第四十四話『城塞都市トレジェリス』
城塞都市トレジェリス。
裏マップに存在する王都センクシムと並ぶ大都市だ。
「魔王の力がえげつないよ」
「何でも揃いそうです」
ウララはデパート扱いする城塞都市トレジェリスは【万物調教】で出入り出来た。
ウララの【武器鑑定】で転移魂の扉と分かり、【万物調教】で作動させると転移が発動した。
扉に触れても転移しないので、キーアイテムがあるはずだ。
私たちはイベント報酬の戯魂を持っている。
使いたくないので取り出さなかったけど、転移魂の扉が作れるとなれば話は別だ。
「転移魂の扉……戯魂で作れるよね?」
「作れますね。魔王に直接頼んでみますか」
「この規模の大都市。魔王の力が隅々まで及んでいるサイクロプスクそのものだよ」
「サイクロプスクは横に置いてください」
ハードモードのクリアで解放されたサイクロンモードが魔王城で……『サ学』をプレイしながらサイクロプスクの面白さを語り合えないのは非常に残念だ。
「城下町なのか……?」
「神秘の都市です!」
「全なる魔王の中心地! 城塞都市トレジェッリィスでぇす!! あだっ!?」
調子に乗った奴隷魔女にチョップを食らわせる。
「トレジェリスです。それとパーティーを組めますか」
「それじゃなくてテフューラでぇっす!!」
積極的に殴られて兵士の厄介になりたがる魔女がそこにいた。この街の住人なんだね?
奴隷の首輪を外すと、テフューラはパーティーに加わった。
捕虜からパーティーメンバーに昇格して、勝手知ったる城下町に戻ってきたテフューラに聞く。
「うちは農家やったんよぉ~。でなぁ、魔女の館で特訓を受けて魔王城に召し上げられたー」
「魔女の館は何処にあるの?」
「学術区の何処かで王剣学園と魔剣道場の~、ってこれ以上言ったら殺されるっ!」
案内役のテフューラを喫茶店で労って口を割らせた。
魔女の館は何の変哲もない雑貨屋に擬態した魔女専用ギルドで、学術区に見慣れない雑貨屋があると魔女の館……出現させるには魔女になること。
高度と呼べる移動手段を持つ魔女だ。
ジィークの衛星地を知っていて、およそ全てのフィールドに精通する。
「位置では獣人国家でしたか。情報が出回らないわけです」
「淡水湖から西側は獣人国家だよね」
「トレジェリスは憧れなんよ~。獣人族はあまり好かんっぱ」
城塞都市トレジェリスは亜人族には憧れの大都市。
人族国家が滅亡しようと何処吹く風の住民たちなので王都民とは相容れない。
「テフューラは人族だよね?」
「うちは人族やー。うちの故郷は寂れた村でなぁ~。年寄りしかおらへんかったんよ~」
「それで田舎者丸出しになるんですね……」
「イベントNPCだから」
テフューラは生産ビルドだ。
羊飼いから魔女にジョブチェンジしていて、採石場では奴隷の如く酷使された苦い過去がある。
蜂蜜たっぷりのパンケーキを好きなだけ食べさせて魔王城に案内して貰った。
色とりどりの地竜隊が整然と並び立つ魔王城。
開け放たれた転移魂の扉を潜ると、大天使と見まがう魔王城の主が歓迎を示した。
「ようこそ我が城へ。御用向きをお聞かせ願えようか、カシー、ウララ」
精巧な遺跡人形を操るのは魔王当人であるらしい。
アバターチェンジは二つ目のジィーク・ジ・オリジナルを得て私がやろうとしたことだった。
死獲の魔王は死獲の魔王であるが故にそれを可能としている。
大自然族のNPCだ。
ジャックを連れていると初遭遇から好感度が高い。私も大自然族で特徴は似ている。
「では単刀直入に。この戯魂で転移魂の扉を製作して貰いたいです」
「ふむ」
強キャラムーブに出た死獲の一柱「イクシード・エンジェル」は転移魔法で私から死獲の戯魂を奪った。
「もう一つあります」
ウララはハルエルたちを抑止しつつ付け加える。
重要なのは死獲の魔王と配下の地竜隊だ。なるべく戦闘は避けたい。
「戯獲結晶は手元に十五個。遺跡人形の強化で転移可能になりますか?」
「この一つで可能だ。もうしてある」
「有難き幸せ」
口からすんなりと出てくる。転移可能になった!?
「私は魔法武器の強化をお願いします」
「良いだろう」
ウララは【武器召喚】で召喚される魔法武器を死神の戯魂で強化をした。
大自然族で大魔導師。
死獲の魔王「イクシード」は生産プレイヤー殺しだ。生産プレイヤーが血の涙を流す所業をしてくる。
「城内を自由に見て回ってよろしいですか?」
「好きにするといい」
「感謝します。モンスターは出てくるよね」
「出てきそうです」
地竜隊の一体から甘い香りがする……! ブラウニータートルがポップするんだよね!?
城主の許可を貰ったので採掘ポイントのある中庭でレベル77のブラウニータートルを乱獲する。
中庭には採掘ポイントがあった。
魔鉱石やミスリル鉱石が採れる。大陸を忠実に模した中庭で岩の形状が地図と一致した。
「凄いよ。この川は何を示すんだろ?」
「人族国家には流れていませんね。岩は海を、水は鉱脈を現しますか」
「ミスリル鉱脈かぁ~!」
イクシードは全能の神に等しい。
魔王軍の総意だろう。
プレイヤーの到達点だから魔王と呼ばれるのか疑問は尽きない。
ウララは私とテフューラを置いて城内探索に向かった。
ジャンヌの加護と同時にジャックの加護を得ていたウララなのでさほど幸運値は高くない。
侍神族に種族転生して、レベルアップ時に全能力値の自然上昇は1に固定された。ステータスポイントは6ポイント貰えるので経験値の美味しいモンスターを探している。
1レベルで確定15ポイントだ。
レベルでは廃人勢に届かないものの加護の力で十分に追いつける。
侍神族は魔女の上位互換なので、他の加護を取り込んでもやっていける。それに加護を得られそうな場所には見当が付いていた。
「テフューラはメレンゲ解に聞き覚えは?」
私は何となしに聞いてみる。
「メレンゲ王はトレジェリス一のパティシエー」
「キーワード検索がかかるのかな……魔王界のトップは?」
「もちろんイクシード様」
明快な情報……というか即答だった。テフューラの心酔っぷりは忠誠スキルに現れている。
「魔女の訓練でどんなことを学んだの? 何か呪文はある?」
「女子力!!」
……大聖堂じゃないかな?
「どういう時に叫ぶの?」
分からないので詳しく聞いてみた。
「魔女の集会で唱えるっぱ!」
訳わかめなモーションと一緒に返ってきたので、ポップしたブラウニータートルに八つ当たりした。
「頭良さそうな魔女とかいるのかな……」
ちょっと心配になる私だった。




