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隠密ジョブのメレンゲレンジ  作者: タ別


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第三十九話『巨人族の戦い 3』




 最前線の街は無法地帯だった。

 巨人たちを従えようと躍起になるプレイヤーたちに笑顔で「着いてくる?」と言って向かったのはイベントフィールドとは真逆の隆城岩鉱郡。

 巨人の進軍速度に着いて来れずに脱落したプレイヤーたちは放っておいて、イベント6日目はドワーフの集落にある採石場に流れ着いた。ドワーフの集落はドワーフ用で入れなかった。


「魔王城に攻め入るんだからね。戦力はよく吟味しないと駄目だよ」


「イベントフィールドに進むことが重要です」


「……ウララは魔王と戦うんじゃなかったの!?」


 信じられないとウララに訴えかける。そのためにイベントフィールドを巡ったんだよね!?


「戦いません。イベントフィールドの到達ボーナスがありそうなので行ってみるだけです」


「巨人族の戦いは終わらせない」


「そうだよ! 巨人族の戦いがイベントの突破口! 全員置いてはいけないから!!」


「レベル100以上のフィールドです。少数精鋭で行きます」


 魔王の築き上げた巨大水門がノヴァ率いる死獲行列の出発地点で、イベントフィールドに辿り着くには巨大水門を越えなければならない。

 海の一部を区切るのが巨大水門で、総距離は100キロにもなる建造物だ。


 前人未踏の領域で巨大水門を通ると生きては帰れない。

 魔族を選んだプレイヤーでさえ巨大水門を通るのは不可能で、獣人国家を通り抜けてイベントフィールドに到達するルートが確立された。


 廃人勢のおわすイベントフィールドだ。

 高レベルのイベントモンスターを狩りまくってランキング最上位を争っている。

 きっと血みどろの戦いだろう。

 全員オレンジカーソルでも何ら不思議のないスコアなんだ。イベントフラグを回収する私たちにダブルスコアを付けるとは狂気に満ちている。王都防衛では絶対にあり得ない。


「出現モンスターは毒系が多かったよね。毒耐性持ちの料理人は戦えるよ」


「適正レベルは120から150です。生半可な耐性ではやられますね」


「ウララは知ってて毒耐性を鍛えた?」


「はい。ベータテストの時に得られた攻略情報です。ランキング最上位はベータテスト経験者ですね」


 ベータテスト期間にもイベントが起きたらしい。

 事前情報はあったんだ。最前線の街はベータテスト期間に造られた? 始まりの街にモンスターが襲撃したのかな? その時は攻略難易度が低かったと。


 ウララはベータテスターだったわけじゃない。

 『JCO』の攻略情報はベータテスト期間からまとめられている。購入してからかなり熱心に調べていて、奇妙なことに画像や映像はない。まあ撮影アイテムが未実装だったんだよね。


 ハンデイは何かの別ゲーと勘違いしていたけど、今回のイベント報酬はイベント限定アイテムのみだ。

 配信用のアイテムは攻略組にあまり旨味がない。

 イベントガチ勢がわいわいやっているかというとそうではなく、ランキング報酬のためにイベントフィールドでのし上がろうとする。蘇生薬を鼻で笑う戦場だったよ。


「ヴィシャと騎士村長、奴隷魔女は連れてく」


「鍛冶師は残した方がいいですね。セピュネを連れて行きます」


「候補は五人? 丁度いいかな?」


「僕も連れて行ってくれ。頼む」


 と、ハルエルは心なしか必死そうに頼んでくる。セピュネと仲がいいんだっけ?


「いいよ。装備を更新しようか!」


「聖銀製の武具で揃えますか。カシーは未だに布装甲ですよね?」


「布装甲は酷いなぁ。防御力はないけどさ!」


 シャフトラインドレス・改は低級装備である。初心者を抜け出した耐久性能だ。

 強化するタイミングがなかなかなかったし、基本、胴体に被弾することは皆無である。『サ学』の前はロボゲーに嵌まっていて、超高速マニューバーでゲームクリアした。目隠し乱舞射撃だ。音声入力を全部ヒャッハーにすると強い。


 まあ別ゲーのことはさておき、ハルエルとセピュネが恋仲なのは一瞬で分かる。

 プレイヤーがフラグを踏んだのかな? ヴァルハワームを倒そうとしていたんだよね。二人に対して好感度を持っていたわけだけど。


 ハルエルとセピュネにもジィークの加護があるので耐久は折り紙付きだ。

 それを更に防具で補う。

 念のためドワーフに何の鉱石が産出するか聞いてみると光魔鉱というので2人の装備分は買わせて貰った。ダイナマイトに興味ある? 火薬があると沢山採掘出来るよ?


 人族お断りの雑貨屋で何とかポーションを買い揃え、万全の準備を整えた私たちは望遠鏡を搭載した戦車に乗り込んだ。


「パゾース! 少し出てくるよ!」


「ああ! 気を付けるんだぞ!」


 料理を任せてからオカン属性の付いたパゾースと採石場で働く巨人族に別れを告げて私は戦車を走らせる。岩地フィールドでもすいすい進めるから最高だよね!


 砲身と見まがう巨大望遠鏡でお餅は偵察してくれる。

 構造は投石機だ。

 展望デッキに固定してあり、360度回転する舞台装置。製作にはドワーフが関わっている。


「偵察よりは隠密?」


「それに越したことはないです。死獲の魔女は何か知りませんか?」


「……何か?」


 こてりと首を傾げる天然魔女の耳を引っ張る。私じゃなくてウララだ。


「いだだだっ! 全て話しますぅ~!」


「水門の入り口は?」


「い、入り口は~、わっすれたー! あうううっ!?」


「どうやら拷問しなければならないようです」


 死獲の魔女を物置部屋に連れて行ったウララを苦笑いで見送る。

 ウララはこってりと絞ったようで魔女は数分で吐いた。


「水門には隠し通路があります。魔王城直通です」


「腐魏道門だっけ。入り口は何処にあるの?」


「折れた岩と淡水の境界です。水門の内側で折れた岩が目印ですね。入り口は水中にあります」


 淡水? 海が淡水に変わったの?

 色々と疑問は尽きないので、イベント最終日を楽しみにする。ライトなゲーマーは最終日をエンジョイするよ。魔王城攻略かぁ~。





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