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隠密ジョブのメレンゲレンジ  作者: タ別


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第二十七話『王竜の眷属獣』




 サーチベリーは私たちの元を巣立った。パーティーを組んで攻略したいと譲らなかったんだ。

 フレンドリーファイアをリスクと捉えるかは人それぞれ。

 ウララとお餅はリアルフレンドなので、アイテムの融通や武器の又貸しなんでもござれだ。レイドマップまで体よく出荷してとびきり優秀な魔法職を養殖している今日この頃。ウララとは裏で結託した。


「そのうち噛みつき攻撃の方が効くようになるの!?」


「なりますね! クエストを熟したお陰で攻撃手段はありますが!」


「メ゛エエエエエエエエエエッ!!?」


 二人のNPCが戦闘に加わってヴァルハワームの捕食モーションを引き出す。

 特定武器に対する防殻を幾重にも纏ったヴァルハワームは、猛毒と麻痺を受けて状態異常耐性が強化されつつある。魔法による防殻で攻撃時には発揮しない。


 祭壇の大斧では歯が立たなくなって王竜武装に切り替えたけど初めから武器相性が悪かった。

 ウララは武器相性の悪い強敵に備えてサブ武器を持っている。

 破壊属性の付与された髑髏の竜鞭はヴァルハワームの防殻を削いで急所を作る。


 防殻の隙間を貫いてリアルな触手を捌いて目減りするHPゲージが五割を下回った。

 武器の錬成が範囲攻撃に追加され、私たちの攻撃がそのまま返ってくる。


「魔法系モンスターの弱点は!?」


「物理攻撃です!!」


「あったまいい~! ヒャッハーーーーーッ!!」


「ヒャッハーってなんですか!?」


 ヘッドバットの掛け声! 火神守護紋の耐久は折り紙付き!!


 墳塞下流域で生贄を求めるレベル75のデビルシェイカーがドロップしたデビルシェイカーの滅輪。新規プレイヤーの尊い犠牲があって五匹と遭遇している。アイテムは沢山持たせたよ?


 首に刺さったリングを点滅させて、時に自力で引き千切りながら自爆するデビルシェイカーは、墳塞下流域というフィールドを整えた立役者。

 デビルシェイカーは大自然族が近くにいると低確率で首輪を引っこ抜いて土に埋める。どさくさに紛れて逃亡するので、リングなしの個体が街道で目撃されることもしばしある。


 シールヴァルの内情が壊滅的なのもデビルシェイカー狩りを確立したプレイヤーたちによる「レイドマップでパーティー解散術」が主な原因だ。

 フレンドリーファイアを気にするのが野暮と思える悪魔の所業で、幸運にもウララは【マジックシェイカー】を習得するに至った。適正レベルを下回っているとデビルシェイカーはポップする。


 レッサーデーモンは【マジックサイト】という探知魔法の魔導書をドロップした。

 【クイックソナー】よりも探知精度が高く、効果範囲は対象のオブジェクトに及ぶ。はぐれたフレンドの探知に一役買ってくれる魔法だ。


 火神守護紋は【マジックサイト】の魔導書を強化素材にした。

 お餅には私たちのいる場所がはっきりと分かる。


「お餅が近くにいる……!」


「まだいないです! カシーに斧系スキルはないですよね?」


「ない! その武器強いよね! 拾い物!?」


「そうなります!」


 PKドロップかな? 私が願いの大地で草を食んでいる間にウララは立派なPKKになっていたよ。


 髑髏の竜鞭は着実にヴァルハワームの防御を崩していく。

 連携がかちりと嵌まると、ジャックスキルのフォーミュラアウトで瞬間火力が一段階跳ね上がる。フィニッシュソウルも温まってきてヴァルハワームの回避より速くフルスイングで傷口を打つ。クリティカルの入った感覚は二撃続けて返ってきた。


「もう一撃!!」


「猛毒ポーションを使います!」


「私が囮かな!?」


 ウララは毒石納品でゲットした猛毒ポーションをヴァルハワームの口に放り込む。

 ジャック・ザ・ポーチを活用していて猛毒ポーションはすぐさま使える。

 糸玉攻撃を祭壇の大斧で薙ぎ払い、状態異常となったヴァルハワームの範囲攻撃をいなす。カウンターとばかりにムスペルシュートをお見舞いして攻撃箇所を吟味する。


 ヴァルハワームは私たちの攻撃にただ耐性を得るだけじゃない。

 強固になった防殻で攻撃をいなしてカウンターを放つ悪魔のようなモンスターだ。


 魔導書の一つドロップしてくれる。

 ヴァルハコングは防御魔法の魔導書をドロップするらしいし、特殊ポップのレアモンスターは魔導書を持っている。しかもレイドマップの外縁に現れた王竜の眷属獣だ。


「武器の攻撃力で殴るのが正攻法ですか!」


「ベメ゛メ゛ェエエエエエッ!!!」


「「え」」


 HPが四割を下回るとヴァルハワームは天高く武器を飛ばした。


「回避ぃーーーっ!!」


「うああああっ!?」


 疲労困憊気味の少女は刀と斧の雨が降ってきて逃げ惑う。

 騎士は防御スキルで凌いでいた。範囲攻撃の内側にいたのでヴァルハワームと戦うのは承知の上。魔導師の少女は生産色が強い。


「二人は飛び道具を持ってないの!?」


「持ってませんん!!」


「先ほどの戦闘で使った……!」


 二人はレベル40後半で、装備は一級品とは程遠い。

 騎士は武器を失ってラウンドシールドのみ。ヴァルハワームに囚われていたので防具の破損は深刻だ。度重なる範囲攻撃で無駄にダメージを受けている。

 しかしヘイトを取ってくれる。MPは温存しているため【ドミネートヒール】で回復させた。


 【ドミネートヒール】は消費MP50で回復効果はゲージ参照。

 オレンジゲージだとグリーンゲージまで回復する。HPの半分が回復すれば儲けもの。

 発動コストが高いからか状態異常にも効果がある。

 魔女の職業補正かなと思わなくもない。レベル50のピュアリザードがドロップした魔導書なので、発動者のステータスが魔法効果に影響する。


 状態異常全般に強い魔女は耐性スキルを獲得することが稀だ。

 ハオーラは持っていなかったし、魔人ガリトーを倒しても獲得しなかった。

 呪い耐性はレアスキル。

 『JCO』に触手耐性がない以上、触手攻撃は呪いの類ではと警戒している。


「支援火力参上!」


「お餅!」


「デビル二匹に捕まった! 助けて!」


「トレインしてきたんですか!」


 お餅はデビルシェイカー2匹とレッサーデーモン数匹を引き連れてきた。パゾースの安全をかなぐり捨てて合流することを優先した。こっちにも回復が必要になる?


「メ゛ェエエエエエエエエエエエエッッ!!!」


「レッサーデーモンを倒します!!」


「了解! 【ファイアジャベリン】!!」


「【キリングエッジ】! フルスイングでかっ飛ばすよ!!」


 ヴァルハワームは手頃なモンスターがやってくると襲いかかった。

 デビルシェイカーは仮にもレベル75。

 しかしプレイヤーを狙う余り、ヴァルハワームの存在に気付かずに丸飲みにされてしまった。


「自爆は!?」


「メ゛ェ……!?」


 デビルシェイカー2匹を平らげたヴァルハワームは様子がおかしくなる。

 起死回生の手札を持って生まれたデビルシェイカーは首のリングを引き千切って特大の手榴弾と化した。




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