第二十五話『墳塞下流域』
墳塞下流域の適正レベル帯は50から75。
クエストを受けて王都センクシムに向かおうとすると、墳塞下流域からレベル60前後のヴァルハコングが出現して全滅必至の旅路となる。
「パーティーを組めて……いえ、パーティーを組めると大変嬉しいんですが!」
「パーティーは組めないよ」
シールヴァルにやってきたサーチベリーを鉱山村に呼んでレイドマップの探索開始だ。
サーチベリーはイベントフィールドの最前線に向かおうとして盗賊に襲われ、北部の街を諦めてシールヴァルに辿り着いたプレイヤーだ。宿場町は闇が深いから野良のパーティーも組めない。
「フレンドリーファイアには注意してね!」
「あの人、魔法の威力がおかしいです!!」
「お餅は罪な女だよ!」
パーティーメンバーじゃないからフレンドリーファイアが起きる。
魔法の威力が桁違いのお餅は鉢植え係に就任したパゾースを守る位置から高火力の【ファイアジャベリン】を放つ。レベル55のレッサーデーモンが結構な確率で状態異常になっている。
祭壇の欠片を鉱石ギルドに納品すると得られるのが【ファイアジャベリン】の魔導書だった。
お餅の火力アップに魔導書は必要なので、レッサーデーモンのドロップする魔導書を狙っている。サーチベリーはオマケで着いてきた。誰一人としてパーティーを組んでいない。
パゾースはパワーレベリングの最中で、ウララのパーティーに編成されている。
ハンデイの予想通り、鉱夫通りの建物を買い占めると足枷がなくなってパーティーに加わった。かなり散財してしまったもののパゾースのスキル構成を知れたし私たちの装備進化まで行えた。
ベレット鉱石は無毒化すると武具の強化素材になる。
鍛冶屋は鉱夫ギルドと連携していて、無毒化されたベレット鉱石を大量に保管しており、パゾースは魔法の威力補正を付与する魔導師だった。
魔導師の転職条件は最低レベル35なので、パゾースが鍛冶師から魔導師になったのは確かだ。鉱山村に鍛冶ギルドはないので、謎の石弓ギルドが怪しいと睨んでいる。
それで私たちの装備が進化した。
パゾースは鉱夫通りの大家で家具なども製作している。
鍛冶や採掘の他にも木工や裁縫を習得しており、【火神鍛造】で服飾系の防具すら強化、進化可能。余所者には優しくないけど、好感度を上げると心強い味方NPCだ。
ウララが装備進化に使ったのは原形を留めていないほどの猛毒を帯びたベレット鉱石で、毒耐性を鍛える目的であえて装備に猛毒を付与する元暗殺者。
お餅の装備は魔法の発動速度と威力補正のある組み合わせで、オリヴァーの標石とベレット鉱石の二つが使われた。強化自体はベレット鉱石で、装備のセット効果が滅茶苦茶高い。知力250の装備だ。
私の装備、元はレベル1素材なのでとても猛毒には耐えられないと、無毒化されたベレット鉱石とアドロスの雫が使われた。シャフトラインドレスは王竜騎噴脚を無理なくカバーする防具となった。
アドロスの雫は明狂の銀鉱山に生息するラヴィンバードが極稀にドロップする宝石で、石弓ギルドにはラヴィンバードの討伐クエストがある。個体数が少なくて討伐難易度の高いモンスターだ。存在が謎な石弓ギルドはそういったモンスターを相手にしている。ミスリルゴーレムもそのうちの一体だ。
それならクエストを受ければいいじゃないかと石弓ギルドで調べたけど……討伐クエストを受けるために採掘場を離れるとプレイヤーのいらぬ関心を買う。
控え目に言ってかなり美味しい狩り場だ。
美味しい狩り場を独占している一人になったので討伐クエストはやめておいた。
フィールドの洞窟をしらみつぶしに探すプレイヤーだっている。
「まあしかしレッサーデーモン討伐は受けて良かった!」
「十体は物足りないです!」
「クリア判定はEですね」
「そういえばクリア判定があったね。忘れてたよ」
四人で同じクエストを受けてモンスターを奪い合ったのでクリア判定は底辺。
クエスト経験値は微々たるものでサーチベリーは残念がっている。
レッサーデーモンのひしめく悪魔の巣窟は避けつつレイドマップの奥地に進んでいく。
墳塞下流域のモンスターはフィールドに悪影響を及ぼす。
そのためシャフトで土を耕してもレアモンスターはポップしない。レイドモンスターの支配下にあって悪魔系モンスターが精強だ。コークスリザードも悪魔系モンスターに数えられる。
「ジャックの最終形態だよね」
「違って欲しいですね」
「何のことです?」
「このフィールドにいるレイドモンスターのことだよ」
不吉の悪魔。
レベル444のグレーターデーモンだ。新月になるとマップ全域に出没する。
ジィーク関連だと討伐が新たなモンスターを呼び起こす。
ジャック関連だと単純に嬉しい。ジャックの最終形態であって欲しいよね? レベル444はジャックの加護(大)だよ。違うかな……死なずの大地は近いし。
「悪魔です?」
「悪魔だよ。戦ってみる?」
「ここはコークスリザード一択です! パーティー組んでください!!」
ジャックの恐ろしさを知らない感じ? パーティーを解除してもステータスポイントは戻ってこないよ? ジャックの加護を持っているプレイヤーは大真面目に敬遠される。
ゴボーラのあのヒールっぷりも分からなくないんだ。
パーティーを組んでレベルが上がっても、ステータスポイントは1ポイントしか貰えない。
大自然族に騙されると後悔するだろうね。人によっては激怒するだろう。
「仕方ない。サービス開始組の1人として『JCO』のタブーを教えてあげよう」
「タブーがあるんです?」
「ジャックと口走ったプレイヤーには背後霊がいて、そいつはジャックの形をしているかもしれないんだよ」
「怪談話です!?」
「『JCO』の話」
ジャック付きはパーティーメンバーを道連れにすることをしっかりと教えておく。
ステータス激減の恐ろしさは理解してくれたので、ジャックの魅力については墓まで持っていこうと口を閉ざす。チュートリアル全クリマシーンは私1人で十分だよ。
二日間でパゾースがレベル50に上がってウララが名案を閃いた。
パゾースの能力値で最も高いのは器用だ。
NPCであってもジャンヌの加護で極振り状態を作れるので、魔導師でありながら魔法の才能がないパゾースは器用に一本化しようとお餅のパーティーに加えられた。地味に世界樹の苗も効果があるんだよね。
「わっ! ピュアリザード!!」
「討伐です!」
そして探索3日目。
レベル50のピュアリザードがポップして、解放されしムスペルシュートが炸裂した。
「やったぁああっ!! 魔導書ドロップ!!」
「「おおお~っ!」」
「回復魔法!? そうだよね!?」
純白の魔導書を拾い上げてアイテム名を確かめる。
「【ドミネートヒール】? 回復魔法だよ!」
「カシーが使ってください」
「夢の回復職」
「夢の姫プが遠のくよ?」
お餅はべっと舌を出した。破壊不可2号には可愛い舌がある!




