表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隠密ジョブのメレンゲレンジ  作者: タ別


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/66

第五十四話『アナザージャック』




 ジャック連れのプレイヤーは日を追うごとに増え始めた。大自然族から譲って貰うと不思議なことにステータスは貧弱となる。レベル100を超える古参プレイヤーはジャックの存在を貴重な情報源として見ており、ステータスの伸びしろにも着目していた。


「ジャック。クルヘエーグだよ」


「こちらジャック! クルヘエーグを捕捉したよ!」


 愛嬌の異なるジャックが現れて私とお餅はほっこりとする。クルヘエーグのヘイトを切り離してくれると助かるかな?


 羊に扮したジャックが火を苦手とする生き物なのはご存じの通り。ワーゴンたちに囲わせていれば一先ず安全だ。

 そんなこんなでジャックの安全地帯なるものが生まれた。私たちの築いた巨人族の縄張りにジャックが複数体いる。


「やあ、僕はジャック!」


「僕だってジャックだよ! 誰のジャックなの?」


「僕はKENNのジャックさ! 君は?」


 ジャック同士で話している光景が出来上がった。クルヘエーグの狂暴化を気にしてジャック保護区を即席したプレイヤーたちだ。


 ジャックはキーアイテムがあると実体化する可愛い生き物。公式キャラはジャックだけだとする一派もいれば、シークレット枠がいるとする一派も存在する。

 ジャンヌの噂はめっきり聞かない。極振りステータスでやっていけるプレイヤーはほんの一握りだからだ。


「あいつは諦めよう」


 お餅はクルヘエーグ戦に不向きだと悟ってジャック保護区の住人と化した。うん。諦めは肝心だよね。


「おいで、ジャック。私のジャスティスを死なせはしない」


「魔力ポーションが切れたの?」


「ううん。皮を被った鼠に追い回されるのが嫌なだけ」


「皮を被った鼠はお餅のことだよ」


 固定砲台としてこれ以上ないステータスを誇るお餅のモチベーションを上げる。お餅が疲れを見せ始めたのはジオルグホテルが半壊してしまったせいかもしれない。


「ジャンヌは?」


「無事。この状況でサイクロンは出せないよね?」


「難しいよ。私のサイクロンが素材に化けちゃう」


「ジャンヌはどんな素材に化ける?」


「わたくしは素材にはなりません! おーっほっほっほっ!」


 唐突に高笑いするジャンヌに私たちは温かい視線を向ける。ジャンヌは死んでも復活しそうだよね。テイムモンスターは謎。


 ジャックとジャンヌは保護区に入れて、私たちは果敢に2本牙のクルヘエーグへと挑んでいく。


 あっさりと崩されたジオルグホテルの仇だ。私たちの拠点が壊されてただ黙って見ていることは出来ない。


「完成だ……!!」


「パゾース!」


「獅王剣ジオルグだ!! 受け取れ!!」


 武器製作を頼んでおいたパゾースが前線に現れて、ウララに一振りの大剣を投げ渡した。


 灼熱に隠れた1本の牙。

 ジオルグと名を打たれた王剣に相応しい牙の連鎖に、ウララはにやりと笑みを深めてクルヘエーグに斬りかかる。

 牙王剣ジオルグを巧みに使いこなして侍神族の職業補正を十全に発揮するウララ。

 クルヘエーグの素材が用いられた武器はもう1つあった。


「お餅復活!!」


「何その杖翼(ロッドウィング)!?」


 お餅専用の武器となった金剛杖クルヘルグはクルヘエーグの金剛翼を贅沢にも2枚用いた1対6節の魔導杖。

 翼開長6メートルもの杖翼が開かれると、魔法陣が重複展開して《ウォータージャベリン》を連射した。しかも飛行しながらだ。


「イカれた杖だな!?」


「反則級だろ!? あんな魔法ありか!?」


「火力が馬鹿高いな極振り勢!!」


 知力極振りのお餅はとんでもない移動砲台に進化した! 魔力が続く限り無敵ではないか? 1人だけワンサイドゲームだ!


「カシーさん! 回復ください!」


「はいはい! 【ドミネートヒール】!」


 サーチベリーに回復魔法をかけて援護しつつ最前線で持ちこたえる。最高の援護を受けている状態だ。私だけ武器がないけどね!!


 ジオルグバーガーを食べながらクルヘエーグ相手に消耗戦だ。

 流石にレイドモンスター。

 イベントの主役たる双王獣の一体だけあって形態変化まで持ち合わせている。牙が生え変わった途端、囲いのような毛皮が翻って炎の海を形成していく。

 最前線の街でどうにかジオルグホテル周辺に押し留めている。度重なる攻撃で瓦礫の山と化した戦場だ。


「やってられないね! 私のジャックは何処!?」


「ここだよ!」


 特大ジャックフラワーを生やし始めたジャックを捕まえて話を聞く。イベントの重鎮はジィークやジオルグだけどジャックも捨てたもんじゃない。呪いの進化に関わるとするならなおのこと。


「イベント開始から5時間……! 双王牙は貰ったぁ!!」


「気を付けて! 【ヘパイストスの護り】!!」


 最上級の付与魔法で肉弾戦を挑むジャックプレイヤーが遠回しに時刻を伝えてくる。


 気付けば日を跨いで朝になった。

 クルヘエーグに対して明確な攻撃手段を有する私たちは、最前線に雪崩れ込んでくるプレイヤーたちの力を借りてイベントボスの討伐に挑んでいる。花のあるイベントシーンだ。


「【ウォータージャベリン】×6!!」


「【キリングエッジ】×7!!」


「――【侍神舞】!! やああああっ!!」


 イベント開始直後、クルヘエーグの2本牙が圧し折れた。


「ウララが叩き斬った!」


 地面を転がるクルヘエーグに歓喜の声が上がる。狂暴化して最前線の街を滅茶苦茶にしたツケはここで払って貰おう!




『王獣クルヘエーグは臨界物(アシスト)を手に入れました』


『理由なき闘争に狂笑が上がる――――』




 ワールド情報にアクセス可能な垂界物が悪さをする。


「はい?」


「ギャガガガガガガガガッ!!!」


「二足歩行ぉ……!?」


 クルヘエーグは尻尾が無くなると、二足歩行で立ち上がって独特の構えを取った。動きは獣人族のそれだ。


「ほ、炎の巨人……!! 大精霊イフリートの加護を得た巨人だぞ!?」


「ワーゴンから見ても巨人……? いやでもモンスターだよね」


 狂ったような笑みを浮かべたクルヘエーグが抜群の跳躍力を発揮して上空のお餅を狩ろうとする。


 クルヘエーグは王獣。獣人族の崇拝対象だ。

 巨人族ばかりかプレイヤーすら魅了するクルヘエーグの容貌に私たちは戸惑いを隠せない。正しく神が降臨した。


「双神王獣イベント。獣人の国がメインフィールドってわけじゃないよね」


 王獣来たり、双神来たりだ。お祭り騒ぎとなってきた最前線の街で、クルヘエーグが最終形態を露わにした。


「お餅、どうする? こっちは徹夜覚悟だよ!」


「戦って死ぬ! それが戦士の誇り!!」


「いつから戦士になったのです!? 私を回収しないでくださいまし!」


 ジャンヌを回収して転移アイテムを取り出したお餅に苦笑いする。戦士の誇りは無さそうだよ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