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隠密ジョブのメレンゲレンジ  作者: タ別


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第60話『襲撃者E』




 イベント5日目。

 狩り場を同じくするトップ層は狙いをクルヘエーグへと移した。ケルベロスのいるエリアは願いの大地よりも遠い。


 5日でランキング上位は固まってほか貂とE魔人が首位争いの最中。首位独占など不可能だったよ……。


 しかしクルヘエーグ討伐さえ叶えばという思いがあった。

 2匹目として現れたのは色違いのクルヘエーグ。ワールド情報通りだとすると、垂界物の蠢きによってパターンを変えてくるタイプのレイドモンスターだ。


「というわけで助力頼むよ、E魔人」


「今忙しいからこっちにトレインしてきてくれる?」


 討伐難易度が更に高まったクルヘエーグを倒すために私はE魔人に助力を乞うた。最終的には破滅大林道で決戦だと睨んでいたので、トレインする方法をレクチャーして貰う。


「どうやってトレインすればいいかな? 種族は臨界物で種族特性はアシストを受けられることなんだよ。垂界物という種族が暴走の原因だった」


「知らないけどその垂界物だったの?」


「危ないなぁ! 殺される謂れは今のところないよ!」


 喋っているといきなり剣を首筋に当ててきたE魔人に文句を言う。


「同類認定されるのはムカつく。乙女ゲーは好きだけど私偏食だから」


「自分で言っちゃうんだ」


「オークと愛を育めるチャンスを逃すと思う?」


 愛って何だろう。オークと合いびき肉のあいかな? モーアイのあい?


 E魔人はほか貂たちを脅かす破滅大林道の主となり、イベントそっちのけでPKをしていた時期が2日目と3日目だった。イベントモンスターを狩ったプレイヤーを大食らいするせいで嫌われ者である。脊髄反射で殺しにかかってくるよ。


「『JCO』はクエストが豊富だから面白いよね」


「そう?」


「垂界物はクエストに強くなれるから攻略の助力も出来ると思うよ」


「ふーん。どう強くなれるの?」


「だから武器を収めて語り合おう? 『サ学』のこととかさ」


 警戒心の強いE魔人はPKだからと気にしない私を訝しげに見てくる。待ち合わせ場所で殺されかけたのは今更である。


「ノヴァは待たせられると怒るから10秒で済ませて」


「垂界物はクエスト後にワールド情報を奏でる楽器! ノヴァには調律の取れた楽器が必要だよ!」


「……グウリ・フォン・エーテルミヤね」


 楽器でその名前が出てくるということは相当なファンだ! 第3王女の婚約者であるグウリ・フォン・エーテルミヤを略奪する時には必ず楽器を用いなければならない! うどん屋の厨房にある魔導コンロが楽器判定なので運が良ければグウリが来店する!


「3番目に好きなキャラだよ。ハードモードでは簡単に肩を組んで酔っ払って泥酔フルコースで婚約破棄までこぎ着けた」


「ド焼酎で酔わせちゃ駄目でしょ」


「酔わせまくって陥落した2人のうちの1人だから!」


 第3王女との婚約破棄で毎度泣けてくるのだ。もう1人の方は泥酔させて豚小屋に放り込んで3日間熟成させた。伝家の宝刀、煙でね。


「分かった。とにかく助力がいるワケね?」


「そうなんだよ! クルヘエーグを倒すには最低でも5人必要! 垂界物ズには心当たりがあるから周囲を説得してNPCを口説かないと」


「なかなかデンジャラスな橋かも。いっそのことPKになれば?」


「悪の手を借りたい時は今だけだよ! オークは討伐対象!」


 交渉は破談に終わってE魔人から追われるように破滅大林道を離れた。行き先はトレジェリスにある魔女の館だ。


「うはぁ……プレイヤーが沢山いる」


「魔女多し」


 北方の城塞都市トレジェリスはイベントフィールド「怪羽放域硫」に近いためプレイヤーで溢れ返っていた。魔女の活躍が光ったイベントシーンの効果か、魔女の館でクエストを受けるプレイヤーが増えた。


 耳をそばだてているとレイドモンスターに関する会話が聞こえてくる。


「クルヘエーグと戦ってみたか?」


「戦ってきた。金個体は難易度調整ミスってるだろ」


「良くて撃退って聞くけど赤個体は8時間で倒されたからな」


「ケルベロスの方が腕試しには丁度いいな」


「だがトレジェリスからだと遠すぎるだろ」


 この5日間でケルベロス討伐が為されていないのは謎めいている。既に討伐されてもおかしくない状況だけど、ランキングが大きく動くことは無かった。クルヘエーグも例外ではない。


 レベル350で第2形態に移行するとフィールド一帯のジャイアント・グリーンベルを暴走させる。魔王化と囁かれている形態変化で、垂界物が多いと最悪のケースもありうる。


 全イベントモンスターの都市襲撃だ。

 前回イベントを踏襲するか否かでプレイヤーの動きは大きく別れる。クルヘエーグを動かそうとする勢力もいるようだけど、機動力で瞬殺されるため相手になっていない。


 クラン単位の動きも鈍く、破滅大林道から出ない選択を取るクランは多かった。水上コテージに宿屋を併設して、プレイヤーの流れを作りつつ情報収集に邁進する。


 即席の討伐隊を作るのが関の山。

 それが可能だったのは曲がりなりにも最前線の街が襲撃されたからだった。金個体はプレイヤーの密集する場所を目指して移動しない。


 クルヘエーグの移動検証は進んでいて進路を破滅大林道に持って行くことは可能。フィールドから出したくない一部のプレイヤーは、地に根を張って攻略する心づもりだろう。


 介入されにくい立地を選んでいるのも討伐の足がかりとするため。最終日までかけて討伐するのが目標のクランが少なからず1つある。


「結局はPKに甘んじるかだよ。って、E魔人に言われた」


「目をそらしました。嘘ですね、カシー?」


「ふと思っただけだよ! E魔人がどれだけの思いでPKをしているのか……! オークの愛を真実と捉えたからなんだよ!? 分かる!?」


「分かりません。お餅も何か言ってやってください」


「カシーはいつも通りのお転婆だよ」


 お転婆は余計なお世話! 私は『サ学』でダークサイドを極めたゲーマーだからね!?


「E魔人は真実の愛がオークだって設定でご飯3杯はいけるんだよ」


「そんな情報いりません」





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