第79話『ジャックの正体』
2人目のジャックがパーティーに加わって、私たちは願いの大地にある拠点に戻った。
「立派なクランハウスだ!」
「わぁ、クルヘエーグの毛皮が絨毯になってる!」
「この骨って何ですか?」
「バロックラットの骨だよ~」
1本骨が印象的なクランハウスに10人ほどのメンバーを招待する。拠点は迷宮都市がいいと思ったけど願いの大地でもいいというプレイヤーが多かった。ほか貂もその一人だ。
メイン拠点は願いの大地。
ランキング重視のプレイヤーを束ねたジュゲム攻略団である。第1回イベントのランキング1位、ほか貂やLVP、MVPなどを獲得した私たちが所属する。
お餅が『サ学』プレイをするので、私は最新作に気を取られていた。始まりの苔があってもランカー潰しが多い現状で『JCO』プレイはない。
オフゲーに逃げるのも一つの手だよね。レベル150の大台に上がって攻略物資もそこそこに仲間まで集めた身の上でそれはないけど。
「打倒ノヴァだよ。クラン目標は必要になるよね」
「ノヴァは厳しいなー」
工房にいるレイキーアに装備を頼んだジェラスに話しかける。イベント期間中、5つのフィールドを練り歩いて迷宮都市にやってきたプレイヤーの1人だ。
「E魔人がいると別ゲーに避難するしかないよ」
「それはありうるがクラン結成したばかりだろ?」
「ジュゲム攻略団はジュゲムのみ攻略出来ればいいんだよ」
「ジャックは育成が難しいだけだよな? ジュゲムは?」
「ジュゲムはジャックの世迷言かな~」
「ジュゲムはいるよ!!」
そう主張する2代目ジャックに注目が集まる。ワールド情報ではジュゲムの存在を確認したけど、私は実際に会ってみないと信じない性質だ。
「僕とジュゲムは全然似てないんだ! ジュゲムは映るのが得意なんだよ!」
「心霊写真のように写るのかな?」
「撮ってみるか?」
新たな装備をゲットしたジュラスとお互いの写真を撮り合う。何だか恥ずかしいけどジュゲム発見のためだよ。
「ん~。何も写ってないよ?」
「映像にしか出て来ないのさ! 映像の中で生きてるからね!」
「映像の中で生きてる?」
水晶と関わりがあるのも映像関連だからだろうか? ジュゲムの謎を解く前にジャックの正体を知る必要がありそうだ。
「ジャックはゲームの中で生きてるよね」
「そうさ! 僕はゲームの中で生きてる!!」
「へぇ~。変わってるな」
ジャックにはゲームの中で生きている設定があると。ジュゲムが出て来ないのは映像の中じゃないから……となると、映像化されるとジュゲムは出てくる? 配信環境は整ってないけどゲーム内に配信用アイテムが仕込まれたりする。
「そういえば水晶で配信出来るとは聞いたことがあるな」
「あれ? そうだったの?」
「その水晶は別物なのか? てっきり配信するのかと」
「『JCO』動画は全然見てないんだよ~。それと水晶は別物!」
ワールド情報が流れてくる画期的なアイテムだよ?
ジャックはワールド情報と紐づけされたプレイヤーを記憶に留められるのでちょっと嬉しい。アカシックレコードを知っているジャックには興味が尽きないね。
「クラン的に配信はありだよな」
「おっ。配信したいなら好きにしていいよ。クランリーダーの許可は取るしほか貂たちも説得するから!」
「ほか貂たちは配信したい勢だと思うぞ?」
「それは知らなかった!」
別のMMOで有名だったり? ウララが遊んだことあるタイトルかも!
私はサービス開始から初心者丸出しのプレイヤー。開墾クエストで意外と経験値が貰えるくらいしか教えないけどね。
「願いの大地で何をするの、ジュラス?」
「検証でいいんじゃないか?」
「開墾クエストでレベルが上がったりするよ~」
「開墾クエストはやってみたーい!」
「じゃあ始まりの街に出発!」
続々とクラメンが集まってきて伐採ギルドで開墾クエストを受けた。
ほか貂グループはトリオ獣王国に入国して海を渡るようだ。獣人の転生地と呼ばれる神大陸があるらしく、ポたんたちの種族転生をするために大航海をする。
お餅は事実上の引退。
ウララも別ゲーで遊んでいる。私も最新作に心が傾いていた。
「LVP三連覇は凄いけど本人の資質だな」
「まあね~。1位は夢のまた夢だよ」
「『JCO』じゃあE魔人がぶん取ってくるからな~」
サービス開始から3か月が経って、ランカー殺しに格の差を見せつけられている。E魔人を手懐けたい私たちは密かにみかじめ料を集めている。ランカー殺しには弱腰だ。
「おっ。やっぱりここにいた」
「うぐっ! 皆逃げてぇー!!」
噂をすると速攻でE魔人が出現した。タイミングが悪い!!
「E魔人! 何しに来たの!?」
「みかじめ料を貰いに来ただけだよ。それとショバ代?」
「ジャック・ザ・ポーチとお肉でいいよね……?」
「神肉で頼むよ」
完全に手懐けられた殺戮兵器のノヴァに冷や汗を流しながらE魔人に神肉を差し出す。命の貯金を削られたよ!
「てっきり魔族の国に引っ込んだと思ったよ……」
「上位種族でしょ? 今後も仲良くしよう!」
いきなり斬りかかってくるE魔人に私は脱兎の如く逃げ出した。しまった! ノヴァに回り込まれた!!
「上位種族には勝てないよ! 私はただの臨神族!」
「臨神族は初めて聞いたよ。どんな種族?」
「垂界物を束ねる種族だよ。何かに強いわけじゃないね」
「私は雷神族。こっちは河神族ね」
「ノヴァの種族は初めて聞いた! 何が目当てなの?」
「結晶アイテム。結晶100個で配信オーブになるって知らない?」
あ~。ほか貂たちに配信させたくないとか? でもほか貂たちって既に結晶100個を持ってるような。
「100個もいるの?」
「配信オーブが高い理由は分かるでしょ」
「分からないよ。それより配信オーブは宝の持ち腐れじゃないかな?」
「言ってくれるね!」
事実を言ったまでだよ! E魔人が求める理由が分からない!
「あのあばら家を畳んであげようか?」
「分かったよ! 結晶アイテムだね!」
「上位結晶のみだからヨロシク」
ランカーから上位結晶を巻き上げるためにわざわざ願いの大地にやってきたんだ……私も避難地を作っておこう。




