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隠密ジョブのメレンゲレンジ  作者: タ別


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第五十五話『戦士の誇り』




 最前線の街を突破されたところで投じた資源が無駄になったまでということ。クルヘエーグの存在はとりあえず横に置いておくことも出来る。


 双神王獣。つまりはもう1体のレイドモンスターがいる。クルヘエーグの片割れかそれとも別系統のレイドモンスターか。


 クルヘエーグはレベル350のキチガイモンスター。ジャイアント・グリーンベルは排除したものの、レイドモンスターに相応しい形態変化を有しており、体力は無尽蔵に近いと思われる。


 両翼と牙2つを破壊してクルヘエーグは最終形態に至った。前回イベントでは撃退となっていたが、今回は主役なので討伐までありうる。


 様子見を決め込む私たちとは裏腹に、かかれの号令で体長20メートルの大悪魔に特攻するプレイヤーたち。

 私たちは拠点が破壊されて戦う意義はないに等しい。

 それならば長期戦を視野に入れて、願いの大地に陣を敷くことも出来る。イベント1日目で急ぐのは止めておきたい。


 イベント1日目はジィークの衛星地を探したいのが本音だ。クルヘエーグを倒せるなら倒してしまいたいが、王都襲撃イベントでもイベントボスが生き残るという惨事に見舞われた。


「何かクエストはないのか!?」


「出て来ないですね! ジャック関連も空振りです!」


「クエスト討伐だと睨んではいるが! こうも消耗戦を敷いてくるとプレイヤーの士気に関わる!!」


 サービス開始からまとまりを見せるプレイヤーの一団がクルヘエーグ相手に一歩も引かない戦術を展開する。ゾンビ特効である。


「雷撃来るぞ!!」


「死ぬ気で回避だ!!」


 前衛のアタッカーを総倒しにする広範囲の雷撃に即座に応じて、魔法でクルヘエーグを攪乱しながら押していく。こっちにいる巨人族の士気まで高くなるから不思議だ。


「トップランカーがごろごろといるね~」


「私たちの出番なし」


「お餅は上空から援護すればいいよ。それで私の武器は?」


「2本牙で作らせてあります」


 工房部分は奇跡的に無傷で、パゾースは私の武器を作ってくれた。私だけ仲間外れかと思ったよ!


「大悪魔を倒すには他種族混成パーティーです!」


「「「パーティーに入れてくださぁい!!」」」


 武器を受け取ってすぐ、サーチベリーが天使と悪魔を連れてきた。


「私たちのパーティー? 一旦退こうと思ったところだよ」


「撤退するんですか!」


「トップランカーのKENNさんまでいるからな!!」


「俺たちKENNさんのおこぼれでごにょごにょごにょ」


「ごにょごにょ言わずに戦う!!」


 支援魔法を期待してのパーティー申請だったか。生憎とせせこましいパーティーなので他種族混成パーティーは認められない。上位種族限定だよ! 私は最下位種族だけど!!




『王獣クルヘエーグが臨界物アシストを手に入れました』


『闘争本能が極限に達する――――』




 まただ。

 ワールド情報に紐付けされたレイドモンスターの生態が露わになる。そしてクルヘエーグは本気モードに突入した。


 ヴォンッと、爆破が連鎖して三叉槍を召喚する。


「本物の悪魔か!!」


「KENNさん! 不味いですよ!!」


「この巨体で武器を持たせてくるとはな……! 鬼畜運営か!!」


「マジモンの鬼畜だぁ!!」


 正面を陣取るトップランカーたちが軒並み一掃されてしまった。ワールド情報、すぐに伝えるべきだったかな?


 しかし臨界物とは? 垂界物とどう違うのかさっぱり分からないが、クルヘエーグが「臨界物」である可能性は高まる一方だ。


 闘争本能の化身となったクルヘエーグは、最前線の街を蹂躙していった。プレイヤーの手に負えない災害となり、私たちは一歩ずつ退きながら後退する。


「不味いね。最前線の街が跡形もなくなるよ」


「レイドモンスター恐るべし」


「あれ? ウララは何処に行ったの?」


「討伐会議に行きますと言ってトップランカーたちと街を離れたよ」


「トップランカーと知り合いだったっけ?」


 王都襲撃イベントで3位だったポたんというプレイヤーと知り合いになったとその時聞いた。ウララに話しかけるあたりに下心が見えるよ。


「おっと、私たちの出番だね!」


「ぶっ倒す!」


 お餅は威勢よくクルヘエーグに向かって飛び出した!


