第三十八話『巨人族の戦い 2』
イベント5日目。
4つ目となるイベントフィールド、魔人廃街道には2つの満月が現れていた。
1つは本物。もう1つはジィークの衛星地である。
「ヌ……また来たのか……」
「来たよ~。ビンゴゲームの景品を楽しみにしててさ~」
「吉と出るか凶と出るか、モーアイが出るかジィークが出るか……!」
「ポイント加算も見ておきますか」
今更じゃないかな? イベントポイントは大して貰えないよ。
私とウララはイベント開始前に死獲行列のモンスターを数百と倒した。
イベントモンスターのポイント加算は1匹1000ポイント前後。
イベント開始で人族国家にポップした全モンスター及びイベントNPCはイベントポイントの対象だ。
イベントクエスト「死獲の魔女を捕縛せよ」は約15万ポイント。
イベントクエスト「死獲の檻に無敗の剣王」は約50万ポイントだった。
剣王の方は討伐ポイントも加わっている。
それが大体30万ポイント。討伐ポイントは山分けで元は100万ポイントのビッグネームを倒した。
3人とも200万ポイントを超えて、それで20位圏内。
ひたすらイベントモンスターを狩りまくる廃人勢には遠く及ばなかった。
「ビンゴゲームだし1列ごとに増えるかな?」
「5列以上で~……戯獲結晶が出た!」
「ランキング報酬ですね!」
ランキング報酬が貰える!? 私はぴったり五列だよ!
『イベントクエスト「死獲配列ビンゴ」をクリアしました』
『アイテム「ジィーク・ジ・オリジナル」を獲得しました』
『ヌ……メレンゲ解の織姫か……』
いや、ツッコミどころが……ジィーク・ジ・オリジナルは素直に嬉しい!!
ビンゴゲームの特賞だろうか? 5つ揃えてから持ってきたので10万ポイントも貰えた! モーアイの謎メッセージは気にしない。メレンゲ解って何?
「カシーは何でしたか? 私もお餅と同じで戯獲結晶です」
「ジィーク・ジ・オリジナルだよ。私もエルフアバターにしようかな?」
「牛車の強化に使えます」
「えーっ! それは勿体ないよ!」
せめてサイクロン用のトレーラーハウスに……まあウララの言いたいことは分かる。牛車を火神強化した方が移動速度は上がるよね。
魔人廃街道にジィークの衛星地が現れたのは私たちがフラグを踏んだからに他ならない。
巨人新車道に変えてやったんだ。
フィールド情報に真っ向勝負を挑んだのでジィークの衛星地は近付いてきた。
途中のフィールドに難所らしい難所はなく、ここ二日は早朝ログインして巨人族に移動を任せた。
魔人廃街道は魔法都市から巨人の足で約半日。
夜通し歩いても平気な種族なので、勇み足の行軍では牛車が遅れることになった。
「聖銀を回収して戻りますか」
「2周目だね~」
「カシーは牛車の強化をお願いしてきてください」
「分かったよ」
移動手段は重要なのでウララからジィーク・ジ・オリジナルを受け取る。
ジィークの衛星地が降りたのはフィールドのど真ん中だ。
私たちは魔人廃街道の中央を走る街道は通らず、真っすぐに最前線の街があった出口に向かっている。牛車のある場所からジィークの衛星地まで竜箒で往復1時間の距離になる。
モーアイからイベントビンゴをもう一度受けて、熟練度が1000を超えた万シャフトでひとっ飛び。
パゾースに牛車の強化をお願いして、私はジィークの衛星地まで2往復した。1人で乗るとやっぱり速い。敏捷極振りの加速力で月面着陸!
