルシオンが問いかけた。

 手を挙げた生徒が数名いた。

 中には今もうっとりしている女子生徒もいた。


(いや、あなたは絶対授業に関係ない質問でしょう!)


 カルシオンは一人ずつ丁寧に答えた。

 だが、うっとりしてた女子生徒だけはカルシオン個人のことだったので、「授業と関係ない話は質問しないように」と冷たく返された。


 こうして講義が終わり、講義室から出ようとした時だった。


「シェズリス嬢」


 声をかけられた。


(えっ!)


 振り返るとカルシオンが立っていた。


(近っ!)


 思っていたより近い距離だった。


(この方、怖ろしく美形よね。眩し過ぎて目がつぶれそうになるわ)


「……はい。なんでしょうか」

「ノートの書き方が興味深い構成をしていたが、独自の分類法か?」


 確かに抗議の内容を時系列だけでなく、テーマ別に整理して書き込んでいた。

 これは前世からの習慣で、情報を整理する時に使っていたやり方だ。


「はい、自己流です」

「効率的な書き方だな。どこで覚えた?」

「独学です」

「ふむ、そうか。……君は私とまともに話せるのだな」


(まともに話せる? どういうこと?)


 サティーナは首を傾げた。


「……」

「あの、どうかしましたか?」

「……いや、なんでもない。それではな」


 カルシオンはそのまま立ち去った。

 サティーナはしばらく、その場で固まっていた。


(今のってなんだったのかしら? ノートの書き方が気になっただけ? そんなに珍しい書き方だったかしら……)


 隣でウィニーが目を丸くしている。



「サティーナ様、学園長に話しかけられましたね!?」

「ええ、そうね?」

「すごいですね。学園長と普通に話せるなんて……私だったら、あの目で見られたら固まって話せないです」

「たしかに。王族に話しかけられるのは緊張するわね……」


 サティーナは頷く。


「……いえ、それだけじゃないんですけど。まぁ、サティーナ様ですからね」


 ウィニーが声を小さくして呟いた。

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