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隠密ジョブのメレンゲレンジ  作者: タ別


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第三十五話『死獲の魔女』




 死獲の魔女は底冷えするような笑みを浮かべて襲撃者に言い放った。


「なまらえっろ」


「……はっ!?」


「噛んだー」


 敵性反応のNPC。

 青塞の単斑山で悪巧みする魔女にしか見えず、中身がぽわぽわした天然キャラで転びそうになった。イベントNPCは濃いキャラが多いよね!


「降参」


「うっそ!」


 初撃のムスペルシュートを防いだ魔女に王竜騎噴脚のフルスイングを捻じ込んだ。

 地面を転がったのでシャフトで追いついて、止めを刺そうとした瞬間に降参モーションをしてきた。


「捕縛します!」


「そ、そうだね!」


 王竜騎膨腕とジャックスタンで気絶状態にした。

 ウララは強化された髑髏の竜鞭でその魔女を縛り付けるとふうと一息吐く。


「見るからに情報源です」


「情報源? イベントNPCってことだよね?」


「王都襲撃を魔王に報告する魔王の手下だと思いますが」


 首から下げている大判のペンダントは鏡だ。

 ウララが何かいると言っていたのも月明かりを反射させるペンダントが原因らしい。

 密偵のような恰好で、武器は体中に仕込んでいる。


「【万物調教】……これでよしと」


「装備まで剥がせるんですか」


「初めて知ったよ。まあ木の実の殻は砕けたし同じなんじゃない?」


「全然違います」


 【万物調教】で武器を解除させると暗器がいくつも出てきた。

 この天然、銃を持ってる。

 イベント武器かな?と能天気に話しつつ回収して籠楼の獲竜箒に乗せた。


「お餅はまだログインしてるよ」


「では戻りましょう」


 うん。大収穫だね!




 巨人族の村長が騎士で死獲の魔女を連れ帰るとイベントクエストが発生した。

 ウララをイベントランキングで上位にランクインさせるつもりの私とお餅は、イベントクエストを辞退しようとしたもののウララが反対。

 初めて3人でパーティーを組んで記念のイベントクエストをクリアした。


「死獲結晶……ランキング報酬になかった?」


「ありましたね」


「イベントアイテム先取り~」


 クリア報酬はなんとランキングで得られるアイテムだった。

 イベント限定の強化素材で、上位アイテムには戯獲結晶がある。

 とにかくイベントランキングに反映されるものらしい。オークの先遣隊を殲滅したし今更かな? 他のプレイヤーが一時間がかりで倒すイベントモンスターを10秒足らずで調理していた。


 レベルは90に届いて、ウララはレベル97。

 クエストフラグを踏襲するとここまで強くなるのかと度肝を抜きたくなる。殆どウララが倒したね!


