第五十一話『グリフォン討伐』
弄奇天魔窟。
適正レベルは110から125。
昆虫系モンスターのひしめく樹液と蜂蜜とポーションの楽園だ。
「羊飼いだとポーションドロップだよ!」
「買わなくて良かったですね!」
コートベルゼビュートの大群を蹴散らすと低確率でトレインポーションをドロップした。
私たちは弄奇天魔窟に来ている。
最前線の街からいくつかのフィールドを跨ぐよりも城塞都市からイクシード海を越えた方が近いので、海岸に上陸して天使族の集落を目指しながら移動していた。
コートベルゼビュートは海岸付近にポップしやすく、ドロップアイテムにはトレインポーションがある。
ポップ時にモンスタートレインしてくるので、プレイヤーたちはクラン単位で攻略している。
目的はもちろんトレインポーションだ。
モンスターを効率よく狩るためにトレインポーションをかき集めていて、最前線の先駆者たるプレイヤーたちがフィールド北部に根を張る。
イベントクエストに一ミリも関わらずにモンスターを倒しまくる廃人勢の領域だ。
いや、死獲行列に挑んで非効率だと切り捨てたのか?
沈没船で作り上げたクラン拠点がフィールドの南北を区切っている。
大自然族を引き入れていて白竜のポップ条件を満たしつつコートベルゼビュートを乱獲する。
ヴァルハワームには関わらない様子だ。
竜化すると武器耐性が極まって白竜よりも討伐難易度は高くなる。
死獲武器でダメージは稼げるので、上位ランカーには美味しい獲物のはずだ。しかしトレインポーションの回収効率を捨てる理由にはならない。
私たちはフィールド上空を通過して悪魔族の集落に向かったので、岩礁エリアや風冠樹を目印に海岸沿いを進んでいる。サーチベリーとレレツガたちは天使族の集落を基点にポーション集めだ。
「エンジェルスライム!?」
「【ホーリージャベリン】!!」
光苔のびっしりと生えた洞窟を抜けると数匹のエンジェルスライムが待ち構えていた。
お餅の先制攻撃で私は【翔雷転移】を発動。
アルティメットライズとジャックブースターでエンジェルスライムを絡めとった。武器は籠楼の獲竜箒だ。
「エリアが切り替わりましたか」
ウララがまとめて死獲の魔刀の錆にする。
お餅の高火力魔法とウララの高出力スキルで大抵のモンスターは倒せる。
「魔王の転生地……イクシードにまつわるエリア?」
「シャフトでリポップする類かな?」
「エリア外周は風冠樹です。グリフォンも現れてくれます」
私とお餅でシャフトすると、エンジェルスライムがリポップした。大自然族の底力だよ。
「魔法系モンスターは倒しやすいですね」
「大自然族二人に上位種族だからね。私は木こりになるよ~」
死獲の魔斧を装備して手当たり次第に風冠樹を伐採する。
「グォオオオオオンッ!!!」
「グリフォンが走ってきた!」
「風冠樹を伐るとポップするんですね!」
魔王の転生地には風冠樹が生い茂っている。
グリフォンの住処を突いたようで翼を閉じたグリフォンが突撃してきた。
レベル128。
怪羽放域硫に出現するレッサーグリフォンがレベル100前後でイベント期間に幾度となく倒した。戦い慣れているしジオルグの加護で攻撃スキルが充実したのでボスモンスターは願ったりだ。
「斬響刃!!」
「王獲刃戯!!」
グリフォンがウララの斬撃で瀕死になった。桁違いの威力だ。
「【アイスジャベリン】!」
「倒せましたか。フィールドボスではないですね」
「うん。武器耐性がないよね?」
フィールドボスは大抵が武器耐性を有している。
グリフォンはクエストモンスターだ。
魔女の館にはグリフォンの討伐クエストがあって私たちはクエストを受けた。
『ギルドクエスト「野生のグリフォンを討伐せよ」をクリアしました』
『アイテム「純金の腕輪」を獲得しました』
『黄金郷の闇を払うのはまた黄金――――』
垂界情報は遭遇、討伐したモンスターをリソースとする。
グリフォンを黄金に例えたんだろうか? それとも金鉱石を採掘出来るとか……?
