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隠密ジョブのメレンゲレンジ  作者: タ別


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第五十七話『願いの神獲』




 イベント2日目。願いの大地に集まった私たちを歓迎してくれたのは見目麗しいジャックフラワー畑だった。


 イベントフィールドは5つ。今回の双神王獣イベントでは願いの大地も含まれる。

 上空を見回すとラピスワイバーンとその上位種であるカロンワイバーンが飛んでおり、自然族や大自然族を歓迎する動きがラブリー村をにわかに活気立たせている。


 ジャックフラワー畑を作ってカロンワイバーンを降ろす。大変地味な作業ではあるけど、私たち向きのクエストまで用意されていた。


「コンテストのためにジャックフラワーを育てるよ!」


「「「「おぉ~っ!!」」」」


 『ジャックフラワーコンテスト』……ラブリー村で行われるクッションの祭典でいかに豪華なクッションを作ったかによって獲得ポイントが決まる。育てたジャックフラワーの品質もかなり重要な指標だ。


 大自然族の四人で隊列を組んでジャックフラワーを育てまくる! ウララは如雨露片手にラピスワイバーンを討伐してくれる。大自然の如雨露というイベントのキーアイテムで、実際にコンテストを受けたというプレイヤーから買い取ったものだ。


 私たちには特大級の毛皮がある。『ジャックフラワーコンテスト』で優勝出来るのは私たちの他にいない!


 平和なラブリー村のイベントクエストで稼ごうとするプレイヤーは極々稀で、サーチベリーはイベントフィールドを席巻するために冒険に繰り出した。ほか貂たちは最前線に残って素材集め。


「だいぶ集まったね! これくらいあれば十分かな?」


「ジャックフラワーが沢山だよ!!」


「こっちはジャンヌフラワーであります!!」


 嘘吐きジャンヌにはお灸を据えて、栽培したジャックフラワーを採取。クッションを作ってくれる村長の娘に会いに行く。


「まあっ。ジャックフラワーがこんなにも沢山。どのようなクッションをお作りしますか?」


「コイル式のクッションで頼むよ」


「通な頼み方です」


 村長の娘にジャックフラワーとクルヘエーグの覆硫毛皮を渡す。


「素晴らしい素材です。コイル式だと捻じれば宜しいのですね?」


「うん」


 捻じれば宜しいのだ。ハートのクッションになるかな?




『イベントクエスト「ジャックフラワーコンテスト」をクリアしました』


『アイテム「神獲結晶」を入手しました』


『この弾力に海馬が唸る。早世の人族に見せてやりたいものだ――――』




 因みに村長の家系は長寿の森林族だ。このハートクッション、結構上から目線で作られてるよ……。


「まあいっか。神獲結晶ゲット!」


「私も手に入れました」


「ふふふ……私だけ噛獲結晶」


「噛獲結晶!?」


 どんな結晶なの? 装備進化に用いるのは戯獲結晶と同じだろうけど。


「この結晶だけで食べていける。ポイントも美味しい」


「美味しいね~。レイド素材で神獲確定は大きいよ」


「クルヘエーグクラスとなるともう一体のケルベロスしかいない……あっ」


 掲示板を見ていたウララは驚きの声を上げた。


「クルヘエーグの復活……? 獣人の国ではケルベロスと対なすモンスターは一様に復活すると情報にあります」


「復活するの? 臨界物だからかな?」


「臨界物……よく分からないけど種族特性で復活?」


 種族特性で復活はあり得なくなさそう。垂界物の上位職業がまさかクルヘエーグの生態と一致する?


「気になるね。こうしてはいられない!」


「獣人の国に行きますか?」


「行こう! 王族関連はこのクッションで押し通せる!」


「そう簡単に行くかな」


 クエスト命だ。その前にジィークの転生地に行かないとね!






 瓦礫の中でしぶとく生き延びた世界樹がホットワードになっている中、私たちは願いの大地上空のジィークの衛星地に訪れた。日ごとに位置を変えるジィークの衛星地にはプレイヤーが疎らにいる。


「ヌ……主らの声は聞き届けたり……」


「クエストを受けに来たよ」


「ウム……クエストであればなおよしである……」 


 普通に受け答えしてくれるモーアイに私たちは小首を捻る。


「何か変わった? 気のせいかな?」


「その石像、垂界物に反応して喋るようになるんだが」


「あ、そうなんだ」


 その場にいたプレイヤーが親切に教えてくれる。


「あんたらだったか。昨日の戦いからかなりのんびりしてないか?」


「そこまで競い合う気はないよ。私はカシー!」


「ウララです。ランキング首位独占を目指しています」


「独占はあり得ない。私はお餅でいい」


「お餅? あぁ、プレイヤーネームか! 俺はザッキン欄だ」


 ザッキン欄は渋い顔を更に渋くさせて私たちのクエスト受注を見やった。ビンゴゲームのポイントだって馬鹿にならない。


「配列ってあるから規則性があると思ってな。良ければビンゴの内容を見せてくれないか?」


「いいよ。臨界物の話は聞いた?」


「臨界物か。ほか貂から聞いたな。お前のこともある程度は聞いてる」


 ほか貂とはフレンドらしい。ランキング一位と仲が良いとはね。私のことって種族が垂界物で【万物調教】を持ってるってことまで?


 ザッキン欄にビンゴの内容を教えた私たちはすぐにジィークの衛星地を後にした。この調子だと明日にも首位を奪還されてしまう。


「垂界物でアシストね~。それでクルヘエーグは復活する」


「何かあるんですか?」


「とっておきの秘策があるよ。ほか貂たちを蹴落とせるかも?」


「悪い顔です」


 ほか貂たちの追い上げでポイントを荒稼ぎするウララは今にも追い付かれそうなのだ。願いの大地は失敗だった!


「上位結晶は何に使う? まだ決めてなかったよね?」


「どうしような~。帽子を進化させてもいいけど」


「魔女の館に用がありそうです」


 ぎくりと私は肩を震わせる。ほか貂たちを出し抜くには他にないじゃん! 魔女の館にいる垂界物ズを見つけ出せ!


 絶賛ランキング1位の置き土産に注目の集まる掲示板に左右されながら遥か西にある獣人の国を目指す。

 魔法都市までは【広域転移】でショートカットだ。城塞都市でも良かったけど道すがらイベントフィールドがあるのは魔法都市のみだ。


「願いの大地に拠点を置くのもありだよね~」


「そうだね。ケルベローグのあの建物がいい」


「ひっそりした面構えが持ち味! 写真撮っておこう」


「ケルベローグ観光も悪くないですね」


 魔法都市ケルベローグ。ケルベロス討伐では最前線の都市だ。





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