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隠密ジョブのメレンゲレンジ  作者: タ別


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第59話『隠密魔人のウルトラレンジ』




 パフォーマンスに優れた種族を選んだ。私の場合は鬼人族だ。


 見た目は醜く豚のようにする。美形にするほどその輪郭が際立ち、醜悪にするほど内面の醜さが際立つ鬼人族に惚れた。


 この邂逅は不可避だっただろう。


 私という存在を決定付けるのにイベントは醜いものに映った…………






 ◇






「ひゃはっ!!」


「プゴッ!? ちょっと! どういう了見かなっ!?」


 驚愕もなく笑顔で応戦してくる1人の少女にこれまで培ってきた暗殺スキルが効かずに発狂しかける1人の醜女。


 醜悪な鬼人族の見た目に反してはつらつとした声を放ってくるので、お楽しみの邪魔をされたくないんだろうと距離を取る。アブノーマルな装備はノヴァの容貌と合わせてのものか。


「凄いアバターだね!」


「それはお互い様! 大自然族じゃない? 状態異常で死ね!」


「ノヴァの乱撃息は知ってるよ!!」


 驚いたには驚いた。噂通りにノヴァを従えて破滅大林道でPKしまくっているとは露ほども思わなかった。


 トップランカー同士仲良く出来ると思ったけど予想外。小手調べに襲ってきたのではなく完全に殺すつもりだった。


「レイドモンスターを従えるとは相当危ない橋を渡ったと見るよ!」


「感心してる? それは嬉しいね!」


 E魔人は嬉々として斥候の私を排除しようとする。ノヴァを利用する観察眼といい危険極まりないプレイヤーだ。ノヴァとはパーティーメンバーではないしテイムモンスターでもないのがありありと分かる。


 ノヴァは目の前の雑魚を殺すために動いている。強敵と認めた存在には決して触れないという潔癖っぷりだ。


 垂界物とは異なる正真正銘の化け物。

 E魔人の付け入る隙があったのもノヴァの性格にあるんだろう。ただ1人が味方をするだけで100にも及ぶ討伐隊を退けられるのかは疑問だ。ノヴァを従えるE魔人はその首に賞金がかけられている。


「不味いなぁ、囲まれたかな?」


「それはどうかな~」


 時間稼ぎを続けていると、E魔人は弱った表情で言った。


「私はE魔人。夜賂死苦!!」


「スキル斬撃!?」


「バレバレの攻撃を見切られても仕方ないけど……さぁ!!」


 テンタクルヴェールで直撃を回避しつつ攻撃を受ける。

 E魔人はE魔人でノヴァ頼りの戦術が極まっているせいかスキルに乏しい様子だ。パッシブスキルはどれもステータス上昇系。鬼人族の強みは分かり切っている。


 洗練された動きをオークアバターでやってのける技量は素直に褒められる。立地を選んでPKを行うのも理解の範疇にあった。


「沼地に叩き落としてあげるよ」


「こっちの台詞!」


 挑発すると乗ってきたので沼地エリアに逃げ延びる。ひょっとしなくてもトカゲの尻尾切りがしたいだけじゃないかと思えてきた。次回以降のイベントを考えるとノヴァは明らかにお荷物だ。


「ノヴァ。一緒に倒さない?」


「それだけは断る。私のこと何だと思ってるの?」


「挨拶代わりに殺そうとする変人かな」


 決して愛嬌のあるモンスターじゃない。E魔人もE魔人だけど似た者同士がくっ付くのは乙女ゲームの中だけだ。


「ランキング3位のカシーね」


「そうだよ。『サ学』はやったことある? 最近嵌まったゲームだよ!」


「…………やっぱり殺すの止めた!!」


 乙女ゲームを主食とする人間なればこそ出会いを求める! 愛嬌のないキャラクターを攻略してデレさせるのも1つの攻略方針だ! ハディース・ノヴァがどうデレるのかはさておき、明確な意思を持って攻略に当たらなければユニークイベントクエストは出て来ない!!


「モンスター同士の恋愛って良くない? 私はソッチが好みで」


「あ~。私にはちょっと分からないかも」


「こっちは婚約前提だから死ぬまで付き合うって決めてる」


 うん……そんなタイプもいるんだ。色んなゲーマーがいるね!




 自らをモンスターと自称する変わり者のE魔人とフレンド交換して、ほか貂たちの邪魔をして貰う手筈となった。手間賃にクルヘエーグの素材を渡した。


「みかじめ料を盗られたよ。とほほ」


「あくどいプレイヤーを雇ったように聞こえたけど」


「孤児を雇うのと同じ原理だよ、お餅」


 林檎を盗めとか手紙を盗めとか言わないとハードモードでは攻略情報が手に入らない。そうして闇に染まっていく。


「ウララは『サ学』をクリアした? E魔人はプレイしてそうだったよ」


「PKと仲良くならないでください。風評被害に遭いそうです」


「ランキング1位のウララが裏でランキング15位のワルと付き合いがある。掲示板のいいネタになりそう」


「お餅がゲームにのめり込んでくれて嬉しいよ……」


 ウララを売るつもりなのはどうかなと思う。私は仲間を売らないよ!


「ハリエルたちは元気かなぁ」


「元気だといいです」


「向こうにはサーチベリーがいる」


 最前線の街を心配しながらイベントトレントをばっさばっさと伐る。沼地エリアが空くとトレントが繁殖するのにはちょっとした理由がある。


「始まりの苔は使えるね~!」


「好立地です!」


 沼地エリアに配置したのは始まりの苔だ。

 設置すると24時間、イベントモンスターがポップするようになる。非イベントフィールドでも効果の見込める神アイテムだ。


「オークと結婚するよりクルヘエーグ討伐だよ」


「2度目は厳しい」


「討伐は大変でしたね。神アイテムが得られるとあれば別ですか」


「始まりの苔で有利に働くかというとそうでもないけど」


 ポップ率の高さが売りだ。ジィーク由来のアイテムかな?


 今日明日はフィールドの奥地でトレント討伐。ウララ1人でも十分倒せるので頑張って貰う。


 現在のランキングはこんな感じだ。




 1位 ウララスプーン      ▽EP 4,054,305

 2位 水切りお餅        ▽EP 3,744,097

 3位 カシー          ▽EP 3,550,434

 4位 ほか貂          ▽EP 3,040,973

 5位 E魔人          ▽EP 3,000,000

 6位 KENN         ▽EP 2,865,394

 7位 オイトン         ▽EP 2,854,400

 8位 ポたん          ▽EP 2,834,331

 9位 後素           ▽EP 2,749,436

 10位 マヤ卍ヤマ        ▽EP 2,653,434





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