第四十三話『魔女マグマロ』
集落のドワーフに聞いてみると、魔女マグマロの仕業であると判明した。
「死獲の魔女だよね?」
「……何も知らないですぅー。うひぃっ!」
バチンッと、髑髏の王竜鞭を鳴らしたウララが奴隷魔女に聞き出した。ヴァルハワームに対する特攻武器でヴァルハルリカの王恋毛を2本とも使っている。
「死獲の魔女です……大自然族は優遇されて死獲序列が高いですぅ~っ!」
「魔女マグマロは序列何位かな?」
「ひ……! じょじょじょ序列4位ですぅ!」
ワールド情報で「所詮は序列最下位――――」と流れ出したので死獲の魔女に序列があるのは理解している。死獲序列と言うのか~。
「敵対ルートを選ばない攻略も悪くないですね」
「序列が絶対だろうし一掃した方がいいよ。大自然族が優遇される理由は一つだよね」
「魔王は大自然族か元大自然族ですね」
魔族に堕ちた大自然族……種族転生があるんだし魔王に至った経緯が隠されている。
「この辺りの村や集落は魔王軍の影響下。鉱山都市まで魔王の勢力範囲になるよね?」
「王竜の縄張りと同じ勢力図だとすると最前線の街や巨人族の村も含まれます。魔王城の対岸は怪しいですね」
腐魏道門を挟んで対岸にあるフィールド。その終点に悪魔族の集落はある。
大自然族に集落はなさそう。
魔王城がそれに相当するんだろうか……? 敵対しないならじっくりと確かめられる。
隆城岩鉱郡にポップするミスリルゴーレムを討伐して私は採掘スキルを習得し、鉱脈があると睨んだドワーフたちと魔鉱石を採掘していった。
「マグマロ様の祠を建てておこう!」
「「「おおっ!」」」
マグマロの祠……それはダンジョンである。
鉱山都市にあるマグマロの遺跡にはミスリルゴーレムが通常ポップするという話だった。魔女マグマロがポップ条件を満たしている隠しエリアだ。
ハンデイが採掘場を押さえて専用の狩り場にしていたように、隆城岩鉱郡のいたるところにミスリルゴーレムの狩り場を造れる。
魔女マグマロはプレイヤーにとって有難い存在だ。
マグマロの遺跡に捕まえられるとミスリルゴーレムのポップ率は上がる。
大自然族のプレイヤーが圧倒的に少ない以上、攻略組は喉から手が出るほど欲しいNPCだ。
「カシー。一帯を囲まれています」
「私たちが!?」
「はい。騎士団ではなさそうですね」
「ジャック、何人いる?」
私はジャックに聞いてみる。
「200人はいるよーっ!」
「かなりいるなぁ。まあ邪魔しに来たわけじゃないよね」
「それだけの人数ですからね」
討伐隊ではない。いやまあ、PKだと殺しにかかってきそうだけど。
悪い噂が広まって討伐隊を組まれたと考えるのが自然だ。
目的はイベントアイテムだろうし、PKも辞さない覚悟で奪いにやってくる。
「他の採石場を知らないのかな? 最前線の街に留まるつもりのプレイヤーだよね」
「話してみます」
私とウララは集落一帯を囲んだプレイヤーたちを待ち構える。
「王都襲撃には不参加か」
クランエンブレムを掲げる男は開口一番にそう言ってくる。
「不参加です。石材は宿屋建造に使います。城壁は後回しになりますが」
「街に居座るつもりはない、と?」
「最前線の街を基点に攻略するつもりです。魔王城の手前までは攻略しました」
「……魔人については何処まで知ってる?」
魔人? 私たちはジィーク情報に繋がるとしか知らない。
魔人廃街道に出現したジィークの衛星地に行ったので、あの辺りにいたプレイヤーは薄々勘付いているはずだ。しかし魔人が指すのは別のものらしい。
「9位のE魔人でしたか。噂程度にしか知りません」
「あいつはプレイヤーキラーだ」
「イベントフラグは回収しやすいよ。GVP報酬は私たちが得たからクエスト自体は未達成だよね」
「イベントクエストか……現時点でクリア出来るのは限られていた」
「無敗の剣王は弱体化させて討伐したよ。大自然族はNPCの好感度を取りやすい」
「本当に大自然族なのか?」
大自然族だよ。チュートリアルクエストで苦労したから隠しルートに入った。
「石切りポイントの場所は分かるよ。ここは近場だからドワーフに頼んで間借りしてる。イベントアイテムの情報はミスリル鉱石で売るよ。そっちの手勢に大自然族はいないの?」
「大自然族はいない。ミスリルゴーレムは低確率でポップするが」
「レアモンスターだよね。広範囲に散らばった方がいいよ」
最前線の街からフィールド一つ離れたエリアで、鉱山都市まで繋がる街道の途中にドワーフの集落がある。わざわざ大勢のプレイヤーで囲んだのは私たちを脅す目的だ。
情報は売る。
それとは別に最前線の街に貢献する。
付け入る隙はないはずだし、目的が被っていることは牽制になる。
「鉱山都市に行く」
最前線の街にさして興味はないらしく、人族が徒党を組んだ大規模クランは移動を始めた。
クラン方針は他種族を根絶やしにすることなのか? それとも戦争イベントが目的かな? 6本腕のジィーク・ジ・アルティメットに煮え湯を飲まされたのがクランエンブレムからひしひしと伝わってくる。
頃合いなのでお餅を呼び戻して最前線の街に帰還した。
それから10日は伐採と採掘を行って、私とウララはメインパーティーで腐魏道門に。
お餅は狩猟師たちを引き連れて怪羽放域硫に向かった。
「結構いるね~」
「トレインポーションは使っていませんね」
「相場10mだよね?」
「イベント時はそうでした」
ジャンヌクエストで得られるトレインポーションはお餅から何本か貰っている。
イベント終盤に2本使っていて、私たちは怒涛の追い上げを見せた。
トレインポーションをイベント時に使ってトレインポーションに憑りつかれたプレイヤーは多い。絶賛、大自然族は標的になっている。トレインポーションのためにリセマラしろって廃人勢は言いたいんだ。
「戦車があるのかよ」
「移動拠点か……羨ましい」
「速えな、あれで移動してたのか」
ランカー勢の脇を通り過ぎて魔王城のお膝元まで攻略する。
城門は閉ざされていてプレイヤーが出入りする様子はない。攻略の糸口となる死獲の魔女はその存在こそ知られるものの捕縛して魔王城に連れてきたプレイヤーはいないようだ。
「魔女の姿は見られるね。探知には引っかかってるよ」
「内部偵察までしたいですね」
「魔王は中立だよね。ラスボス攻略としゃれこもう!」
「楽しくになってきましたね!」
死獲の魔王は先の王都襲撃では中立と睨んでいる。
魔王城の主と謁見するのは攻略の近道。
隠しエリアの一つは見つけているので、雷雲を模した国旗の翻る魔王城の正面に立った。
城塞都市トレジェリスの門前で転移魂の扉は城下町へとプレイヤーを誘う。




