第13話 隠しコマンド
朝、ウィニーとピネル達と一緒に会話を楽しんでいた。
「次の授業までまだ時間ありますね。図書室にでも行きますか?」
「そうね、行きましょう」
三人で図書室に向かった。
ウィニーとピネルは恋愛小説がある棚の方へ行った。
サティーナが専門書を探していると声をかけられた。
「シェズリス嬢、おはよう」
振り向くとミシルトだった。
銀髪をきれいに整えて静かな佇まいだ。
「おはようございます。キクシスト様」
「昨日、キジネスと話していたな」
(……え、見ていたの?)
「ええ、少し立ち話をしていました」
「そうか」
ミシルトはそれだけ言って、本棚の方へ向かった。
(なんだったのかしら?)
サティーナは別の本棚の場所へ歩いて行った。
しばらくするとまたミシルトが近づいてきた。
そして一冊の本を差し出してきた。
「これを、シェズリス嬢には役に立つと思う。光魔法の古典的な応用が記載してある」
「……ありがとうございます」
そのままミシルトは表情を変えずに、自分の席へと戻っていった。
ウィニーとピネルが遠くから、何かを察したような顔でこちらを見ていた。
(何、ウンウン頷いてるのよ。何もないわよ!)
サティーナは授業が終わった後、廊下でソクネストと会った。
「シェズリス様。昨日、北棟で見かけましたよ」
「……そうですか」
(またなの……あの場所、監視カメラでもあるの?)
「キジネス様と何か話されていたようですね」
「ええ、少し立ち話をしていました」
ソクネストはにこやかに微笑んでいる。
(なぜかしら。その笑顔が怖いんですけど……)
「私も時々、ご一緒したいと思っているのですが、なかなか機会がありませんでした」
(そうですね。私、避けていますしね)
「学園生活が忙しいですからね」
「そうですね」
ソクネスト声は穏やかだ。
「中庭のフェルテルシアの花が咲いてきました。とても綺麗ですよ。よかったら見に来ませんか?」
「今日は少し疲れているので、ごめんなさい」
「そうですか、残念ですね……ではまた今度お見せしますね」
「はい。失礼します」
(うっ……断り続けていると、相手が可哀相になってきたわ。でも好感度低いとはいえ、接触率が上がっているのよ……注意しないと)
サティーナは、いつ強制イベントが発生するのか警戒しながら過ごしていた。
実はあれから一週間の間に二回、選択コマンドが出現した。
二回目は、ミシルトと図書室でのことだった。
その日は借りていた本を返しにいくところにミシルトがいた。
そして本の内容について聞いてきた。
「読んだか? どうだ役に立ったか?」
その瞬間、あの画面が現れた。
【選択してください】
①「はい、とても助かりました! キクシスト様のおかげです!」
②「……あまり内容がよく分からなくて、少し難しかったです」
③「参考にはなりましたが、もう少し基礎を知っていないといけないですね」
(うわっ、出た!!)
サティーナは驚きながらも、即座に念じた。
(下下下下下下下下下下下!――)
ピコン。
【選択してください】
①「はい、とても助かりました! キクシスト様のおかげです!」
②「……あまり内容がよく分からなくて、少し難しかったです」
③「参考にはなりましたが、もう少し基礎を知っていないといけないですね」
④「新しい発見があって、自分で調べたいことが増えました」
(よしっ! 出た!!)
サティーナは内心でガッツポーズしながら、④を口に出した。
選択画面が消えた。
ミシルトが目を細めた。
「……そうか。自分で調べることは良いことだ」
「はい。ありがとうございます」
本を返して、すぐにその場を離れた。
三回目は、ソクネストとの廊下での接触だった。
中庭の近くを通り過ぎようとした時、ソクネストが声をかけてきた。
「シェズリス様、少しよろしいですか?」
「ええ、何でしょう?」
「今度、学園の学園祭がありますよね? 一緒に回りませんか?」
学園祭……。
ゲームの中でも学園祭イベントは存在した。
複数のイベントが起こる重要な場面で、好感度が大幅に上がるイベントである。
そして選択画面が現れた。
【選択してください】
①「ぜひ、一緒に行きたいです! カンゴドール様と回れるなんて嬉しいです!」
②「人が多いのは少し苦手なので、裏方のお手伝いをしようと思っているんです」
③「ごめんなさい。その日は、お手伝いをお願いされているんです」
サティーナは素早く念じた。
(下下下下下下下下下下!!――)
ピコン。
①「ぜひ、一緒に行きたいです! カンゴドール様と回れるなんて嬉しいです!」
②「人が多いのは少し苦手なので、裏方のお手伝いをしようと思っているんです」
③「ごめんなさい。その日は、お手伝いをお願いされているんです」
④「学園祭は友人と回る予定なんです」
(よし!!)
④を口に出した。
「学園祭は友人と回る予定なんです」
「そうですか……」
ソクネストは残念そうな顔をしたが、引き留めはしなかった。
「それは、残念です。友人と楽しんでくださいね」
「はい、楽しみたいと思います」
その場を離れながら、サティーナは思った。
(少し時間はかかるけど、隠しコマンドは出現しているわ。このまま、なんとかなるかしら……。というか、相手が諦めて去ってくれることが一番いいのだけど……あの人達はよくあの間を耐えらえるわよね……)




