第14話 訓練室
ある時、授業の前に魔法の自主訓練をしようと訓練室へと向かった。
朝の早い時間帯だったので、さすがにこの時間に訓練室には誰もいないだろうと思っていた。
だが扉を開けると先客がいた。
キジネスだ。
一人で剣を振っている。
(あんたが、いるんかい! もしかしていつもこんな早い時間からしてるの!?)
「サティーナ、おはよう! 早いな!」
キジネスが気づいて声をかけた。
「マストロク様、おはようございます。いつもこんな時間から訓練しているのですか?」
「ああ! 一緒に訓練するか?」
「いえ、私は一人でします」
「遠慮するなよ」
そして画面が現れた。
【選択してください】
①「では、ご一緒させていただきますね!」
②「少し、訓練をしているところを見てもいいですか?」
③「ありがとうございます。でも一人で集中したいんです」
(またきたわね! もう、めんどくさいわね!)
サティーナは内心荒れながら、念じた。
(下下下下下下下下下!!――)
ピコン。
①「では、ご一緒させていただきますね!」
②「少し、訓練をしているところを見てもいいですか?」
③「ありがとうございます。でも一人で集中したいんです」
④「いえ、実は秘密の訓練をしたいんです。なので一人でしますね」
すかさず④を口に出した。
画面が消えた。
キジネスが頭をかいた。
「そっか……まぁ、それなら仕方ないか」
「ええ、お誘い頂いたのにごめんなさい」
「向こうの端、広いからそっちを使っていいよ」
「はい、では失礼しますね」
サティーナは訓練室の端に移動した。
(この時間帯にもう訓練室使ってるのね。でも、訓練室まで避けるのはちょっとね。私も訓練したいし……はぁ、全部を回避するのは無理そうね)
それからサティーナは訓練を始めた。
キジネスは遠くで剣を振り続けている。
その動作は無駄がなく、訓練を積み重ねて逞しい体をしている。
(剣の腕前は本物なのよね。こうしてみると、かっこいいわよね)
感心しながら、サティーナは訓練に集中した。
時間が経ちここまでにしようと、サティーナは訓練室を出ようとした。
「サティーナ、少し聞きたいことがあるんだけど」
キジネスが声をかけた。
「何でしょうか?」
「お前ってさ、なんでいつも距離置くんだ?」
「……距離ですか?」
「俺だけじゃなくて、ミシルトやソクネストとも、そうじゃないか? いつも早く立ち去ろうとしている感があるんだよな。何か理由があるのか?」
(そういうところは鈍そうなのに、気づかれてしまったわ。馬鹿正直に、あなた達が攻略対象だからとは言えないし……)
「……少し、男性が苦手なだけです」
キジネスが少し考えてから、また口を開いた。
「それだけとは思えないんだよな……俺、お前のこと怖くさせたか?」
「え?」
「だから、俺と話すのが嫌なのかなって。もし俺が何かしたなら謝るよ」
サティーナは罪悪感を感じた。
キジネスは純粋なのだ。
「……嫌いというわけではないですよ」
「嫌われてはなかったんだな……」
キジネスは、ほっとしたような顔をした。
「嫌われてないなら、まぁいいか……また訓練している時に会ったら、邪魔しないようにするよ」
「ありがとうございます」
キジネスは後片付けをし、サティーナは訓練室を出た。
選択コマンドが出現してから、少しその発生頻度が上がってる。
今のところ、全ての隠し選択コマンドを引き出すとこに成功している。
これからのことを思うと気が滅入るサティーナだった。
学園祭まで一週間を切った頃だった。
ミシルトに廊下で呼び止められた。
「少し時間はあるか? 話したいことがある」
サティーナは不穏を感じながらも、その後をついて行った。
ミシルトは空き教室に入り、椅子に座った。
「話とは中間試験についてだ」
「中間試験ですか?」
(これ……ゲームでそんな場面があったような……)
記憶を辿ると、ミシルトが試験対策を一緒にやらないかと提案する場面を思い出した。
「来月、中間試験があるだろう? 一緒にやらないか?」
そして画面が現れた。
【選択してください】
①「ぜひ、一緒に勉強させてください!」
②「キクシスと一緒なら、心強いですね」
③「ありがとうございます。分からない事があったら、聞いてもいいですか?」
(でしょうね!! 下下下下下下下下下!!――)
ピコン。
①「ぜひ、一緒に勉強させてください!」
②「キクシスと一緒なら、心強いですね」
③「ありがとうございます。分からない事があったら、聞いてもいいですか?」
④「今回は一人で集中してやろうと思っているんです」
そのまま④を口に出した。
ミシルトが少し眉を動かした。
「……一緒にするのも悪くないと思うが?」
「自分でやった方が身になると思いまして」
「そうか……」
「せっかくお誘い頂いたのに、ごめんなさい。これで失礼しますね」
サティーナが立ち去ろうとしたが、ミシルトが口を開いた。
「シェズリス嬢」
サティーナは振り返った。
「はい?」
「あなたは、俺が嫌いか?」
(マストロク様と同じことを聞いてきたわ!)
「俺が話しかけると、いつも早く切り上げようとする。どうも避けているように思うのだが?」
(そんなに私、あからさま過ぎるのかしら……)
「嫌いではありませんよ。ただあまり人に頼らず、自分で自由に動くことが好きなだけです」
「……本当にそれだけか?」
「ええ。キクシスト様、私の行動は尊重して頂けませんか?」
少し強めに言ってみた。
ミシルトは珍しく、少し困った顔をした。
「……承知した」
「ありがとうございます」
サティーナはお辞儀をして教室から出た。