ウララは幸運極振りだけど今のところジャックの加護(小)。
ステータスの上昇は緩やかだし、ここに来てジィークの加護を獲得している。
呪い耐性の熟練度が上がるまでステータスの変化は乏しくなる。
魔人廃街道にはアンデッドモンスターがポップするので呪い耐性の熟練度上げには最適だ。
「シャフト300キロクリアした!」
「やり遂げたね! 残り1500キロだよ!」
「絶望させないで!」
お餅は第2のジャンヌクエストをクリアして第3のジャンヌクエストに進んだ。
道のりはまだ長い。
ラスボスのシャフト1000キロは気が遠くなるような作業だ。しかしクリア報酬で便利アイテムを得られる。チュートリアルクエストは全クリしないと。
「星逸鉱石は40個回収。隕石も沢山ある」
「預かるよ」
ウララが聖銀回収している間にミニゲームで遊んでいたお餅である。
星逸鉱石はイベントシーンで大活躍する武器を作れる。剣王討伐でゲットした死獲武器をこの鉱石で強化してもいい。死獲結晶はイベント報酬の王道なんだよね。
無限インベントリの魔法の世界箱に鉱石や聖銀を詰めた大樽などを仕舞う。
テイムモンスターも入れられる優れ物だ。
救世主1号は仕舞うのが心配だったけど剣王討伐で役割を終えた。兵器としての役割に救世主1号は疑問を抱いただろう。サイクロンと比べると扱いは雑だった。
巨人族の元に戻ってくると、牛車は車輪をキャタピラに換装していた。
「あのアイテムにここまでの質量はないような。まあいっか!」
「巨人たちの楽器を使ったんだ」
「なるほど。安定感のある戦車になりましたね」
ジィーク・ジ・オリジナルを使用すると、牛車を戦車に魔改造出来てしまうのか。
戦車1台にジィーク・ジ・オリジナルを3つ使われたので、他の2台はジャイアント・グリーンベル三頭で牽かせることに。移動速度は各段に上がった。
魔導師の作り上げた戦車は聖銀製のラッパと指揮棒で強化が施されて【万物調教】で稼働する。
どんな原理なのかは不明だけど【万物調教】で操れるんだ。機動スキルの効果が乗ってくれるので滅茶苦茶速度を出せる。私にしか操縦出来ないのは難点と言えば難点だ。
「格納出来るのは助かるね!」
「目立つので仕舞っておいてください」
そうして最前線の街に辿り着いた。
プレイヤーはまばらにいて走るログハウスに唖然としている。仕舞うと余計に目立たないかな?
「先を目指す?」
「ううん。少しは街のイベントを消化するよ。巨人族のマンパワーは必要そうだし」
「街の実権を握りますか」
さらりと恐ろしいことを言うウララに形ばかりの賛同を示す。どっちでもいいんだよ?
最前線の街は地図から消滅して日が浅い。
申し訳程度の防衛能力しかなかった最前線の街は死獲行列が通過してまっさらな大地が広がっている。クエストで瓦礫を片付けたんだろうか? 本当に何もない。
小さな建物がぽつぽつとあって、活気立つ街ではなく閑散とした村だ。
プレイヤーの行き来は多くて、イベント真っ盛りの空気はある。
そんなところに三台の牛車と百人の巨人が現れたので驚かれるのは仕方がなかった。
「露店があるよ。私が聞いてくる!」
「私はNPCを探してみます」
一応は街中の適当な場所に牛車を停めて私とウララは情報収集に徹する。
お餅は掲示板で情報を集めてくれる。
王都襲撃イベントも残すところ2日を切ったのでプレイヤーはポイント稼ぎに大忙しだ。露店NPCだったので困っていることがないか聞いてみる。
「城壁がないのでやはり不安ですね。どうにかならないかと考えてはいるのです」
「北部の鉱山都市は頼れないかな?」
「頼りになるでしょう。隆城岩鉱郡では石材も採れます」
鉱山都市のある隆城岩鉱郡は森林フィールドを跨いだ場所にある。
簡易拠点を町規模にした最前線の街は周辺フィールドで得られる資源で築かれたため、街を囲う壁は丸太と木板で囲っただけの簡素な代物だ。目隠しにしかなってないよね。よっぽど頑丈な木なんだろうか?
「フォレストベアの肉? 美味しいよ。結構持ってるの?」
「かなりの数。沢山買われたので安くお売りしますけど」
「助かるよ。十個単位で売ってくれる?」
山歩きの串味焼を20本買って、フォレストベアの肉を買い占める。
フォレストベアは次の森林フィールドでポップするモンスターだ。木を伐採すると高確率でポップする。
魔人廃街道にはアンデッドモンスターがひしめいており、悪魔系モンスターのヴァンパイアが地下に巣食らっている。シャフトを発動すると高確率でヴァンパイアがポップするレイドマップだ。




