第六話『盗賊退治』
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小一時間かけて弱ったランプウルフを討伐した。
ゴボーラのお陰で私はレベル15、ジャックはレベル12に上がっている。
「ぜぇ……ぜぇ……ここは、俺の領地だぁああああ!!」
「まだ言ってる」
何という執念なのか街から馬車で一日はかかる願いの大地に再びゴボーラはやってきた。
私が謀ったことを根に持っている。
しかしゴボーラが悪い。山賊みたいな恰好で山賊みたいなことを叫ぶんだ。
俗に言う山賊ロールなのかな……地でやっているとしか思えない。
「クァァレェエエエエッ!! お邪魔クゥァアアレェエエエエエーーーッ!!」
「…………」
「悪魔のカッシィーーーッ!! フヘヘヘヘヘッ!! ジャックフラワーがここにあぁるぞぉおおっ!! カッシィーー!! カシカシカッシィーーーッ!?」
う、うざい……うんこ座りでPNを連呼してくるゴボーラがうざい。
私も大概暇人だけどゴボーラの比ではないよ。綿の木がどうしたというのだろう?
「大自然族とはなぁ!! 誰一人組まないようにしてやるよ!! ペッ!!」
「うわぁ……」
悪意を持って当然だ。
ラピスワイバーンの時は傍観していたんだし、馬で現れた時には直接手を下している。
「いかがされた、ゴボーラ殿?」
「あっ、いや何でもないですぞよ?」
「NPC?」
街道で待っていたNPCの騎士がゴボーラの元に駆け寄る。馬は二頭だ。
「感謝を、そう感謝をしていました。大自然族が馬を返してくれたのでね。ヘヘヘッ」
「ゴボーラ。お前はここでラピスワイバーンを見たんだろう?」
「ええそうですとも。しかし討伐パーティーを組んで倒した故に。これが何よりの証拠ですぞ」
「安っぽい短剣だ。さっさと行くぞ」
「へ、へいへい了解です」
本物の騎士にへこへことする山賊上がりのゴボーラは馬に跨ると街道に戻っていった。
「……街の方に向かったよね」
騎士と遠征かな? なるべく遠くに行ってくれると助かるよ。
街道沿いの村は目と鼻の先にある。
願いの大地と隣接していてジャックの放牧地からだとシャフト移動で一時間ほどかかる。
「ジャック、村に行ってみるよ」
「行こう!」
「向かうのは廃村だよ」
「廃村!?」
隠密ジョブの初期スポーン地点。
願いの大地の真下、街道を跨いだ位置にあるフィールドの境界がジャックの秘密を解き明かす鍵になるかもしれない。
願いの大地周辺は初心者フィールドで、真に聞いた廃村は岳灰の農場跡にある。
フィールドの境界にはフィールドボスが確認されていない。
そして岳灰の農場跡からは街が近いため、初期スポーン地点に選ぶプレイヤーは多かった。真はエルフで盗賊をやっている。隠密ジョブは楽しそうだよね!
「南の村に行くんだね? 僕の力を作ってくれた人がいるんだよ! 会わせてあげるね!」
「……うん。会わせてね!」
廃村って知らないのか自然族がいるのかな? それに大自然の力を作る?
場所はジャックが知っていたので、何かありそうだと初めて願いの大地を離れる。
私は荒野に小さな草原を作った。
ジャックの放牧地をシャフトで拡張しまくって放牧地に相応しい草原にした。これは最下位種族の意地だ。友好的なプレイヤーは皆無だった。
「こっちだよ、カシー!」
「どっちだろ。何時の方角?」
「何時? 月明かりから離れる方角だよ!」
ジャックには馴染みのあるフィールドみたいだ。
ジャックの声がする方角に真っすぐ向かうと、荒れ果てた村の入り口で焚火の煙が見えた。
「よお、兄弟! 何か食い物持ってんだろ!?」
「ひぃっ! ななな何も持っていません!」
「嘘は良くないなぁ?」
「あぎゃああああっ!!」
痛めつける盗賊に痛めつけられる村人。
こってこてのイベントフラグをスルーして願いの大地に願望をぶちまけるゴボーラはこの場にいない。
盗賊三人に囲まれた村人はバッドエンドまっしぐらだ。どうやって助けたものか。
まず私たちでは撃退出来ない。
近くにいるプレイヤーに助けを求めるのが無難だよね。都合よくいるかな?
「こ、これで勘弁してください……」
「へっ。あるじゃねえか!」
「ああっ? こんなところに肉が落ちてら!」
「あっちにも落ちてるぜ! 早いもん勝ちだぁ!」
バロックラットとホーンラビットの肉を置いて木陰に誘き寄せる。大自然族を舐めると後悔するよ?
「【パンチャーバレット】」
「シャフトパージ!」
「ぐふぅっ!?」
シャフト移動と同時に【パンチャーバレット】を発動して威力を高める。
ジャックのシャフトパージの効果も相まって面白いように吹き飛んだ。レベル15で幸運は二桁なので初撃にクリティカルが入りやすい! 幸運二桁って強そうに聞こえる!
「んあ? ダーゴは何処行きやがった? ちょっと見てこい!」
「了解だぜぇ。おーい、ダーゴ!!」
二人目はゲーム内通貨のコモンで誘導して【パンチャーバレット】で沈めた。
それからシャフト移動で木々を揺らす。
「な、何が起きてやがる……!? 化け物がいるのか!?」
ふっふっふ……アサシンって楽しい! ジャック・ザ・パージで焚火を吹き消してみよう!
「ひぃっ!?」
「クソッ、何がいやがる!? ダーゴ!! ゲルゲ!! 何処だ!?」
「あ……あ……」
顔を青くした村人の視線を辿ると廃村に亡霊が立っていた。自然族のNPCだ。
「思いっきり叫べばいいかな? すぅ……」
私が村に入ると、自然族は眉間に皺を寄せた。
目玉はぎょろりとこちらを捉えて呼吸を合わせてくる。ざっくばらんな白髪が恐怖をそそるね!
「「キョアアアアアアアアアアアアッッ!!!」」
「ぎゃぁああぁああああっ!?」
全力で化け物の声を放つと、盗賊は奇怪な動きで逃げ去った。
村人は死んだふりをしている。盗賊に攻撃されていたしグリーンポーションを飲ませる。
「んぐ……な、何が」
「声は聞こえる?」
「ひっ! 声が……ら、酪日の亡霊!? 嫌だぁああ!! 頼む殺さないでくれぇ!!」
「私はこういうものだよ?」
「なひ……!? ポーション!?」
へっぴり腰の村人にグリーンポーションを見せる。
酪日の亡霊は廃村にいるNPCだ。
私のことは見えないのでアイテムで注意を引いておく。ポーションは上げるよ?
ビビッて泣きまくる村人が落ち着いてから話を進める。
「盗賊から助けてあげたよ。私はカシー」
「カシー? れ、霊なのか?」
「大自然族だよ。聞いたことはない?」
「……御伽噺に出てくる」
やっぱりか~。
大多数のNPCは自然族や大自然族を知らない。
人族国家なので鬼人族や竜人族は珍しい部類になる。プレイヤーには結構いるよね。
「貴方の名前は?」
「ホッガって名前だ……本当に大自然族なのか?」
「そうだよ。姿形はなくても私たちはそこにいる。ホッガは何処から来たの? 私は願いの大地だよ」
「ラブリー村だ」
ラブリー村。願いの大地のお隣にある村だ。あえてその村を目指すのもどうかと思ったんだよ。
「どうやったら帰れるだろう……?」
「手伝うよ」




