第66話『縁起物の水晶』
『クルヘエーグの討伐を確認しました』
『アイテム「始まりの苔」を獲得しました』
『よくぞ倒した――――其方らには褒美をやろう』
『海千山千の宝を集めた者が勝利する――――』
『イベントクエスト「魔界の心得」をクリアしました』
『アイテム「始まりの苔」を獲得しました』
『隆起する雪原の主に我が身を捧げる――――』
始まりの苔2連ちゃん!!
2万円ゲットで喜ぶ私を待ち受けていたのはサイクロンの変化だった! サイクロンが小さくなった!?
「んにゃっ!」
「サイクロンが猫サイズになった!」
使い魔が小さくなるイベントクエストに私は驚いた。討伐したモンスターでクリア報酬が変わるのは読めていた! 始まりの苔二つゲット!!
クルヘエーグが討伐されて沼地エリアの正常化が行われる。すると、一匹の魚が沼地エリアに跳ねた。
「転職クエストが出てきた!」
「「魔法の垂界物」!?」
「うん! 沼地に小クルヘエーグがいる!」
魚と思ったけど小クルヘエーグだった!? ぱぱっと捕まえよう!!
水中に若干弱いサイクロンとジャックたちで包囲網を築いて、沼地エリアに現れた小クルヘエーグを捕獲する。
「捕まえた! お魚みたい!」
「おおっ! 翼も牙もないけど小クルヘエーグだよ!」
「可愛いモンスターです!」
短い手足に円柱状の胴体。ぬいぐるみのような小クルヘエーグを使い魔にしたお餅は、泥浴びで汚れた胴体を水で綺麗に洗い流した。沼地エリアでは移動速度が下がるのでクルヘエーグも難儀する。しかし小さな体だとそうでもないらしい。
「私も垂界物になれた!」
「良かったです。クルヘエーグも無事に倒せました」
「スタンピードは収まったのかな?」
もはや不可避の流れとか? ワールド情報ではいまいち分からなかった。とにかくトレントの大量発生はしばらく続きそうだよ……。
モンスターの異常発生。
倒されてなおレイドモンスターとしての風格が出してくるクルヘエーグの一部でも引き継いでいる使い魔かもしれない。
「名前はデスマッチにしよう」
「デスマッチ」
「平然と人を食べそうな名前です」
お餅のネーミングセンスは壊滅的だよ。それにしてもトレントが多い。効果範囲が広いのもあるんだけど。
「ほか貂たちが始まりの苔を使ったんでしょうか?」
「それもありそうだよ。願いの大地に戻ろっか!」
「E魔人の傘下ではとても動き回れませんね」
みかじめ料を盗られる前に願いの大地に逃げてしまおう。
2度のクルヘエーグ討伐を果たして、私たちはランキング10位圏内を不動のものとした。
始まりの苔は臨界物産。
トレインポーションは垂界物産だと仮説を立てられる。
トレインポーションを得やすいのは願いの大地だ。大自然族のプレイヤーを抱き込んで商売をしている商人プレイヤーがラブリー村では軒を連ねる。
「新規プレイヤーがいるのはいいことだよ。値段が値段だけど」
「買えなくはないですね」
トレインポーションはゲーム内通貨のコモンでも売っていた。かなり値が張るものの5本はまとめて買える金額。
始まりの苔は完全なイベント仕様のアイテムで値段はまちまち。リアルマネーでしか売っていないあたりに闇を感じる。
私たちが持っているのは計6個。
クルヘエーグの討伐報酬として確定かというとそうでもない様子だ。私たちは結構戦ったからね~。
7個もあれば1週間は戦える。
イベント期間中にイベントモンスターを取りこぼすことがないわけで、自然とトレインポーションに手が伸びていた。取り置き確定だよ。
『双神王獣イベントが終了しました』
『イベントクエスト「神獲配列ビンゴ」をクリアしました』
『アイテム「噛獲結晶」を獲得しました』
『イベントクエスト「ジャックフラワーコンテスト」をクリアしました』
『アイテム「神獲結晶」を獲得しました』
『双神敗れり。時は過ぎて天邪鬼が来たる――――』
『合格か不合格か』
『許されざる行いをした若輩者には神罰が下る』
ぴったり賞の予感は薄っぺらな内容で打ち消された。身につまされる話じゃないからね? 双神敗れり!!
「若輩者めと言われたよ」
「同じ内容だったんだ? 確かめ合おう!」
お餅とワールド情報の内容を確かめる。一言一句同じだった!
「何か違いがあると思ったよ~」
「何も無かったね」
「身につまされる話です。ビンゴの景品が珍しい双獲結晶でした」
「私は戯獲結晶2つだった」
「運がいい! 私は噛獲結晶と神獲結晶だよ!」
そういえば大裁縫師の転職イベントで上位結晶が3つも必要なんだよね。レイキーアにその気があればペフューの持つような水晶が作れる!
「結晶を持ってレイキーア工房に行こう!」
「賛成」
「レイキーアは意外とレベルが高いです。優麗匠になれますね」
始まりの街に住まうレイキーアでもなれるんだよね。上位結晶を3つ集めるのがかなり難しいだけで。
「ハオーラ。また来たよ!」
「カシー! 見ない間に立派な魔女になったわね!」
ハオーラに挨拶してからレイキーア工房にお邪魔する。
「レイキーア! 変わりないようで何より!」
「見慣れた顔ぶれだ。ようこそ」
「お邪魔するよ! 早速で悪いけど水晶が欲しいんだ」
私は2人と上位結晶を交換して水晶を求める。ランキング報酬? 2度目なので面白味に欠けるよ。
「3種類の合成か。これは腕が鳴るな」
「優麗匠にはなれそう?」
「ああ。水晶でいいんだな?」
私はレイキーアに頷く。
他に注文は無かったので待っていると、レイキーアは3つの上位結晶で水晶を作った。ジャックとジャンヌはぱちぱちぱちと手を叩く。
「完成だ」
「ありがとう! どんな仕上がりかな~」
「過去最高の傑作になった」
そこまで言うならとアイテムテキストを見てみる。
・縁起物の水晶
垂界物のために作られた水晶。覗くのではなく耳を傾けるべし。
説明が雑だなぁと水晶に耳をへばりつけると聞こえてきた。
『この水晶を手に持つと災いをもたらす――――』
うーん。ネタアイテムかな?
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