 瓦礫の山から下ってくるクルヘエーグは間合いに入った人間を片っ端から薙ぎ倒す。回避に特化したプレイヤーでもすれ違い様に一撃入れられればいい方だ。


 お餅は奇をてらうことなく背後を取ると魔法攻撃でクルヘエーグの注意を反らしてくれた。


 私は十字に重ねられた2本牙の大槍をクルヘエーグの三叉槍にぶつける。勢いよく振り抜かれた三叉槍を止めて見せると、お餅は更なる追撃を加えていった。


「お餅! 離脱して!!」


「うん!」


「ギャガガガガガッ!! ギャガガガガガッ!!」


 一方的な蹂躙を楽しんでいるクルヘエーグの姿に私たちは少なくない憤りを覚える。それはこの場にいるプレイヤーに共通する思いだった。


「クルヘエーグ討伐隊A班!! 天使と悪魔の部隊です!!」


『『『おおっ!!』』』


 ウララ率いる討伐隊が結成されて最前線へと戻ってきた! 上空援護の可能な悪魔族を束ねるとはやる~!!


 A班は天使と悪魔の部隊。

 B班は巨人と獣人の部隊でクルヘエーグ討伐隊の主力となる。

 C班はその他の種族を交えた混成部隊。大自然族も本来はこちらだ。私たちはウララとパーティーを組んでいるので、連携の取りやすいA班に属することとなった。


「B班は護りを固めてクルヘエーグを磔にしろ!!」


「C班はなるべく温存してくださいねー!!」


 トップランカーの顔ぶれが際立つクルヘエーグ討伐隊。


 B班リーダーは1位のほか貂。C班リーダーは3位のポたん。


 2人とも最前線の街を基点にイベントを熟す猛者であり、ジィークの衛星地にも心当たりがあるという。クルヘエーグを討伐した暁にはロケートを示してくれることになった。


「街が壊滅して自棄になってるプレイヤーは多いね」


「お前もその1人だっただろう」


「そうだけどポたんはポたんだし?」


 ほか貂とポたんは仲が良い様子。2人ともガツガツ攻めることなく討伐隊を束ねるポジションを維持している。


 ウララも含めてクルヘエーグ相手に一歩も引かない構えだ。早朝帯のプレイヤーが躍起になってくれると私たちとしては大助かりだった。


「サーチベリーが頑張ってる! 応援しないとね!」


「カシー。朝までかかりそう?」


「お餅は離脱して! 3時間後にまた会おう!」


「3時間後……分かった」


 ここでログインし直すとランキングに関わるのは自明の理。お餅は徹夜を余儀なくされて泣く泣く金剛杖クルヘルグを握った。


「迷う迷う。私はランキング一筋じゃない。そう、楽しければいい」


「ランキングで勝てると楽しいよね?」


「楽しいけど内輪では最下位。ランキングは意識しないから」


「そんなこと言わずに!」


 お餅はLVPを取った第1回イベントに不満があるらしい! お餅がいたからランキング戦で好成績だったというのに!


 睡魔で揺らぐお餅を支えつつクルヘエーグの攻撃範囲を見極める。ほか貂とポたんは掲示板で他のイベント情報を漁っていた。最後方なのでゆったりと構えていられる部分はある。


「ん~。願いの大地に戻ってみる?」


「賛成。ウララは置いて行こう」


「それがいいね。私たちは願いの大地でしぶとく生きる!」


 最最最最後方の願いの大地で待つのも一興だと考えを改める。それだけ戦力が整ってきたという意味でもある。


 イベントは半分捨てることになるけど、プレイヤーの飽和が激しい最前線。ここでしのぎを削るのはちょっと厳しい感じがする。トッププレイヤーの顔ぶれを見られただけ儲けものかな?


 ジィークの衛星地のロケートは気になるけど自力で探すのもやむなし。ジャックの呪いも秘密にしたいので、大立ち回りするのは一瞬でいい。


「ギャギャギャギャギャギャギャギャギャッ!!!」


「わっ。特殊攻撃ですか!?」


 クルヘエーグの防御を捨てた戦いっぷりに変化が訪れた。





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