第三十三話『イベントシーンに登場する3人』
死獲行列は蜂の巣にされていた。
女王の一声で墳塞川の畔に拓かれた農村にオークの先遣隊が解き放たれる。
不死の軍勢は女王の尾びれだ。
世界を統べる破壊の化身、ハディース・ノヴァは支配下に置いたアンデッドで鉄壁の守りを築いている。
ノヴァの闇を象る三対の鉄塊が引きずられていく。
「ブピァアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」
「かかれぇえええええ!!」
『おおおおおおおおおおおッッ!!!』
戦場跡に軍馬が駆ける。
その数は500超。
進軍する死獲行列と墳塞川で激突した聖騎士団に混じって竜箒が水上を翔ける。
「分断分断分断分断ぁあああああっ!!!」
「星迭斬りです!!」
パッシブスキルを貫通する星迭斬りはオークの先遣隊に一矢報いるイベントスキルだ。
ジィークの衛星地で得られた攻撃スキルで、ウララが加護の代わりにスキルを求めたのが発端。お餅は純魔法職でジィークの加護を持っているので攻撃スキルまでは取らなかった。
数多くの村を滅ぼしたオークの先遣隊にプレイヤーは手こずっている。
墳塞川の手前で食い止めようとしたプレイヤーたちは墳塞川で戦う術がなく本隊に狙いを変えた。
オークの先遣隊は当然、死獲行列の一部で攻撃が通りにくい。
レベル100オーバーのモンスターが徒党を組んで襲撃するので、イベントシーンで必ず現れる聖騎士団でさえ太刀打ち出来ない。
襲撃イベントだ。
王都襲撃イベントを大本命とする襲撃イベントが始まった。
「先陣切ってなんぼだよね! フルスイング!!」
「ブモォオオッ!!?」
「剛墜の楔刃! 一匹一匹が強いです!」
「倒してるじゃん!!」
ジィークの衛星地で拾い集めた星迭鉱石はウララの武器になった。
一振りの大太刀が鮮やかにオークの四肢を舐めとる。
籠楼の獲竜箒の後部で抜群のバランス感覚を発揮するウララは、足元で斧を振るう私のことなどお構いなしにアヴァンギャルドオークへと止めを刺す。
派手な武器を有するイベントモンスターはプレイヤーの集中攻撃でかなりのダメージを貰っていた。
星迭武器は何を隠そうイベントモンスター特攻だ。
レベル100のプレイヤーがフィールドをくまなく探索しても見つからないような隠しエリアで見つけたイベントNPCはスキルまでくれた。私たちの知り得る情報でオーガの先遣隊は叩き潰せる。
まあこれでも攻略組に追いつこうとしたサービス開始組。
有利になる情報は秘匿する。
イベントシーンで活躍してこそしのぎを削る攻略組の末端だ。聖騎士団にはクランを結成したプレイヤーが数十人と戦っていて決死の抵抗を続けている。
「あいつらDPSがおかしくないか!?」
「イベント武器なんだろう!!」
「普通に倒してやがる! 武器だけじゃないだろ!?」
ダメージ倍率は軽く数十倍は違う。
斬撃速度、クリティカル倍率、そして特攻武器の全てが揃った。
墳塞川に広がったオークの先遣隊を縫うように撃滅する。
討伐スコアを増やしてイベント開始で勢いを付ける。ウララが倒すとドロップアイテムは自動収納。
チュートリアルを熟したんだ。
最下位種族と蔑まれながら苦渋の時を過ごしたこともある。
「やったるでえ!! ヒャッッハァーーーーーーッ!!!」
「ブモオオオオオオッ!?!」
ムスペルシュートで祭壇の大斧を投擲してウララの攻撃を確実に通す。
籠楼の獲竜箒で水面を滑走し、跳躍するウララの真下で円を描いてフルスイング。
フォーミュラアウトとジャックブースターで離脱して聖騎士団に委ねる。
「ぐぎ……!?」
「【ドミネートヒール】!」
「か、感謝する……! うおおおおっ!!」
「戦線復帰が早くて結構だよ!」
瀕死の聖騎士を【ドミネートヒール】で回復させて、各個撃破に持ち込むプレイヤー陣を横目に、私たちは一塊となった部隊を散らしていく。
死獲行列本隊の進軍ルートは村から多少ずれている。
街道沿いにある大きな村がターゲットだ。
村1つ守ったところで快勝とは呼べないので、聖騎士団は死に物狂いでオーガに斬りかかる。
待っているのは次なる戦場だ。助ける義理はないけど戦線の崩壊は避けたい。
「オリジナルを狙います!!」
「了解だよ!」
ウララが星逸の大太刀を収納して【武器召喚】を発動する。
私も祭壇の大斧を仕舞った。
王竜武装と竜箒で墳塞川を渡ろうとするジィーク・ジ・アルティメットへと奇襲を仕掛ける。
レベル142。
先遣隊の後方に控えていたイベントポップのアンデッドモンスターだ。
アンデッドの巣窟で死したNPCの凝集で、怨念の籠った6本の巨腕が死獲行列のボスと重なる。
武器で挑まないのは敵に奪わせないためだ。
6本の巨腕にはそれぞれ武器を有する。
剣、槍、刀、斧、杖、槌。
敵を屠るほどその武器はより強化される。最前線の街から確認されているレイドモンスターの一体で、襲撃イベントではかなりの人気を集めている。
両脇に控える二体はレベル115とレベル118。
レベル115のジィーク・ジ・アルティメットを弾丸並みの速度で叩き斬ったウララに続いて、私は6本腕にフルスイングをお見舞いする。
「【キリングエッジ】!!」
「グガォォオオオオオオオオッッ!!!」
「つっよ!?」
刀の先端がジャキンッとこちらに向かう。
振りかぶった斧と槌が交差して、立て続けに刀が川岸に突き立てられた。
「ムスペルシュート!! 武器破壊からかなぁ!?」
「ガアアアアアアアアアッ!!!」
どす黒い刀身にムスペルシュートをぶつけてブランクダッシュで攻撃範囲に入る。
アルティメットライズで竜箒の裏に逆立つ推進翼を刀身に走らせて武器を握る巨腕を狙った。
「必殺【パンチャーバレット】!!」
至近距離からジィーク・ジ・アルティメットの頬を叩いて悪魔じみた巨手にフルスイングを1発。【パンチャーバレット】は猫騙しにもならず、大きく振り上げられた巨腕と杖が私の頬を掠める。
「ただの面斬り!! 『サ学』勢を舐めるなぁああああっ!!」
「勢力があるんですか!? あるんですね!!」
「うどん屋を戦場に変えるボロネーゼ信者は邪悪!!」
イタリアン風焼きうどんでいいじゃないか!! メニューにそうあるんだから!!
うどん屋を定食屋と勘違いするメインキャラとハッピーエンドを迎えるためにボロネーゼ信者を片っ端から闇討ちした『サ学』での経験は『JCO』で活きてくる! うどん屋でフォークを持ってみろ!! ボロネーゼ信者は抹殺対象ぉおおおッ!!




