第10話 気になること
サティーナは食堂で一人で朝食をとっていた。
時間帯がまだ早く、数人の生徒しか食事をしていない。
食事を終えた後、サティーナは本を読んだ。
今日は図書室で借りてきた魔法史概論の本だ。
この大陸で起きた大きな戦争で、魔法の軍事利用が急速に発展したことで引き起こされたとされている。
この終結には、光の守護者と呼ばれる魔法使いが活躍したと書かれていた。
(光魔法を扱う魔法使いね)
サティーナは自分の手を見てみる。
光を想像すると僅かに手に光が灯る。
(私の光魔法はどれくらいまでレベルを上げられるのかしら)
そんな時、ウィニーが食事を持ちながら話しかけてきた。
「サティーナ様、もう食事終わったんですね。私は遅くなりました」
「珍しいわね。どうしたの?」
ウィニーはサティーナの隣に座った。
「昨日の礼儀作法の課題が終わらなかったんです。だから遅くまで時間がかかりました……」
「それで課題は終わったの?」
「まだ、少し残ってるんですよね……」
「手伝いましょうか?」
「えっ、いいんですか?」
「ええ、食事が終わってから見てあげるわ」
「サティーナ様、ありがとうございます!」
礼儀作法の課題内容を見ながら、ウィニーに説明しながら教えた。
ウィニーは素直に聞きながら、書いていく。
「サティーナ様って、流石ですよね」
「伯爵家の娘だから、小さい頃から叩き込まれているもの」
「羨ましいです。私の家は、それほど厳しい教育ではなかったんです。それでも最低限の礼儀は知っているつもりだったんですけど、細かいとは分からなくて……」
「男爵家ではそうだったのね」
「はい。父は商人上がりで、九年前に貴族の位を買ったんです。だから、生まれながらの貴族の感覚がないんですよね。勉強も頑張っていたつもりだったんですけど、ここの入学はギリギリでしたね……」
ウィニーは肩を落とした。
貴族社会というのは出自を重んじる面があるが、ウルバネル王立学園の場合は学業の成績も重要視される。
入学時点での成績審査があるので、貴族だからといって必ず入れるわけでもない。
「勉強は積み重ねて成長していけばいいと思うわ」
「サティーナ様にそう言われると、なんだか安心しますね」
ウィニーは笑った。
午後の授業が始まるまでの間、サティーナは学園を一人で散歩した。
攻略対象がいなさそうな安全ルートを確認しながら、学園の景色を楽しんだ。
窓から差し込む光と庭師が手入れしている外庭の美しい景色。
廊下の窓から外を見ると遠くに緑豊かな丘が見える。
散歩の途中で廊下の角を曲がった時だった。
前方から歩いてくる人物との距離が近かった。
「ああ、失礼」
「あっ……」
互いに半歩引いた。
正面にいたのは、カルシオン・ワナディール学園長だった。
(まさかの学園長!? びっくりしたわ……)
「失礼しました。学園長」
サティーナはお辞儀をした。
「シェズリス嬢だったか」
カルシオンは立ち止まって、こちらを見ている。
「もしかして散歩か?」
「はい、少し景色を見たいと思って」
「そうか」
カルシオンは少し考えるような顔をしてから続けた。
「教師から君は優秀だと聞く」
「それは光栄です」
(そう言われると、ちょっと恥ずかしいわ)
「とても勉強熱心で、まだ授業で習っていないことも興味深々で聞いてくると言っていた。
なかなか面白い発想を語っては教師を驚かせてた事も聞いた」
(あぁ、つい知りたくなって聞いてしまうのよね……)
「もし、私の抗議でも知りたいことがあれば、学園長室に来て聞いてくれても構わない」
(学園長室に!? いえ、それはお断りします!)
「ありがとうございます。でも、そのような厚かましいことはできません」
「遠慮することはない」
「いえいえ、学園長のお時間を頂くことは恐れおおいです」
「私が言っているのだから、問題はない。知りたい事があれば、いつでも来なさい」
カルシオンはそれだけ言って、その場から去った。
サティーナは、その場から動かず立ち尽くしていた。
(……王族には関わりたくないんですけど……そういえば、ゲームでは隠し攻略対象が何人かいたはずだけど、誰だか知らないのよね。まさか学園長とかではないわよね……)
サティーナは頬に手を当てた。
(でも学園長の声って聞き心地いいのよね。容姿だけじゃなくて、声までいいなんてね。まぁ、だとしても深入りしな方がいいわね)
そう言い聞かせながら、サティーナは教室へと向かった。




