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隠密ジョブのメレンゲレンジ  作者: タ別


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第三十七話『巨人族の戦い 1』




 巨人族を束ねる私たちはレイドイベントの主戦場を離れて、飛行型モンスターの多く生息する怪羽放域硫を目指す。巨人族の村があるとのことだけど、巫女のヴィシャは不吉な予想(フラグ)を立てている。


 怪羽放域硫のモンスターは死獲行列の出現に伴って暴走し、イベントモンスターと化して王都方面に大移動している。

 死獲行列の進軍ルートからは大きく逸れているのにモンスターは暴走した。

 ノヴァ以外にもレイドモンスターがいるのは間違いない。それも単なるイベントモンスターではなく、マジモンのレイドモンスターだ。


「儂らの村は奴に奪われた……!」


「奴とは?」


「クルヘエーグ!! 淡き畏き獅子だ!!」


 怪羽放域硫のレイドモンスター。

 イベント開始とほぼ同時に巨人族の村を襲撃したクルヘエーグなる強敵は、高レベルの巨人族でも太刀打ち出来ない正真正銘の生ける伝説だ。


「未確認のレイドモンスターですよね。良くて撃退になりますか」


「倒せないよね。となると、村は造り直すことになるよ。どの辺りがいいの?」


「村を造り直す……儂にはあの村しかないのだ!!」


「大自然族はここにもいるよ。村は拓ける」


「大自然族? 何処にもおらんぞ!?」


 目の前にいるよ?


 村長は大巨人族でギガンテスと肩を並べる大きさである。

 村の人口は50人以上。

 酪農を行っている巨人族の村で、体長4メートルの巨大牛を連れている。怪羽放域硫の一部に生息するジャイアント・グリーンベルだ。ベルの形をした瞳が特徴。


 村長を説得してスリップダメージのある針放樹を伐採し、イベント2日目に巨人族のマンパワーで簡易拠点を築き上げた。

 針放樹の枝は矢の材料に、丸太はログハウスの材料になる。

 開墾して牧草を伸ばしまくったので、ジャイアント・グリーンベルを放牧出来る。


「戦ってきました」


「熱かった」


 ウララとお餅はクルヘエーグの偵察からデスリスポーンして戻ってきた。


「村の様子は?」


「全滅です。何もかもが炭化しています。ドレイン系で対象を攻撃にも切り替えられます」


「破壊属性がないと厳しいんだね」


「レベル350です。落下罠は効果がありました」


 そう言って、ウララはクルヘエーグの角を見せてくる。獅子に角があるんだ?


「見た目は体長20メートル以上のスライム」


「え……? スライム?」


「見た目はそうです。前角から雷撃を放って、後ろ角はマフラーです。攻撃を吸収されると煙が色付きます。魔法攻撃が主体でヴァルハワームの毛色があります」


「ドレイン系で見た目がスライム……海のモンスターかな?」


「うん。進路上の植物は全部枯れてる」


 植物の生い茂っているエリアに移動すると……襲撃イベントは勘弁願いたい。


 クルヘエーグは超高熱を放つ全身を毛皮で外気から完全に遮断しており、二人してクルヘエーグに飛びかかられたらしい。

 毛皮に触れるとスリップダメージ。戦うには耐性スキルが必須だ。


「予定通り死なずの大地に移動しますか」


「超特急で牛車を造って貰うよ」


 ログハウスごと持ち上げられる? ついでにサイクロン用のトレーラーハウスを造って貰おうかな?


 ジャイアント・グリーンベルは6頭。

 ログハウスは丁度3棟目を造っていたので、これ幸いと牛車に変えて牛二頭で牽かせる。


 百人近くの大所帯だ。

 怪羽放域硫で食糧を集めるだけ集めてから1日がかりで砂漠街道を突破した。

 



 イベント4日目。

 その規模を三倍に増やして墳塞下流域にやってくると、聖銀製のラッパを持って悪魔族の集落を取り囲んだ。イベントクエスト「死獲の檻に無敗の剣王」は受けている。


「なんだあ……?」


「悪魔族を討てぇーーーっ!!! 悪魔族を討てぇええーーーーっ!!!」


「悪魔悪魔うるせ……ガァァッッ!!?」


 巨人族が一斉に合唱するとサーヴァンツは身動きが取れなくなった。

 巫女の力は種族特性を最大限まで高める。

 巨人族であれば内臓器官……特に肺活量を引き上げる。悪魔系モンスターに効果のある楽器があったら使うしかないよね。指揮棒を握るのは怪羽放域硫の村長。流石に大巨人族用の楽器は無理があったけど、クルヘエーグの角を指揮棒にしている。


「剛墜の楔刃」


「【ファイアジャベリン】」


「フルスイング!!」


「ガァアアアアッァアアアァアァァッッ!?!?」


 無敗の剣王はフルボッコにした。

 圧倒的な数の暴力。

 利用しない手はないので、イベント素材はこのために使った。


「救世主一号! 悪魔の浄化だよ!!」


「アギャアアアアアアアッ!!?」


 レベル100に育てたプライマリーボンバーズを【万物調教】で大爆発させる。


「【キリングエッジ】×7!!」


「【プロントランチャー】」


「ギャァァァァァ…………」


 剣王まで上り詰めた悪魔の消滅で指揮棒は降ろされる。


「勝ったね」


「戦いの序章に相応しい敵だった」


「何とも言えませんね」


 イベントは中盤。

 ようやくネームドのイベントモンスターを倒せたので、イベントの攻略難易度が恐ろしく高いのは語る由もない。王都襲撃イベントでイベントフィールド巡りをするプレイヤーが私たちの他にいるかな?




『イベントクエスト「死獲の檻に無敗の剣王」をクリアしました』


『アイテム「死獲の魔斧」を獲得しました』


『カシーはレベル103からレベル115に上がりました』


『この集落が襲われなきゃあいいんだ――……』




 ……追加でウィンドウが発生した? 垂界物の効果だろうか?


「裏を返せば集落が襲われないように護っていたと……剣王はこの集落で生まれたみたいだね」


「クエストアイテムが死獲武器だった。二人もそう?」


「はい。私は魔刀でした」


 私は死獲の魔斧で、お餅は死獲の魔杖だ。

 クリア報酬は戦闘時に使用していた武器になる? まあ討伐したからね~。


「剣王のお墓を立ててあげよう。ラッパはまた使うよね?」


「使います。鉢植えでいいですか?」


「おしゃれなのがある」


 四角い鉢植えをひっくり返して岩に埋め、ヴァルハワームの記録竜皮に文字を刻んだ。




 ――――剣王、ここに眠る。




 巨人用の直剣を自在に操り、剣圧を飛ばしてくる無敗の剣王。

 この集落にはまた来ることになりそうなので、巨大樹シェルターに隠れる悪魔族に討伐を報せる。


「おぉ……! あやつを打ち倒して我らを救っていただいた貴女方に平伏いたします!!」


 しゅばばばっと、地面に膝を付いた悪魔族に大袈裟だなぁと内心思う。


「私たちが向かうのは北だよ。悪魔族の集落は他にもあるの?」


「遥か北に御座います。よろしければ地図をお持ちくだされ」


「地図?」


「おおっ! 大陸の地図!」


 悪魔族の長が大陸の地図をくれた! これは冒険が捗る!!


「ありがとう! また来るよ!」


「はい。次は盛大に歓迎いたします」





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