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隠密ジョブのメレンゲレンジ  作者: タ別


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第75話『ジュゲム攻略団』




 迷宮都市ラビリンスに向かう道中、ヴァルハルリカの可憐な姿を目撃した。大空を飛ぶヴァルハルリカを追いかける森人族の子供たちがエルフの里では癒しだった。


「王イベで動いてきたヴァルハルリカは健在。今日日は迷宮一筋かな?」


「量乗の迷宮で培った経験を存分に活かせます」


「そうだね!」


 エルゲンの南に位置するラビリンスへは王都から進んだ方が近い。なので私たちは王都に引き返してから出発となった。


 昨日は王都に滞在していたので、王都周辺でレベリングをしたハイビィだ。アバターを得てからは小柄な魔法使いで、魔力もスタミナもないため難儀している。知力極振りはお餅に続いて二人目だよ。


「ラビリンスに到着!」


「到着しました!」


 クランメンバーのハイビィを鍛えながらラビリンスに入った。

 迷宮のある区画からラビリンスの表示があって、面積では王都以上に広大なエリアだ。ダンジョンが密集しているわけだけど、圏内には過疎地帯も存在する。そういった場所が貧民街と化していた。


「ここにも魔女ギルドはあるよね~」


「自然と水晶を取り出さないでください」


「減るものじゃないしいいでしょ!」


「私たちの気力が減る。いちいち聞かせないで」


「おならじゃないんだから」


 縁起物の水晶を取り出して耳を傾けるとサーチベリーたちは首を捻った。水晶の使い方を間違ってるって?




『空腹の獣が天空を彩る――――』


『輝かしい時に翼を撃つべし』




 輝かしい時に翼を撃つべし。うーん。役に立たない情報だよ。


 そう思っていると、ジュゲムから着信があった。




『寿限無寿限無五劫の擦り切れ』


『海砂利水魚の水来末雲来末風来末』


『食う寝るところに住むところ』




 何だろう? ジュゲムからの着信だよね……?


「どうかしたんですか?」


「ジュゲムが出てきたよ。何処にいるんだろ?」


「水晶で通信を取ってきたの?」


「うん。これは通信だよね?」


 私は寿限無を唱えてみせる。ウララとお餅は渋い顔になった。


「通信ではなく壊れただけではないですか?」


「酷いよ! 何処も壊れてないからね!?」


「壊れたのはカシーだった?」


 叩いて直そうとしないで! ゲームだからってあんまりだよ!


「ジュゲム攻略団の行く末をもっと占って貰わねば」


「そうですね。どのダンジョンから攻略しますか?」


「最難関の陽龍の迷宮に決まってるよ!!」


 量乗の迷宮をさくっと攻略した私たちに不可能はない! ジュゲム攻略団は怒涛の勢いでダンジョンを攻略するんだからね! 占いをしてピンチをチャンスに変える!!


 憤慨する私を他所に、お餅は私から掠めた縁起物の水晶をじっと見つめる。そうやってでも聞こえてくるよね。


「寿限無の後には何もなし。陽龍の迷宮を攻略しよう」


「分かりました」


「お餅を信用するってクランリーダーとしてどうなのかな?」


「お餅は2度のLVPに輝いた逸材です」


「ぼちぼち落ちよう」


 ログアウト推奨のLVP獲得者は言うことが違うよ。2度も取ってしまってからに。ログイン時間を大切にする私たちの威厳が損なわれる!


「お餅さん、本当にログアウトしちゃいました」


「あぁっ! まだ明日の予定を決めてないのに!」


「1分1秒がお餅のLVPに響きます」


 LVPって死亡フラグじゃない!?




 お餅がログインしてきてすぐ陽龍の迷宮に突撃した。RTAをしたがるお餅は珍しいじゃなくてただのゲーム音痴だよ!!


 陽龍の迷宮は適正レベル100から。

 階層は百層まであって攻略者にはほか貂たちも名を連ねる。E魔人もちゃっかり攻略しており、PKパーティーの巣窟となっている曰く付きだった。


 トリオ獣王国との国境にはダンジョンが犇めいており、今日出されたイベント告知ではダンジョンを中心とした配置とのこと。


「ファミレスで雑魚寝って斬新です……」


「サーチベリーが起きたよー!」


「おはよう! 今日からサーチベリーを占ってあげるよ!」


「占いは結構です!」


 陽龍の迷宮に潜り始めて2日目。お餅監修のRTA走法で一気に40層まで突き進んだ私たちは、ポーキーズキング一号店で一夜を明かした。


「ログインしましたよー。私が最後じゃなかった?」


「お餅が重役出勤してくるからね。大体一時間後だよ」


「1時間後!?」


 今日から10層ずつ進めればいいと判断したお餅はダンジョン攻略に消極的だった。LVP3連覇がかかっているから何も言えないよ。


 お餅を待っている間、ハイビィのレベリングに付き合ってあげた。レベル帯がレベル帯だけど40層ならパワーレベリングが出来る。1時間もあればあっという間にレベル100だ。


 レベル100に上がると加護2つでジャジィープロテクトを獲得する。パーティーに加えたハイビィにも当然、加護が2つある。


 しかしサーチベリー、加護を嫌ってパーティーには加入していない。始まりの街にいた頃と同じ風景が繰り広げられていた。


「おはよう。さくっと攻略しようか」


「何様なのか聞いておこう」


「お餅様だよ。今日からカレンダーがお餅に変わる」


「カレンダーじゃなくて水晶だよ!!」


「酷いオチです」


 この場合、お餅を許したウララの方が酷いと思う! しかし『サ学』のハードモードをクリアしたウララを私は責められない!


「攻略ですねー、ジャック」


「君のジャックだよ!」


「そこ、仲良くし過ぎない」


 ジャックまで不和をもたらすジュゲム攻略団だった。


「ハイビィは前に出過ぎないでね」


「分かりました!」


 1層から強力なモンスターに加えて多種多様な罠が散見する陽龍の迷宮。凶悪な火炎罠はこの迷宮のみにあって、10層ごとにフロアボスが存在する。


 ダンジョンは種族間闘争の激しかった古代文明をルーツにしている。世界樹と線引きされているのは種族間闘争を強調する意味が強いようだ。

 異種族を容認しなかったジアロノヴィア王国は旧体制を残したまま現代へと終着した。王竜ジアロノヴィアを信奉する信徒には優しく、その他の王竜も権威と認めてはいる。


「王竜が出張ってくるのは当分先だよね」


 50層のレアモンスターはジアロノヴィア・レクス。陽龍の迷宮にジオルグの力は働かない。




『―――――』




 この地にはジュゲムが眠っている。





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