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隠密ジョブのメレンゲレンジ  作者: タ別


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第65話『2体の臨界物』




 討伐を見据えるクルヘエーグにちょっかいを出したゴンザのせいで主戦場は荒れに荒れた。


 ほか貂とポたんはデスポンして退場。

 私たちも一旦エルゲンに下がることになり、死に物狂いで2体を引き剥がして力尽きた。


「レイドイベントは毎度ながらお祭り騒ぎだよ」


 ジオルグホテルの倒壊から日が浅くダメージの大きい私たちには2体目の臨界物がちょっとばかり重たく響いた。


 まさかの裏切り行為である。

 聖騎士団が見抜けなかった臨界物同士の語らいに嫌というほどのプレイヤーが頭を抱えた。私たちもその1人だ。


「イベント6日目です。今日こそクルヘエーグを倒しましょう」


「準備運動から始めるかな?」


「まずは垂界物ズを探さなければ」


「お餅はそろそろ垂界物になるべきだよ」


 お餅に隠し上位職業クエスト「魔法の垂界物」が出現すると踏んでトレインしたのもある。使い魔のテイムが鍵だからイクシード城や魔女の館でも可能だけどね。


「先になっておきたい。何かヒントはある?」


「う~ん。使い魔にするならクルヘエーグかな?」


「無理ゲー」


 お餅の言葉に私とウララは肩を震わせる。


「レイドモンスターを従えるE魔人がいるからお餅にも出来るよ!」


「私はランキング戦に興味なし」


「今日中に倒さなければ明日にはスタンピードです!!」


 ちゃっかり10位以内をキープしているお餅は言うに事欠いてランキング戦に興味がないと嘯いた。


 始まりの苔はまだ2つある。

 巻き返しを図るならばクルヘエーグ討伐からトレント狩りに繋げたい。始まりの苔は誰でも得られるようだからね。


 リアルマネーを使ってゲーム内アイテムを購入するプレイヤーも出てきた。始まりの苔やトレインポーションがその筆頭に上がる。


 始まりの苔はなるべく高レベル帯のフィールドで用いることで最大限効果を発揮する。トレインポーションも同じだ。私たちもお世話になったのでゲーム内アイテムにリアルマネーを使いたくなるのも納得する。


「調べた限りじゃトレインポーションの相場が千円だよ」


「吹っかけ過ぎです。始まりの苔はいくらですか?」


「1万円。リアルマネーを使い始めるとお財布が厳しくなるね」


「使わない方向で」


「始まりの苔は必需品だから集めて損はないよね!」


「ええ! 自力で集めてこそです!」 


 気合を入れてクルヘエーグ討伐に再チャレンジだ。


 討伐目標めがけて飛び出した私たちに魔法攻撃がちらほら。状態異常以外は効かないものの回避して突撃を決める。


 クルヘエーグの両角が折れて討伐は目前と思っている。ほか貂たちも参戦しており、お目当ての始まりの苔を得るべく集まったプレイヤーは結構な数いた。


 邪魔立てする輩はPKerだけじゃない。

 昨日の段階でゴンザが倒されて聖騎士団の一部が暴走している。ゴンザはE魔人とノヴァが倒している。


「プゴッ!!っと!」


「うわ、出た」


 主戦場に現れたE魔人は煩わしいプレイヤーを積極的に狩っていた。ほか貂とポたんも例外ではなさそうだ。


「またみかじめ料?」


「貰えるなら欲しいね。こいつのお肉でいい!」


「了解だよ!」


 みかじめ料を払えば見逃してくれるE魔人にほっと安堵の息を吐く。ノヴァに手を出したことは怒ってないようだ。


「ゴンザは倒したけど美味しい敵だったよ。まさか本当にトレインしてくるなんてねぇ。愉快愉快」


「トレインしながら友達を垂界物にしたかったんだよ」


「最終盤の街は大自然族の街だったけど。そこで種を得られる」


「種じゃなくて苔だよね?」


 E魔人は花を枯らす凶悪な笑みで答えてきた。始まりの苔だよね……? 始まりの種はないよね?


「カシー!!」


「はいはーい! 危なかった危なかった!」


「援護助かります!」


 E魔人と話しているとウララが空中でピンチに陥っていた。


 E魔人のお陰もあってクルヘエーグ討伐は滞りなく進んでいる。

 ワールド情報をチラ見した私は、E魔人の持つ刀に興味を惹かれた。大自然族の街で手に入れたレアアイテムかな?


 実刀で銀色のエフェクトが特徴的。隠密向きではないものの抜刀の寸前までエフェクトには気付かない。氷結の状態異常付きでジィークの衛星地も関わっていそう。レア結晶を用いた武器だ。


「1体目はどうやって倒してる?」


「トップランカー総出だよ。E魔人はいなかったよね」


「種を採ってくるので忙しくてね? 周回効率ではクルヘエーグが最良と」


「1か月で大陸を横断した勢力は強いよ」


「私以外に出来たとは思って欲しくないかな」


 自信ありげのE魔人はPKパーティーと合流して何処かに行ってしまった。どうして殺されないかは彼女のポイントが物語る。


 始まりの苔とトレインポーションでトップ独走中のE魔人。ほか貂はクルヘエーグ討伐とPKの対処に追われるあまり順位を落としている。イベント2大アイテムが揃わないとランキング戦で勝ち目はないね。


「もうすぐ倒せるわけだが……」


「ほか貂。大丈夫そう?」


「さあな。E魔人に手柄を譲ろうと考えていたところだ」


 ご機嫌斜めのほか貂にご立腹のポたんが出張ってくる。


「E魔人に取り込まれたんですか!? 間違ってます!!」


「そんなんじゃないよ。味方に付けようとして失敗したけど見逃された」


「味方に付いた感じはあるだろう?」


「共通の敵がランキング1位のほか貂になるのは自明の理だよ」


「プレイヤーキラーに協力するなと言いたい」


 そうは言ってもイベントで狙われたくはない。集中砲火を浴びたほか貂には悪いけど、ほか貂も私たちを囮にするくらいやってのけるだろう。


「ラストアタックはほか貂に譲るよ」


「はぁ……俺たちにはあのE魔人に勝てる見込みがあるか?」


「私たちだけでは勝てないかな?」


 イベントは残り2日。

 クルヘエーグを倒してもほか貂が得るポイントは知れている。両角を破壊しているのでその分の加算があるか否かだ。かなりの頻度でPKされていて私もどうしたものかと悩んだ。


 ウララもE魔人には恨みがある。ノヴァ討伐は失敗したけどチャンスがあれば再戦を挑むだろう。


 赤個体に比べると大人しい金個体の討伐。しかしやはりと言うかほか貂が執拗に狙われた。ドロップアイテム寄越せとまで言われる始末だ。私? 怖いからE魔人に捧げるよ。


「あっ! カシー! イベントクエストが発生したよ!」


「このタイミングで……?」


 ジャックが思い出したようにイベントクエストの発生を報せる。




『イベントクエスト『魔界の心得バージョン・スライムズ』を開始しますか?』




 怪しげなイベントクエストで詳細を見てみる。




 ▽

 クリア条件:使い魔を使ってイベントモンスターを1体討伐すること

 推奨レベル 80




 何かの前振りか、唐突に現れたイベントクエストを消化しにかかる。サイクロンと協力して目の前のクルヘエーグを討伐すればいいだけ!


「このまま沼地エリアに引きずり込もう!!」




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