第五話『サービス7日目』
『チュートリアルクエスト「シャフト300キロ」をクリアしました』
『アイテム「ホワイトポーション10個」を獲得しました』
『カシーはレベル11からレベル12に上がりました』
『チュートリアルクエスト「シャフト500キロ」を開始しますか?』
シャフト移動が板に付いてきて、願いの大地でスライムを狩る毎日。
チュートリアルクエストのクリアで確定レベル1。
経験値は引き継ぎなのでレベルは上がってくれた。7日間、レベル1のモンスターを倒し続けて掴み取った栄光のレベル1だ。討伐数は途中から数えなくなった。
「何のためのポーションだろ……あれ? スキルを覚えた!?」
「良かったね、カシー!」
ステータスを確認するとスキルが生えていた!
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PN:カシー
種族:大自然族
職業:羊飼い
状態:ジャックの加護(小)
レベル:12
HP 3
MP 15
SP 12
筋力 1
敏捷 14
器用 7
耐久 8
知力 12
幸運 5
残存ステータスポイント 1
魔法 【パンチャーバレット】
スキル シャフト
ブランクダッシュ
装備 大自然の服 大自然のスカート 大自然の靴 大自然の帽子
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走行スキル? 効果は一定時間の走行アシストで、移動距離を楽に稼げる補助スキルかな?
プレイヤーがすっかりいなくなって羊飼いを謳歌している私だけど、ジャックの放牧地では重要フラグが立たないと気付いた。安全マージンを取ったレベリングは出来たかな……?
ジャックはそろそろレベル10に上がる。
これで何もなければ街道沿いの村に寄って情報集めしようと思っている。
特定のNPCが授ける加護。
ゲームのくせにプレイヤーを村人以下にするえげつない加護である。
せめて良質な経験値を寄こせと大物のホーンラビットを倒したことはある。
大物と言えどもレベル1だ。ゴブリンは強敵だね。見えない攻撃に驚いて逃げていくモンスターは倒せない。
「おっ? あれはひょっとして……ゴボーラだよ」
「馬に乗っているよ!」
ランプウルフを蹴散らしながらジャックの放牧地に向かってくる騎兵はなんとゴボーラだ。というか、そんなことをするのがゴボーラしか考えられない。思いっきり叫んでいるし。
「大自然族よぉおおおお!! 目を覚ます時が来たのだああああっ!!」
「うるさいなぁ」
「俺の名はゴボーラ!! そう、騎士だッ!! この願いの大地を治める男、だッ!!」
みすぼらしい汚れた鉄鎧にところどころ穴の開いたマント。
山賊ですか?
モンスターにやられて落馬するゴボーラは言うに事を欠いて騎士とのたまった。
「大自然族よ!! 聞いているか!! この俺が何者であるか!? ゴボーラ!! ゴボーラ!! ゴボーラ!! 騎士、ゴボーラだ!! 願いの大地はこの俺が統治する!!」
せめて子分とか連れてきてさ……まあいいや。
どう見てもあれは山賊なので、松明を取り出しても気にしない。騎士が脅すの?
「貴様がいるのは分かっている!! 願いの大地に燻ぶる悪魔よ!!」
「なんで悪魔……」
綿の木は枯らしたよ? だって牧草が育たないし。
「大自然族は腰抜けしかいないのか!? 出てこい!! 俺の前に姿を現せ!! ファーーッハッハッハッハ!! 願いの大地は俺が貰ったぁあああああ!!」
憂さ晴らしにランプウルフを倒して、私をジャックの放牧地に追い込もうとする。
ゴボーラの目的はジャックだ。
レベル30はあるので敵に回したくはない。綿の木を枯らしたので今更かな? 牧草はあるよ?
「くっ、ランプウルフめ!!」
「【パンチャーバレット】」
「ヒヒィイイインッ!?」
ランプウルフの攻撃でダメージを受けている馬を狙ってゴボーラを地獄に叩き落とす。
「んがぁっ!? きっ、貴様ぁあああッ!!」
「「「「「ガァアアアアッ!!」」」」」
追っ手のランプウルフは5匹。横合いからは2匹である。これは死んだね。
「来るなぁああああ!! ぎゃああああああ!!?」
ランプウルフたちに襲われてゴボーラは願いの大地に散った。
【パンチャーバレット】で鞭打った馬はジャックの放牧地に逃れている。HPは風前の灯火で背の高い牧草に隠れてしまった。
「何処にいるかな~。あ、いたいた」
ごめんねーと言いつつ疲労モーションの馬にグリーンポーションを与える。
「ヒヒンッ」
「元気になった! しばらく隠れておくといいよ」
「荒野に出ると危ないよ!」
ジャックがそう注意するので馬はそのまま休み始めた。私はランプウルフと遊んでいよう!
ゴボーラがダメージを与えたランプウルフは倒せる気がする。
ブランクダッシュをかけて、シャフトで誘き寄せてみる。
「ガアアッ! ガアアアッ!!」
「「ギャゥウウウンッ!!」」
群れで動いた2匹とはここでお別れだ。新手だったのでダメージが入っていない。
残存HPのなるべく少ないランプウルフが狙い目だ。
MPは自然回復任せ。ランプウルフのHPがレッドゾーンでも厳しくなる。
「HP285……【パンチャーバレット】!!」
「ギャウンッ!?」
打撃判定の【パンチャーバレット】をランプウルフの真下から放つ!
「嘘! 50も削れた!? スライムで鍛えたお陰かな!」
これはやるしかないとホワイトポーションを飲む。
チュートリアルクエストの報酬で、追加効果のある最高品質のポーションだ。
グリーンポーションにはSPの自然回復上昇がある。
そしてホワイトポーションの追加効果はMPの自然回復上昇だ。
上昇効果は5割増で、MPは一分に3回復する。
しょぼい。あまりにしょぼいけど、自然回復バフは必要になる。
「【パンチャーバレット】! MP10でこの威力!」
「ガァアアッ!! ガアッ?」
「MPが回復するまで待ってね?」
リキャストタイムは短いのにMP回復が全く追いつかない。
1撃で仕留められるのは最弱のバロックラットのみ。スライムは大体2撃で倒せる。
100回に1回の奇跡でクリティカルダメージが入るので、初撃で幸運を使い果たした私はバロックラットの骨を取り出した。ランプウルフは食べるよね! おいでー!
「ガウウンッ!!」
「今だよ、ジャック!」
「分かった! シャフトパージ!!」
必殺猫騙しで飛びかかるランプウルフに衝撃波をぶつける。
SPが20を超えたジャックの攻撃スキルだ。
シャフトパージはシャフトの発動を解除して衝撃波に変える。質量を持たないはずの大自然族がインベントリの重量制限には忠実だしシャフトには風を切る感覚がある。
ランプウルフには微風でしかなかった。
跳躍したスライムを転がせる威力なので、牙を剥き出しにするランプウルフが目の前にいる。
「グルアアッ!」
牧草を薙いだ前足をシャフトで回避して攻撃のタイミングを窺う。
「長い夜になりそうだよ」




