第67話『ワールド情報』
アイテムを少し整理してから優麗匠レイキーアとパーティーを組んで地下の工房を後にした。優麗匠らしい工房を持つべきだよね!
そんなわけで願いの大地に戻ってきた私たちは、ジャック・ザ・ツリーで新たなレイキーア工房を建てることにした。
優麗匠の力で工房全体の外観をよくして、ケルベローグで見かけた建物に近付ける。ジオルグホテルを建てた私たちだからこそ1週間で完成させられた。
「夏が終わった! 王イベも双イベも楽しかった!!」
「楽しかったですね」
クルヘエーグを3度も討伐してE魔人とノヴァを倒し損ねた。後半はよろしくない思い出だけど楽しかったからよし!
レイキーア工房の3階に私たちの部屋がある。内装を手掛けたのは新米優麗匠のレイキーア。クルヘエーグから剥ぎ取った毛皮をふんだんに用いたので豪華となっている。
「スモークチーズが出来たよ」
「食べる!」
「私も頂きます」
厨房の主となったお餅はエルゲン土産のチーズをスモークしてくれた。5人でテーブルを囲んでのんびりと過ごす。
「ランキングは惜しくも5位だったね」
「GVPもMVPも取られました」
「仕方ないよ。お餅だけがLVPを取れるのかな~」
「伝説級の魔女だから」
悪びれもなくそう言うのでほっこりとお茶をすする。
ウララはランキング5位。ついでお餅が6位。私は10位入賞だった。
天地がひっくり返っても廃人勢には勝てない。クルヘエーグ討伐でポイントを大量獲得した廃人勢にも当然ながら勝てなかった。
そしてE魔人のような極悪人にも勝ち目はない。ほんの一握りのプレイヤーだけど、イベントに有利な情報を知っていて狩り場を独占したがる者がいる。
「伝説級の魔女は冬を越せるかな~」
「越せないと思う!」
「カシー、占ってください」
お餅が無敗のレジェンドに至れるか否かこの私が占ってあげよう!
縁起物の水晶を取り出して、どや顔で耳をへばりつける。枕じゃないって? 冷たくて気持ちいからいい枕なんだ。
『伝説の朝はもう来ない――――』
『人の皮を被った獣が1匹ここにいる』
『貴様を食らってやるぞ』
私は無言で耳を離した。いつの間にかホラー水晶になってる!?
「何か聞けたの?」
「な、何にも。ケルベロスのいた魔神宮に行ってみる?」
「量乗の迷宮が発見されたんでしたね」
「うん! 迷宮に行けば何か分かるかもしれないよ」
この水晶、優麗匠が作ったネタアイテムだけど馬鹿にならない。未来を見据えるための水晶なんだ。
量乗の迷宮はケルベロス討伐時に広まったダンジョンで、マップ情報が高値で売られるほど魅力的な場所だ。
量乗魔神宮は迷宮外周に存在する祠と遺跡の連なるフィールドで、鬱蒼とした植物と迷路構造のフィールドがプレイヤーを阻む。適正レベルは120以上と近場のフィールドでは最難関クラスだ。
トレジェリスのある死獲城塞域に向かうプレイヤーが圧倒的に多く、サービス開始組には穴場となっているフィールドのようだ。黒リザードマンが量乗の迷宮を守護している。
「うわっ、強い!」
「まるで兵隊ですね!」
リザードマン・バスターの理路整然とした戦いっぷりにレベル以上の強さを感じながら量乗の迷宮まで突破する。
「お餅の魔法が頼りだよ!」
「ええ! 一撃粉砕ですね!」
「私のことを持ち上げないで。このクルヘルグが強い」
「ぬきゅっ!」
金剛杖クルヘルグも強いし使い魔のデスマッチも強い! デスマッチはレベル100の状態でテイムされていて、リザードマン・バスターに速攻で体当たりする。助けるのは私たちだった。
「私はサイクロンが小型化して嬉しいよ。ジャックも小型化する?」
「出来ないよ!!」
「元より軽い生命体です」
ジャックエアーの詰まったジャックかジャックフラワーの詰まったジャックか……ランキング報酬でぬいぐるみが欲しかったよね。
VRゲームでは割と増えてきているリアル方面のランキング報酬。JCOでは未実装なのでジャンルが違うのかなぁと思ったり思わなかったりする今日この頃。
「公式サイトのチェックは外せないよ。ゲームの景品になってるかも」
「次のイベントは飛ばしますか?」
「2学期は忙しいよね~」
「うん。私はパスで。1日はトレント討伐をしておしまい」
「私もそんな感じでいいかな?」
始まりの苔を1度に使うのも非効率だと言える。廃人勢には結局勝てないのだし、サイクロン戦法を極めた方が楽しい。
【万物調教】でサイクロンを操り、リザードマン・バスターを倒す。迷宮内でもサイクロン戦法で攻めるつもりだ。ウララたちとの連携も取りやすいし、サイクロンのレベリングになる。
エレメでも試させて貰って、機動力ではエレメが勝ると、地上ではエレメを使うことに決めた。ウララの使い魔だけどエレメは共有状態である。魔法の世界箱に入れられるから安心だ。
「ここで水晶タイムだよ」
「1時間に1回は聞いてますね……」
「ヘビロテしてる?」
「同じ台詞じゃないんだって! ワールド情報なの!」
私は少しむくれて水晶に耳を当てる。ひんやりして気持ちがいい。
『量乗の奥地には災いが眠る――――』
『見つけた者は追憶の日を味わうだろう――――』
それっぽく繰り返すと2人は表情を暗くした。
「迷宮の情報じゃないよね」
「カシーはその水晶を方位磁針と思ってる」
「まあね! 魔除けだよ魔除け」
「E魔人に出会わないためですか」
みかじめ料を盗られるから嫌なんだよ。ひっそりと攻略しないと命を狙われる。遭遇は死を意味するんだ。
占い師の真似事をしながら量乗の迷宮へと到着した。
海岸線には巨大なサーペントと戦う1隻の船。水晶では見られなかったなぁとそれから役立たずの縁起物に耳を貸すのは止めた。貴重な結晶アイテムを無駄にした気分だよ。
ブックマークよろしくお願いします!! 評価も頂けると!!




