第五十話『闇魔鉱』
闇魔鉱石に付随する魔結晶が転移アイテムの触媒になるので、魔女の館で存在感を放っている垂界物スライムに頼んでみた。
「転移アイテムは作れる?」
「ぷるんっ!」
魔結晶をいくつか渡すと転移アイテムに化けた。大自然族万歳!!
【広域転移】のマジックアイテムで、転移ポイントの設置された大陸全土に転移出来る。
転移ポイントに登録することで真価を発揮するマジックアイテムだ。
【広域転移】でリスポーン地点に帰還することも出来る。
城塞都市トレジェリスでは城門広場と魔女の館が転移ポイントに登録されたので、これからは転移アイテムでいつでも来れる。
「魔女の館で得られましたか」
「作れたよ~。何かの神族だと思うけど学園で調べたら分かりそうかな?」
「妖神族ですね」
ウララは王剣学園を調べていたのですぐに魔女の館へと呼んだ。
「魔法を得意とする上位種族です」
「魔結晶は転移アイテムに変えてくれるよ!」
山1つ分の魔結晶がある。
3人で寄って集って転移アイテムを量産して、イクシード城から腐魏道門・裏門を攻略していく。
お餅はジャック・ザ・ポーチを手に入れてミスリルゴーレムの核で強化している。
ジャンヌクエストだったけど最後のクリア報酬は同じだ。プレイヤーがそう呼んでいるだけで同じチュートリアルクエストだからね。
トップランカーで大自然族と広まったのは私だけで、出荷したお餅が大自然族なのは気付かれていなかった。ゴボーラのヒールっぷりには目を覆いたくなるので、最前線の街を盛り立てる気力でモンスターを倒していく。ドロップアイテムは正直売りたくなかった。
ポーキーズキングがそうであるように、ポーキーズピグの素材は建材向きだ。
並みの金属を砕いて溶かすポーキーズピグは金属系の武器が効きにくいので獣皮は防具に、肉塊から採れる脂身はコーティング剤として使える。
城塞都市では塗料の原料になっていて、魔女の館にはポーキーズピグの討伐クエストがあった。
「10人だとサクサク倒せるね!」
「テフューラは残念ですね!」
「パーティー上限だから仕方ない!」
パーティー上限は10人。
テフューラが加わると上限オーバーなので弾くしかなかったんだ。
屋敷でパゾースの補助を任せたテフューラはこの場にいない。生産ビルドだし適材適所だよね。
私とウララは攻撃スキルが欲しいので、ジオルグバーガーを完食して加護を得た。
ジオルグの加護は効果が一日続く。
デメリットは完食でしか効果を得られないことだ。攻撃力増大は素直に嬉しい。
侍神族のウララは攻撃スキル全般の習熟率アップと攻撃力増大に加えて攻撃範囲拡大がかかる。パーティーを組んでいないとフレンドリーファイアで巻き添えが出る。
「お餅は呪い耐性上がりやすいよね!」
「表門よりは難易度が低いので数で稼ぎます!」
「了解!」
「「「「「グルゥアアアアアアッ!!!」」」」」
戦闘態勢のフェイクプリズンドッグもワーゴンを先頭に据える私たちには敵じゃない。
鈍足のお餅はサイクロンの玉座に座って移動砲台と化す。
モンスターが直進上にいないと【ミニスターエンジェル】で移動速度を上げる。ポーキーズピグのリポップ率はウララがいるお陰もあって高い。
ジャック・ザ・ポーチの自動収納機能をフル活用してドロップアイテムを回収し、サイクロンがレベル100になるまでにジオルグバーガーの個数を超えた。
「斬響刃!!」
「ピュオオオオオオオオオッッ!!?」
大型モンスターに対してダメージ倍率の高くなる斬響刃でポーキーズピグを成敗する。
レベルアップで習得した攻撃スキルだ。
戦っても戦っても攻撃スキルを覚えなかったので、ジオルグの加護を得た途端に習得したのは良かった。ステータスポイントは安定の敏捷極振り。
「攻撃スキルの熟練度解放も変わってくるんですよね!」
「楽しみだよね! 食べるのキツいけどさ!」
「攻撃魔法の習熟率も高かったりして」
「「あ」」
魔法にも効果がかかる!? お餅も食べた方が良かった!!
「移動しながら食べて!」
「それは吐く!」
「お餅ならやれます!」
「君は未来のジャックなの……?」
「ぷるんっ!」
「そっか。第4世界線の住人?」
カウンターの上で小気味よく跳ねるスライムに癒されてから私は最前線の街に向かう。
目的は転移ポイントの設置だ。
昨日は雑貨屋に転移石が売っていて、このスライムが作るのかと試してみた。闇魔鉱を与えると転移石が返ってきたので金属の精錬はお手の物らしい。食べたわけじゃないはず。
【広域転移】のマジックアイテムでパーティー全員を転移出来るので、私が転移ポイントを設置してウララたちを転移で帰還させる。
戻ってくる時は【広域転移】を使う。面倒だけど街の様子を見てくるかな?
「パゾース! それとテフューラも!」
「カシーが戻ってきたー!」
屋敷の上にいた二人の元に降りる。【翔雷転移】は着地で決まる!
「宿屋建造は滞りないようだね」
「ああ。万事滞りないぞ」
「魔導師の本分は魔法だよ! 転移石で祭壇は作れる?」
「祭壇か。俺に任せておけ!」
私はパゾースに転移石を渡して、屋敷の厨房で大自然竜滝を作る。
魔王料理はないのでスープにはパンを付ける。
「テフューラ、この辺りにパン屋はある?」
「調べてくるっぱ!」
「お使いを頼むよ!」
テフューラにコモンを渡してパンを買いに行かせる。
最前線の街は急速に発展している。
王都方面に向かったサービス開始組の多くは、魔法都市を経由して最前線の街にやってきた。
その数は1万に上る。
鉱山都市周辺にプレイヤーが流れていて、最前線の街に城壁を築く生産クランも現れた。
それとクラン拠点を造ろうとする第三勢力だ。
採石場を独占しようと目論んでいたので、私たちはドワーフの集落の見晴らしを良くした。
「拠点は街中に造ってくれないと防衛能力がガタ落ちするよね」
最前線の街と鉱山都市の間に戦力を置く理由がない。
近場の採石場を独占されると街の発展が遅れるし、陣取りしていたわけじゃなかったので総出で採掘した。採掘関連にはドワーフが協力してくれる。
女狩猟師と竜串を打っているとテフューラが食べ歩きしながら戻ってきた。
パンは人数分買えたので良しとする。
料理している間にパゾースは転移の祭壇を完成させて食堂に現れた。
「転移垂界石……そのまんまのアイテムだった!」
三角錐の設置アイテムで屋敷を縦に仕切る通路に設置。
屋敷には扉がないのでサーチベリーに聞いてみる。
『天魔窟に強い木はある?』
『天使族には弓使いが多いです! 海岸には漂流物や沈没船が沢山です!』
『沈没船は悪くない! 拾ってきて!』
『沈没船を拾うです!?』
『屋敷の風通しを保てる木材がいいよ』
『風冠樹があります! グリフォンが巣を作ってます!!』
グリフォンがいるんだ!? フィールドボスだよね? 倒しに行こうかなぁ~!