「今日は楽しかったですね」


「楽しかったよ! 明日が楽しみだね!」


「ギガンテス~、ファイト!!」


 なんじゃそのかけ声!? あ、お餅がログアウトした。


 村の防壁を突き出す巨大な村長宅の部屋を使わせて貰って、リアルでウララ(真)たちと予定を話しながらイベント前夜を迎えた。






「飲め飲め食え食えぇ!! 今宵は巨人の宴じゃあああっ!!」


『『うおおおおおおおおッッ!!!』』


 村長宅の屋上にて巨人の宴が開かれた。

 村人全員を集めての盛大な催し。新鮮なシュヴァルツオークの肉を大量消費するために集めた彼らの胃袋を満たして即戦力に変えようというのが私たちの作戦だった。


 私は現在進行形で肉の調達係。

 青塞の単斑山でピュアリザードの肉を大量生産している。適正レベル帯が50以上なのでレベル50のピュアリザードがポップしてくれる。

 ポップ率は異常に高いし、ドロップの品質向上がかかる。


 お餅はお餅で空荷の籠を背負ってワンドプレス・ポータルを倒す。

 羽根が巨人用の矢に使えるし、ワンドプレス・ポータルの肉は巨人族の主食だ。

 狩猟の盛んな村で畑はなく村の規模は小さい。

 好感度さえ上げてしまえば戦力になってくれると判断した。


 全体の指揮はウララが担当する。

 あわよくばパーティーを組んで、巨人族を味方に引き入れるつもりだ。


「こんなの拷問だー。お腹がはち切れるー」


 巨人族の村長に差し出した死獲の魔女にはイベント仕様の奴隷の首輪を嵌めて同行させる。

 イベントアイテムの死獲結晶とデビルシェイカーの滅輪で作った首輪だ。

 逆らえば頭と胴体がお別れするので、ハルエルとセピュネに監視させている。パゾースは巨人の胃袋を鷲掴みにする器用極振りシェフに就任した。


「戦準備が整いましたね」


「ううむ!!」


 私とお餅が宴の場に集結すると、新たなイベントクエストが発生した。




『ユニークイベントクエスト「巨人族の戦い(ティタノマキア)」を開始しますか?』




 ユニークイベント!? パーティーを組んでいるウララとお餅にも発生した!!


 加護のデメリットはレベル90ともなると殆どあってないようなもの。

 私にしてもそうだ。

 ジャンヌの加護でステータスポイントを極振りにされようと気にならない。上がるのは敏捷だからね。


 ウララはジィーク・ジ・アルティメットの討伐で呪い耐性を獲得していて解決策がある。

 イベントビンゴは周回出来そうなので、その時にジィークの加護を得て熟練度解放の流れだ。ステータスが固まって例え1ポイント地獄に陥ってもイベントを消化出来る。


「皆の者!! 戦が始まるぞ!!」


『『おおおおおおおッ!!!』』


「巨人族の誇りにかけて戦うのだ!! 我らの勝利はかの地にあり!!」


 クエストの詳細ではイベント終了までサバイバルだ。

 推奨レベル50。優しいクエストである。

 しかしクリア判定が存在するので、がっつりイベントに関わっていくしかない。


「我らの勝利はかの地にあり!! 戦いの幕開けだ!!」


『『うおおおおおおおおおおおおッッ!!!』』


 よーし! 出発出発! こいつらはオークの肉に飢えた巨人族だよー!!


 私たちは死獲行列の向かったレイドマップを目指すことにした。

 王都センクシムの真上に位置するレイドマップ、オークの集落が点在する淡河大喰域だ。

 適正レベル帯は70から95。

 攻略組プレイヤーはこのフィールドでレベリングをして今回の王都襲撃イベントに挑む構えだった。


「巨人の群れ……!?」


「な、何が起こったんだ!?」


「レイドイベントぉ!?」


 巨人族が一斉に走り出して青塞の単斑山を揺らす。

 フィールドにいたプレイヤーたちは山を駆け上がってモンスターを屠る巨人の姿にしり込みしていた。ピュアリザードは一匹たりとも渡さないよ?


 私たちは単斑山の山頂に布陣して、戦意旺盛な村人たちに改めて檄を飛ばす。


「敵はオークだ!! 特殊な武器を持ち、我々を嘲笑う豚どもだ!!」


「うひっ」


 死獲の魔女を跪かせて背中にガッと足を乗せる。決まったね!


「我々の敵はこの世に蔓延る豚どもの末裔だ!! この世の豚は全て滅ぼせ!!」


「……カシー」


 ウララは頭が痛いとこめかみを押さえる。私は止めない。


「こいつは豚の一匹だ!! この豚がここで何をしていたと思う!? そうだ、死獲の魔王にオークの進軍を報せていたんだ!! この豚一匹がどう転がるのか、我々は楽しみにしようではないか!!」


「それは悪役の台詞……!」


 お餅は腹を抱えて笑っている。まだまだ続けるよ?


「世界を統べるのは魔王ではない。世界を統べるのはここにいる我々だ!! 巨人たちよ、不思議に思ったことはないか? 力でねじ伏せる敵に力で対抗する我々に敵うものがいるのかと……そうだ!! 豚の一匹、我々の手にかかれば赤子の手をひねるよりも容易い!! 豚の百匹、我々の力を結集すれば腹で踊らせることも出来るだろう!!」


「「ぐふうっ!」」


「巨人たちよ!! 我々を嘲笑う豚どもを捻じ伏せる時が来た!!!」


『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!!!』』


 ふう……これで好感度MAXだ。

 気持ちよく出陣の儀式を終えて、腹筋の崩壊したお餅に偵察を任せた。





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