第82話『王都から大海原へ』
ほか貂たちに相談すると、トリオ獣王国から1度ジアロノヴィア王国に戻ってきてくれることになった。
王都センクシムまでは直線距離で3日の距離。量乗魔神宮などを通過して少し遠回りをする。ウララとお餅とは別行動だ。
船を調達するのはトリオ獣王国でほか貂たちがやってくれる。航海に3日かかるというのでこちらは焦る必要がない。
センクシムから幻の神大陸に向かうので最長で1か月の航海となる。私たちを連れて神大陸に行くので大きな船が必要だ。
『船は問題なし?』
『大型船を修理して動かせる状態だ。2日後にはセンクシムに着けるぞ』
『サーチベリーによろしく伝えて!』
私たちも乗れるようなのでセンクシムの情報収集はほどほどにする。
サーチベリーとハイビィたちはほか貂たちと一緒に行動している。獣人族の種族進化に神大陸が重要だと分かったからだ。
私たちは多数決で冒険と決めたので神大陸に行きたがっている勢力。獣人族は1人もいないので乗船の説得力には欠ける。
ほか貂たちの邪魔はしないと約束してセンクシムで大型船に乗り込んだ。片道いくらかを聞くと、上位結晶1つと言われた。
「E魔人に盗られたんだよ! 信じられる!?」
「渡す方が悪いだろう」
「殺されるところだったんだからね! 幼気な初心者プレイヤーのいる願いの大地で恐喝は許されざる暴挙だよ!」
「あまり真に迫ってないな?」
痛いところを突かれてうぐっと声を上げる。
「上位結晶で見逃されたのは事実だよ。ノヴァの抑止力が今後どう響いてくるかだよね」
「ノヴァは抑止力じゃない」
汚い行為を認めないほか貂に配信者とはそういうものかと思う。私はA陣ならぬAカメになっていよう。
「配信オーブにしたのか?」
「そうだよ。ほか貂はジャックカメラだよね」
「そう呼べるものだろうな」
「ジャックカメラじゃなくてジュゲムカメラだよー!」
ジャックは甲板に植わったジャック・ザ・ツリーに現れて言う。変わった大型船で大自然族の力を推進力とする。
「神大陸で上位種族になるしかないな。カメラワークを自在に変えられるのは大きいからな」
「臨神族にはなれるよ。私はジャックの探し物でなったんだし」
「探し物を聞いてもいいか?」
ご自由に! ジャックの探し物をクリアすれば隠しステータスも上がるだろう。臨神族はA陣とJ陣を上げるだけだと思うけど。
「ジャック。探し物はあるか?」
「あるよー!」
ほか貂はジャックの探し物を受けてすぐに目的のアイテムを見つけるとクリアした。20人のクラメンいるから借り物ゲームになるよね!
「俺も借り物ゲームをやろう」
「目的のアイテム持ってる奴が狼ってことにしない?」
「笑えるぜ」
ジャックがいると退屈な航海でも退屈しなかった。
嵐に見舞われながら10日、私たちは神大陸に辿り着いた。
航路上に王竜らしき影はあったもののモンスターが襲ってくることはなかった。この10日間で最新作を齧ってみたよ。なかなか面白かった。
「おぉ~! バーベキューの食材が沢山ありそう!!」
「未開の地だな!」
獣人族の聖地、神大陸に上陸した私たちは、見目麗しい果物を実らせる木々に圧倒された。
「Jボーイズは拠点化を始めて! Jガールズは採取を行う!」
『了解!!』
「ここにA陣が二人います!」
「A陣は好きにしていいよ! 生態系の調査はよろしく!」
「無駄にリーダー感があるな……」
E魔人に言わせるならこの世界も乙女ゲーだ。全然無駄じゃない! リーダーの座は奪い合いって決まってるよね!?
勢いで配信したくなる乙女ゲーをクリアした。私は配信しないことを是とする強プレイヤーだ。レベル150だからね? 大自然族として20日間のチュートリアルを行った私だから難易度がイージーだと分かる!
Jガールズの採取活動で新鮮な果物と野菜を調達した。神大陸ならではのモンスターがいて何処となく王竜と似ていた。
「口に触覚があるってヴァルハルリカだ!?」
「ヴァルハルリカの特徴を引き継ぐモンスターか~」
「うん。名前だけだとヴァルハワームがいるけど」
ヴァルハラトプスという恐竜型のモンスターを倒して未開の地を切り拓いていく。
フィールドの適正レベルは150帯でヴァルハラトプス数匹をクラメン10人で囲んで倒す。私は持ち前のステータスと金剛槍ケルベログのお陰で難なく倒せるため単独行動となった。
「他にプレイヤーはいなさそうかな~。魔法を溜めて撃つべし! 【パンチャーバレット】×5!!」
「「「ギィアアアッ!!」」」
ヴァルハラトプスに猫だましより強力なパンチを食らわせて、金剛槍ケルベログで串刺しにする。
複数体いても敏捷極振りのフットワークで難なく攻撃を避けられる。
「神大陸で進化素材を得られるとあればやる気に火が付くよね!」
古着と言いながらも着続けたシャフトラインドレス・改を進化させる素材にようやく出会えた。ヴァルハラトプスの剛金皮が最も適している。
金剛槍ケルベログを振り回してヴァルハラトプスを退けると、私は採取そっちのけでモンスターを狙った。
ほか貂たちも同じようで3人で周囲一帯のモンスターを倒していく。
「カシーさん! 配信してるんですか!?」
「サーチベリー。私はしてないよ~」
「【テンプレサーチ】で分かりますよ!!」
と、【テンプレサーチ】の使い手が現れて私は戸惑う。
「何処で魔導書を拾ったの?」
「神大陸です! ヴァルハラトプスがドロップしました!」
「おおっ! 初魔導書はサーチベリーだった! おめでとう!」
「ありがとうございます! それで配信してないんですか?」
「ほか貂は動画にしてるけど私はカメラを回すだけだよ」
ゲーム内でA陣とJ陣に別れるのは当然の摂理だ。私は検証のためにJ陣を鍛える所存だよ。
「Jガールズはどうしたの?」
「「抜けてきました!」」
「仕方ない。私のパーティーで匿ってあげよう!」
「みんな同じクランじゃないですか!」
ハイビィは分かってない。クラン内にも上下関係があるんだ。お餅は重役でウララは……置いていったことをちょっと恨まれたよ。




