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転生したらヒロインでした。強制イベント発動?! えっ、お断りします!!  作者: 紫乃月 聖巴


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3/8

第3話 不安

 ウルバネル王立学園への入学の前日。

 夕方から屋敷全体が慌ただしくなり、使用人達が荷物の最終確認をしていた。

 全寮制の学園なので、基本的な生活用品は持ち込む必要がある。


「お嬢様、いよいよ明日ですね」


 マリナが笑顔を向けて言った。


「そうね」


 サティーナはそう答えながら、心の中では別のことを考えていた。


(作戦をもう一度確認しましょう)


 第一のポイント。

 正門前でのキジネス・マストロクとの遭遇。

 ゲームでは入学式の朝、正門前でキジネスがサティーナに話しかけてくることで始まる。

 キジネスはサティーナが正門に到着する少し前からその場所にいるという設定だ。

 対策としては馬車を通常のルートではなく、裏門から入れてもらう。

 これで正門前は回避できる。

 サティーナはすでにこれについては、父に根回ししてあった。

 混雑を避けたいから裏門から入りたいという名目で、父も快く承諾してくれた。


 第二のポイント。

 図書室でのミシルト・キクシストとの出会い。

 ゲームでは入学式の翌日、サティーナが図書室に行くとそこにいるミシルトと出会う。

 だから入学式の翌日に図書室には行かないだけでいい。


 第三のポイント。

 中庭でのソクネスト・カンゴドールとの接触。

 ゲームでは入学式の数日後、学園の中庭でソクネストが花の世話をしているところにサティーナが通りかかる。

 だから中庭には近づかない。


(これで完璧のはず。この通りにすれば、三人とも回避できるわ)


 サティーナは、これで準備万端とベッドに横になった。


(どうか学園生活は静かに過ごせますように……)


 そう祈りながら、サティーナは目を閉じた。


 夢を見た。

 夢の中でサティーナは瀬戸夕菜だった。

 仕事から疲れて帰って来た夜の部屋。

 その記憶の中で夕菜は恋する乙女はあなたに狙い撃ち☆のゲームをプレイしていた。 

 ゲーム画面の中では、ミシルト・キクシストがサティーナに向かって冷たい目で言っていた。


「他の男と話すな」

「ですが、彼とは友人として……」

「友人? そんな関係は認めない」


 うわっ、めんどくさい。

 と夕菜は思いながらも、選択画面を見た。


 ①「そうですね。ミシルト様がいればいいです」

 ②「友人くらいは許してほしいです」

 ③「あなたは私を信じてくれないのですか」


 この場面では①を選ぶのが、ミシルトの好感度を最も上げる選択肢だ。

 しかし夕菜の本音としては④「自分の友人関係に口を出さないでください」だった。

 もちろんそんな選択肢などない。

 仕方ないので①を選ぼうとした瞬間に場面が変わった。


 夢の中のそれがこれからとして流れ込んでくる。

 サティーナとしての今。

 学園の入学式の朝。

 馬車が揺れ、窓の外に見える学園。

 そして、頭の片隅にある懸念。

 ゲームのシナリオ通りに進もうとする世界の力というものが本当にあるとしたら。

 どんなに対策を立てても、出会いは訪れるのではないか。

 そしてその出会いから始まる物語は――


(いやあぁぁぁ!!)


 サティーナは夢の中で叫んで目を覚ました。

 起き上がると、まだ深夜だった。

 部屋の外はまだ薄暗い。


「なんて怖ろしい夢……」


 心臓の音がまだ早い。

 深呼吸をして落ち着こうとする。

 考えすぎだ。

 イベントを回避すれば問題ない。

 ゲームの世界だからといって、現実までシナリオに従う必要はない。

 自分の意思がある。

 行動を選ぶ自由がある。


(大丈夫よね。きっと……)


 サティーナは改めて、自分に言い聞かせた。

 前世でのゲーム知識は攻略のためではなく、むしろ回避のために使う。

 前世の記憶を辿りながら、サティーナはゲームのシステムを振り返った。


 あのゲームは選択コマンドシステムだ。

 ゲーム中、特定のタイミングで画面に三つの選択肢が表示される。

 ゲームのルール上、三択の内のいずれかは誰かの好感度が上がる。

 選択後に〇の好感度が上がったと出る。

 それにより、各攻略対象の好感度が変化する仕組みだ。


 一つの選択肢が複数のキャラクターの好感度に影響する。

 そして最も好感度の高いキャラクターに引っ張られる形で特定のルートへと導かれる仕組みだ。

 最終的に全てのイベントを経て一番好感度の高い攻略対象との恋愛エンドを迎えて終わりだ。


(問題は、私がその選択肢を選ばなければならない状況になるかどうかなんだけど……でもそんな画面はないし、選択肢が目の前に浮かぶわけでもない。そんな馬鹿な話があるわけないわよね)


 サティーナは苦笑した。

 ゲームの中のシステムが現実に再現されるはずがない。

 ここはゲームの世界そのものではない。

 ゲームのシステムが現実に反映されるなど、あまりにも非現実的だ。


(まぁ、転生自体がすでに非現実的なんですけどね)


 サティーナは再び目を閉じた。

 今度はちゃんと眠れることを祈りながら。

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