第三十四話『聖騎士団』
ジィーク・ジ・アルティメットはクエストモンスターという域を出ない。
言い換えると、誰かがクエストを受けたからジィーク・ジ・アルティメットは村に襲いかかる。
「クエストの邪魔をするな!!」
「ああ! 俺たちの獲物だぞ!?」
ウララが2体のジィーク・ジ・アルティメットを倒し、残るは6本腕のみとなると聖騎士団が騒ぎ出した。
獲物を譲れと、そういうことらしい。
「まあ魔法の的にはしやすいよね。ご自由にどうぞ」
「端から倒しますか」
「う~ん。NPCを使い捨てはいただけないなぁ」
聖騎士団で同じ仲間。
対して私たちは何の義理も関わりもない。襲撃イベントだから戦闘に参加している。
「それと私たちもクエストを受けてるよ」
「……っ、ぎゃああッ!?」
聖騎士プレイヤーは私たちの代わりに6本腕と戦おうとして速攻で墳塞川に沈んだ。
水中ではどうしても機動力が落ちてしまう。
私たちが足止めしていたから対岸にいる聖騎士団には手が出せない。だから墳塞川を渡らせて倒そうという魂胆だ。一見してボスモンスターに見えるけど、オークの先遣隊に影響があるとは思えない。討伐しても村はオークに蹂躙される。
先遣隊は聖騎士団と同数の500。
襲撃イベントに参加したプレイヤーのうち、聖騎士団に所属しているプレイヤーは約七割。
プレイヤー陣はデスリスポーンして村の防衛に回っている状況だ。
「レベリングだよ、救世主1号!」
シュヴァルツオークに救世主1号をぶつけて経験値を吸わせる。
ウララの放った星逸斬りで倒せたので、川に流される救世主1号を拾って再び投げる。救世主1号だからNPCを助ける一助になるんだよ。
祭壇の大斧を装備し直して、襲撃イベントで兵器作りに勤しむ。
目標はレベル100だ。
イベントモンスターとあって経験値はじゃんじゃん入ってくる。少しくらい救世主1号に分けてもウララの文句は飛んでこない。
「あれ? 6本腕は何処にいった?」
「分かりませんが……」
墳塞川を渡った様子がなくて探していると、助走を付けた6本腕の怪物が川を飛び越えた。
「ガアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
『『『ぎゃあああああっ!!?』』』
「うわ~。派手にやられたね」
対岸で手をこまねいていた聖騎士団がジィーク・ジ・アルティメットの下敷きになった。
1分持ちこたえるので精々の強敵だ。
ウララが素早く二体を倒してくれたからあのデカブツに集中出来た。私とウララの2人で倒せなくないモンスターだけど、襲撃イベントを引っ張っているクランに獲物を譲る心はある。
オークは徐々にその数を減らした。
私たちが序盤にアヴァンギャルドオークを倒したので聖騎士団に大きな被害は出ていない。
墳塞川でまともに戦えるプレイヤーはおらず、聖騎士団を取りまとめる隊長が全体を指揮している。直属部隊が美女美少女でオークの群がり方は尋常じゃない。トレインポーションが原因かな?
「助太刀するよ!」
「劣勢の極みである!! 感謝するぞ!!」
星逸斬りで群がるシュヴァルツオークを倒すと、巨人族の女隊長が自身にバフを重ねがけして先陣に躍り出た。後衛職と思わせて生粋のファイターらしい。この肉体で後衛職はないか。
「総取り……そんなこと、させるかぁああああああ!!!」
プレイヤーの魔法が飛来してくる。
急旋回して王竜騎噴脚で防ぐと【キリングエッジ】で応戦した。
「PKかな?」
「んな……! 殺すとどうなると」
「知ってるよ」
グリーンカーソル。
私は気にせずキルしてドロップと大量のコルに変えた。ウララの邪魔をされると嫌なんだよね。
ドロップアイテムは回収して、何でもないようにウララと共闘する。
経験値、ドロップアイテム、クエストフラグ。
この場で得られるものは計り知れない。ウララがジィーク・ジ・オリジナルを手に入れて目的は達成したけど、村を見捨てるのは寝目覚めが悪いので残る一体を気にする。
「武器が強くなるだけだ……! とにかく村から引きはがせ!!」
「魔法で応戦しろ!!」
「グガォォアアアアアアアッ!!!」
「む、無茶だ!!」
村は既に半壊している。
リスポーン地点は無事でも村の防衛には失敗してしまった。
クエストと言っていたし十中八九防衛クエストだ。イベントクエストだとクリア判定があるかな?
「殆ど私たちで倒していますね」
「倒せちゃうね」
墳塞川の戦局をひっくり返したので、聖騎士団の一部は村の防衛に回った。
オークの先遣隊は私たちで倒し切れる。
プレイヤーが各個撃破しようとする最中、空中機動力を活かした戦術で根絶やしにする。
オークの先遣隊に増援の姿はない。
それは他の村に戦力を割いているプレイヤー陣営にも同じことが言える。
この場合は人族国家陣営か。魔王や準魔王級のモンスターに与するプレイヤーもいるにはいる。
「助力感謝する!!」
「戦力は次の村に割いて! 情報伝達と避難誘導!!」
「承知した! 行くぞ!!」
『『『おおおおおおおお!!!』』』
墳塞川の戦いに決着が付いて、勝利の雄叫びが戦場と化した村に届く。
村の内外には数匹のオークしかいない。ほぼ全てのオークを墳塞川で食い止めた。
ジィーク・ジ・アルティメットは倒せるのか怪しいレベルの戦況だ。
よく言って敗北イベント。
ドロップアイテムや諸々のことを考えると共闘は出来ない。NPCと違って友好的じゃないんだ。手柄を横取りするわけだからね。
「山頂に行ってみますか。何かいた気がします」
「そうしよう!」
村の命運は聖騎士団に任せて、私とウララは墳塞川の上流に向かった。
青塞の単斑山には魔王城へと情報を送る1人の魔女がいた。
魔王城から逃亡した手駒を追跡する密偵部隊――――死獲の魔女。
それは一人を指す名称ではなく、死獲の魔女は時に複数人で行動する。
魔王に命じられるままに動く魔王の手足。
天上の魔王に忠誠を誓い、魔王の統治下で生きることを許された……魔族ならざる者たちだ。
イベントクエスト「死獲の魔女を捕縛せよ」
魔王の情報を得る目的で……それ以上にイベント情報を得る目的で魔女狩りの騎士団が産声を上げた。先導するプレイヤーは運よくクエストを発見した聖騎士の1人。
聖騎士は聖騎士団に加盟すると、もう1つのイベントクエストを受ける。
村の防衛はそのクエストを達成するため。
しかし推奨レベルを知らない聖騎士たちは、イベント進行に振り回されて烏合の衆と化していた。
そうして村は壊滅した。
明らかに討伐させる気のないレベル142のジィーク・ジ・アルティメットがリスポーン地点である宿屋を破壊し、村の建物という建物を木っ端微塵にしながら街道沿いの村へと襲いかかる死獲行列に戻っていく。
ユニークイベントクエスト「誉れ高き聖騎士団」
推奨レベル200のイベントクエストで聖騎士たちの心には火が付いた。
「あの魔女を吐かせろ」
「ごもっともで」
聖騎士NPCの好感度を根こそぎ持っていった敵の存在が奇しくもそのクランを団結させた。
拙作を読んでいただきありがとうございます!!




