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隠密ジョブのメレンゲレンジ  作者: タ別


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第58話『ケルベローグの朝』




 結晶の煌めく最古の都市、ケルベローグにやってきた私たちは、討伐隊の出征に後ろ髪を引かれながらクエスト探しを始めた。


「あれは竜獲結晶だよ」


「神殿では無さそうですね。街の役所ですか」


「行ってみたい」


 街明かりに竜獲結晶の飾られたケルベローグの役所に入っていく。


「広いね~。何でも揃ってそう」


「プレイヤーの集まっている場所がありますね」


「クエストって感じじゃない」


 ケルベローグの役所にはプレイヤーがわんさかといた。人の流れに従ってると囚われそうだよ。


 受付窓口には魔女っ子NPCがいたので話しかけてみる。


「ケルベローグへようこそ。ご用向きは何でしょう?」


「イベントクエストだよ」


「でしたらこちらがよろしいと思います」


 表示されたのは魔法都市で受けられる通常のイベントクエストだった。しかしNPCの好感度を左右する。ハリエルたちと別れて垂界物の魔女を求める私には願ってもないクエストだ。


「受けるよ。クッションを上げるからね!」


「私たちもそうします」


「わ、私にくれるのですね? ありがとうございます!」


 イベントクエストの納品で好感度をがっぽり稼ぐ! 垂界物と繋がる魔女なら大歓迎だよ! ハリエルたちには申し訳ないけど、きっと足止めになってくれる! ランキング戦でダーク面を極めるのもありかな?


 ラブリー村で作ったクッションを魔法都市のNPCに上げる。するとパーティーを組めて獣人の国まで一直線だ。ランドマークのノヴァがいるので先回りして迎え撃ちたくなる。


 私たちはライトサイド。戦い方を選んで闇落ちしないように立ち回れる。昨日は徹夜してクルヘエーグをガチ攻略したから、やっぱりクルヘエーグを倒したい気持ちは強い。


 復活するレイドモンスターだ。獣人の国に行くと詳しい情報が分かる。ジャックもジャンヌもイベントの詳細は知らない。


「垂界物は知らない?」


「垂界物ですと南のアウロラ様ですね。今は読書をされています」


「水晶で何でも分かるんだ! ケルベロスの位置は?」


「ケルベロスの位置は量乗魔神宮の南端です。王者の覇気でプレイヤーを圧倒しています」


 便利な水晶を持っている魔女っ子に名前を聞いた。名前はペフューと言ってアウロラの教え子とのこと。


「ペフューとパーティーを組みたいよ!」


「私には仕事がありますので」


 願望を唱えるとさっぱりした答えが返ってきた。


 ペフューにフラれてケルベローグの役所を去る。ケルベローグの南にいるアウロラが頼りだ。


 アウロラに会いに向かうとプレイヤーに囲まれていた。


「残念。プレイヤーが囲んでるよ」


「まあ仕方ない。世にも珍しいダークエルフ」


「ジィークの恩恵です」


 魔法都市の人気者となっているアウロラを連れて行くのは骨が折れそうだ。とっておきの秘策はここで潰えた。




 私たちは街巡りをしてケルベローグを出発した。

 移動はシャフト。それに尽きる。

 私たちの冒険は始まったばかり。飛行出来るのが垂界物の特権かな? クルヘエーグがモモンガよろしく飛行する姿は是非見てみたい。


「破滅大林道に入ったよ!」


「やっと着きましたか!」


 横長の大陸で人族の国、ジアロノヴィア王国と獣人の国、トリオ獣王国の間に位置するフィールド、破滅大林道へと辿り着いた。


 魔人廃街道とは似ても似つかない魔の海域であり、ボートがないと通行出来ない高難度エリアだ。


 木々を走って移動するのが隠密ジョブの誉れ。

 破滅大林道のモンスターがイベント仕様と化していて、E魔人とノヴァがこのフィールドに潜伏しているという噂がある。ノヴァを利用するE魔人に組み入ったプレイヤーもいるのだから危険地帯だ。


 斥候を買って出た私は木々に潜伏しつつモンスターを見つけ出す。高レベルだと警戒して近寄って来ないのがこの辺りのモンスターに共通しているという。

 ジアロノヴィア王国の果てにいるモンスターでも格下扱いとなった。イベントフィールドは徐々に獣王国側へと移るはずなので、レベリングだけが攻略では無くなってくる。マッピングも必要だよね。


 破滅大林道の安全なルートを探していると、前方から戦闘音が聞こえてきた。警戒しなかったのは破滅大林道の入り口に近いからだ。


「狩り場を作って斥候が獲物を釣ってくると」


「そんな感じだね~」


「手作りの筏がベストマッチする」


 私たちはボートだけどお餅の装備する金剛杖クルヘルグが最高のオウルになってぐんぐん進める。腕と一体化しているのが少し難点。


 他のプレイヤーは筏をいくつも浮かべて戦闘エリアを作っていた。村の1つありそうだと思って広大な樹海で探してみることに。


「セーブポイント発見!」


「あれはプレイヤーメイドでは?」


「プレイヤーメイドでも宿屋の看板があるよ!」


「凄い立派なコテージ」


 水上に浮かぶ巨大コテージを見つけて上陸した。ショッピングモールのような外観で、見覚えのあるクランエンブレムが垂れ下がる。宿屋にはNPCがいた。


「今日の旅はおしまい!」 


「旅の疲れを癒せる宿屋かな~」


「ベッドしか無さそうですがそれでも助かりましたね」


 私たちは大してモンスターを倒すことなくログアウトするのだった。


 夜の七時にはログインして破滅大林道のモンスターを効率よく倒していく。イベント仕様となってドロップアイテムに変化があり、ボス個体は極稀に神獲結晶をドロップする。


「ボスのお出ましだよ!!」


 沼地エリアのエリアボス、クローラースケート・デッドを釣り出して、上空からの一方的な砲撃に任せる。筏を破壊してくる難敵だけど、こっちは機動力のある箒だ。大自然族好みのモンスターと言える。


 クローラースケート・デッドを倒せば私たち全員のビンゴは完成する。クルヘエーグに次ぐ大枠のボスモンスターで、ほか貂たちもクローラースケート狩りを行っている。


 イベントフィールド全てを巡るのが一先ずの目標となってくる。第1回イベントではNPCを引きずり回した私たちだけど、第2回イベントではお淑やかに攻略しようと結論が出た。


 MVPやSVPを取っても結局のところ報酬をNPCに譲ってしまう。攻略方針はみんななかよくなのでダーク面は極めなくてもいい。


 しかしランキングで勝ちたい。ほか貂たちと同じようにポイントを稼いでいれば極論追い付かれることはないと踏んでいた。


 ランキング首位独占。邪魔が入っても仕方がないただそれだけだ。


「プゴォォォオオオオオオオッ!!!」


「ブピャアアアアアアアアアッ!!!」


 一瞬でオーク一色に塗られた景色に私たちは否応なく巻き込まれていく。





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