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隠密ジョブのメレンゲレンジ  作者: タ別


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第三十六話『イベント開始』




 淡河大喰域から放たれたオークの軍勢は王都に向けて進軍中。

 村や町には壊滅的な被害がもたらされ、王都に避難する村人たちは増すばかりだ。

 状況は最悪に近い。

 プレイヤーが「王都しか防衛出来ない」から王都襲撃なのか? そうとしか思えない負けイベントの連続だ。本気になるプレイヤーは想像以上に多いはずなので冷静に襲撃ポイントを吟味する。


 襲撃だ。私たちはオークの軍勢を襲撃する。

 川の流れに従うように単斑山から一直線にオークの軍勢へと切り込む。


 武器は揃えた。

 狩猟師が多いので聖銀の矢を量産して持たせている。

 聖銀はジィークの衛星地で回収した砂だ。大量に集めたので全て聖銀の鏃にした。

 村長と鍛冶師の二人はそれぞれ死獲の大剣と死獲の大盾を装備する。


 日付が変わった。

 王都襲撃イベント開始とともに私たちはオークの軍勢に奇襲を行う。

 単斑山の山頂から淡河大喰域の真下まで全力疾走し、オークたちが一塊となって出現するレイドマップの玄関口を叩いた。


「全速前進!! このマップを攻略するよ!!」


「舵杖が火を噴く……!」


 お餅は知力の欠片もないインテリ舵杖で高威力の【ファイアジャベリン】を放つ。

 シャフトの軌道を変えられる武器で魔法にはホーミング効果が付与される。【プロントランチャー】で長距離からモンスターを狙撃することも可能だ。


 上空から襲いかかる飛行型モンスターはお餅と巨人族が撃墜する。

 淡河大喰域のモンスターではなく、王都襲撃イベントで現れたイベントモンスターだ。


「竜騎豚です! 五体目ですね!」


「イベント開始で増えてくるかな!? 美味しい獲物だよ!!」


「「おおおおおおッ!!!」」


 イベント武器を持たせた巨人騎士と巨人戦士が地竜に跨るアヴァンギャルドオークに突撃する。

 巨人族には転職条件が引き上げられるデメリットがある。

 狩人から狩猟師になるにはレベル30が最低条件。しかし巨人族の場合はレベル50だ。


 道中で巨人族全体のレベルを上げたものの適正レベルとは言い難い。

 それでも戦力になっているのは巨人族のみが習得するパッシブスキルがあるからだった。


 正面から地竜の動きを押さえた死獲の大盾に続いて、死獲の大剣が地竜ごとアヴァンギャルドオークを叩き斬る。村長と鍛冶師は巨人族の中でも大柄で、イベント武器を持たせると破壊力は桁違いになる。


 主戦場は王都近郊。それと淡河大喰域だ。

 王都襲撃イベントの元凶、獲統王「ハディース・ノヴァ」が淡河大喰域を治める河神族「マニワマス」と出会ってイベントストーリーは加速する。


 メインイベントは王都で起こり得ない。

 イベントフィールドは五つ。五つともレイドマップで王都近郊にはないんだ。

 王都襲撃を未然に食い止められなかったプレイヤーは、サブシナリオを熟しながらイベントモンスターと戦っていく。そして淡河大喰域にやってくるプレイヤーは五万と出てくる。


「新手のトレインか……!?」


「クエストだよ~!」


「って、カシー!? ランキング2位じゃねーか!?」


 ランキング2位? 確かめてなかったよ。

 私が2位だとすると、1位はウララだよね? イベントフラグの回収率はトップクラスだった!!


「ヒャッハーーーーーッ!!」


「カシー! それは止めてください!!」


「いいじゃん! 世紀末まっしぐらだよ!?」


「違いますから!」 


 魔王でもない準魔王級のモンスターに国土は踏み荒らされた。

 それ以前からプレイヤーの行動で盗賊は増えまくっている。シールヴァルの闇市が活気立つよ。




 イベントモンスターを食らい付くしながら淡河大喰域を横断して、マップ外縁の捨てられた農村で巨人族は夜を明かした。


「一日で追い抜かれちゃったかぁ~」


「仕方ありません」


 イベント開始時にはトップ独走状態だった私たちは、イベントガチ勢によってランキングを塗り替えられていた。キルスコアで勝負する廃人勢には敵いそうにない。


「でも私たちはユニークイベントのクリアボーナスがイベント終了で加算されるからね」


「巨人族の仲間を増やしていきますか」


「捌き切れない量の食材だよね~」


「胃薬がいる」


 料理スキルがカンストしている村の料理人は腕組みしながらパゾースを指南している。

 ほほえましい光景だ。文明が崩壊しかけて巨人族に料理を教わる。いや、あれは違うかな? 焼くしか能のない不器用な料理人がパゾースの器用さに戦慄しているんだ。


 大食漢の巨人たち30人に火神料理を振舞って、レイドマップ周辺に造られた巨人族の集落に移動する。

 集落の長は巨人族ではないらしい。武器は棍棒の大鬼人族だ。


「オオオオオッ!!!」


「大鬼人族が出たぁー!?」


「一発で見抜くとはやるな」


 プレイヤーたちは狩り場を守るために大鬼人族を使って挑発してくる。


「巨人族のイベント……なのか?」


「そうだよ。集落の巨人族は連れていこうか?」


 集落をもぬけの殻に出来ると提案する。


「……それでボスに挑むわけか」


「挑まないよ。クエストで立ち寄っただけだし。このフィールドからは真っすぐ出ていく」


「まあいい。集落はあっちの方角にある」


「そこの長と話していい?」


 集落の巨人族を連れていきたいので大鬼人族と交渉する。


「ガァ……? オデノ集落ニ用カ?」


「うん。集落に暮らす巨人族をまとめたいんだよ。ひとまず北に進んで二つ目のイベントフィールドに行く」


「オデハ成リ行キデ長ヲシテル。アイツラガ決メルコトダ」


「分かったよ。竜肉は上げるね」


 ピュアリザードの肉でも最高品質の骨付き竜肉を大鬼人族に差し出して集落に向かった。


 集落の人口は10人前後で、カマボコ崖の洞窟に暮らしていた。

 レベル50未満の巨人族もいて、殆どは村人や漁師などの非戦闘職。


「巫女様?」


「はい。僕は巫女です」


 カマボコ崖にはテラスがあり、巫女装束のダークエルフが現れた。


「巨人族なの?」


「……巨人族です。魔王にこの姿にさせられた、という事実はありませんので」


 ふいっと恥ずかしそうに顔を逸らす。

 巫女装束はプレイヤーメイドで、豹変しそうな奥ゆかしいキャラクター。

 親近感の湧く美少女キャラだ。巨人族なら仲間になってくれる。


「ジィークの加護かな?」


「何故それを……?」


「考察だよ。赤ん坊の頃、大鬼人族に死なずの大地で拾われたとか?」


「当たっています……!」


 巨人族のタフネスに加えてジィークの加護で育った巫女NPC。

 隠し職業に巫女があるはずで、巫女はジィークの衛星地を降ろせる。経験に則る予言によってだ。


「私はカシー。長の許可は取ってきたよ。巨人族の戦いに加わる覚悟はある?」


「……あります」





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