「クエストクリアですね。カシーも換金アイテムでしたか?」
「換金アイテムだよ! この辺りに金鉱脈がありそうだけど調べてみる?」
「ワールド情報なら調べるに限る」
「お餅に任せるよ! こっちにはサイクロンがいる!」
ドワーフに戯獲結晶を渡してサイクロンはサイボーグ化している。
黒糖鋏に内蔵された掘削ドリル二機で金鉱脈を掘り当ててくれる! サイクロンスタンバイ!
魔王の転生地に王獣クルヘエーグが出現して、グリフォンたちは一斉に弄奇天魔窟へと雪崩れ込んだ。
深夜を回ってモンスターの暴走。
『JCO』運営は毎月のイベント開催でプレイヤーの心を圧し折るつもりらしい。
「双神王獣イベント……!!」
「最前線の街に来るんですか!?」
嬉々としてグリフォンを狩り尽くした私たちは、第2回イベントが開幕を迎えたのだと遅れて知った。
双神王獣。
人族国家の南北を象徴する王獣が魔法都市ケルベローグで激突する。
ケルベローグは奇しくも二匹の王獣から取られた都市の名前だ。南の王獣は分かるよね。
「世界樹が枯らされるよ!! ウララ、お餅!!」
「三日は猶予があります。森林フィールドで迎え撃ちますか」
「それまでは竜狩りして装備を整える?」
「そうします。ひとまずこのエリアで消耗させてみますか」
消耗させると言っても火耐性がないと厳しい戦いだ。
お餅とウララの二人には火耐性がある。それにクルヘエーグと一戦交えて角を折ってきた。
「天使族の集落に向かって討伐隊を組んでもいいと思うよ!」
「カシーの言う通りですね」
王獣クルヘエーグはレイドモンスターで、接近はすぐに天使族の集落へと伝わる。
火の回りがやけに速い魔王の転生地で迎え撃つのは止めにして、私たちは立派なツリーハウスの立ち並ぶ集落にやってきた。
「嫌だぁあああッ!! 俺たちの拠点を燃やさないでくれぇええ!!」
「くそぉおおお!! こうなったらやってやる!!」
「二度も滅ぼされてたまるかあああッ!!」
時すでに遅しという空気が立ち込めていて、プレイヤーたちは王獣クルヘエーグに突撃していく。
成金趣味の悪魔族の集落は安全地帯。
比べると余計に腹立たしくなるので、きっと悪魔族の集落にトレインしてくれる。
「延焼を防ぐために私は木を伐ってるよ!」
「手伝います!」
「私は突撃して耐性を鍛えて先に街に戻ってる!!」
「ウララもそうするといいよ!」
「分かりました!」
ウララとお餅にはジィークの加護がある。
ジャジィープロテクトをオフにしておけばクルヘエーグ戦で火耐性を上げられる。
「風冠樹を伐っておけば問題ないよね!」
「協力するぞ!!」
生産プレイヤーが事態に気付いて木々を伐採していく。巨人族は頼りになるね!
「大裁縫師?」
「大裁縫師だ! そっちは!?」
「ガラス製の実験器具!」
垂界物である。
情報をせびられるのは嫌なので挨拶だけして風冠樹の伐採を粗方終えた。
「ふう。サイクロンの出番だよ」
「……テイムモンスターか」
掘削ドリル二機で地面を掘り返していっちょ上がりだ。
風冠樹はとてもよく燃える。
ツリーハウスに向いていようとこんな木を拠点にするのは良くない。
「嵐冠樹があるんだ。区別付かないなぁ」
「まだ伐るか」
「伐るよ。開墾クエストを受けると経験値の足しになるからね」
「木こりなのか?」
「初期ジョブは羊飼いだよ」
嵐冠樹が悪さをしてフィールドを焦土に変えている。
クルヘエーグの厄災だ。
プレイヤーたちは拠点がある限りゾンビアタックを仕掛けるほかない。
「ヨレマシ! 装備直してくれ!!」
「おうよ」
「拠点防衛助かる! レベル350だから勝てなくない!!」
ウララとお餅がいるからね!




