第二十一話『美しき王竜』
シールヴァル騎士団が王竜ヴァルハルリカと会敵した。
お餅の【クイックソナー】で戦況を把握しつつ、急こう配の峠道にポップするトートプレスディアを倒す。お餅は索敵特化なので討伐するのは殆どウララだ。私は鉢植え係だった。
「王竜が移動を始めたよ」
「こちらに向かってきますか。索敵はなしで」
「了解」
私はこの場に留まって陽動。
二人は峠道を少し登った場所に息を潜めてヴァルハルリカに攻撃を仕掛ける。
『Qugyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!』
「獣みたく襲いかかる!」
地面を砕いて勢いよく飛翔する。
悪魔じみたピンクの尻尾に【プロントランチャー】が掠めて、地面が砕かれる直前には間合いに入ったウララが続く。平地では届かない距離でもウララの大太刀はヴァルハルリカを捉えた。
フルスイングですれ違い様に叩き斬り、空中で急旋回したヴァルハルリカの追撃に備える。
シールヴァル騎士団との激闘でスイッチの入ったヴァルハルリカは機動力が増した。単純な出力ではなく柔軟なフットワークによる機動力の増大だ。攻撃の精度を上げてくる。
「片目が塞がってる!?」
「塞がっています!!」
「爪の破壊をしてみるよっと!」
ムスペルシュートで祭壇の大斧をヴァルハルリカの爪にぶつけて振るわれた尻尾を軽やかに回避。
大ぶりのフックでがら空きの胴体にウララが斬りかかる。
両翼をはためかせて中空に逃れるヴァルハルリカに【パンチャーバレット】をお見舞いしてダメージを分析する。っと、そのブレスモーションは範囲攻撃?
「ブレスの軌道が変わるよ!」
『Gioooooooooooooooooooooo!!!!』
長い首をくねらせたヴァルハルリカは灼熱の息吹で新たな峠道を築いた。
状態異常、火傷だ。
防具の性能が低すぎるせいでブレスの余波で状態異常になった。少しの間は装備効果と拮抗してくれるので祭壇の大斧を回収してからキュアポーションを飲んでおく。
開墾クエストでゲットしたバフ効果ありのキュアポーションで状態異常は効きにくくなる。環境耐性のバフ効果だ。ポーションの作り手よって追加効果は変わってくる。
過信しなかったというかアイテムテキストを読んでもバフ効果は分かりにくい。
効果があるのはたった今知った。
燃え盛る植物に近づいても火傷状態にならないし、燻ぶる地面を踏み越えて反撃に転じられる。
「地面に繋ぎ止めます!!」
『Gyaaaaaaaaaaaaaaa!!!』
「剛墜の楔刃!!」
「膝カックン! 【キリングエッジ】!!」
フルスイングで飛びかかり、私は片脚に攻撃を集中させる。
ウララが大太刀で尻尾の先端を繋ぎ止め、刀2本で攻撃するほんのわずかな時間を稼ぐ。それはVRゲーム初心者のお餅も同じだ。
「【プロントランチャー】!!」
『Gyoaaaaaaa!!?』
真正面からまるで臆さずに魔法をぶっ放したお餅は、知力の欠片も感じない攻撃力1000の大杖を振るう。インテリの持つ魔法のロッドだけど知力を感じない。攻撃力1000って。
ヴァルハコングはヴァルハルリカの生息域を目指して墳塞下流域を南に移動する。
中ボスで街道の邪魔者、しかしてレアモンスターだ。
ポップ条件が明らかとなっていて、遠征クエストを受けるとポップ率が上がる。ウララは王都からハオーラ市街に移動するクエストを受けて倒しまくったらしい。
武影の刀は職業補正でレアモンスターのポップ率上昇がかかる。
レイキーアに装備を作らせようと思い立ったウララは、デミゲートディアの毛皮と手頃なヴァルハコングの毛皮を集めた。そしてお餅の装備に化けた。
「お餅ぃいいいいっ!! ジャックスタン!!」
「シャフトスタンだよー!!」
ブランクダッシュとダブルシャフトでヴァルハルリカの咢をかち上げる。
スキル攻撃は行わずにアルティメットライズを発動、フルスイングで待ち構えて生え際を祭壇の大斧で刈り取る!! やけに平たい脳天のクッションは見切った!!
『Guaooooooo!!?!』
「まだまだぁ!!」
片目を庇ったヴァルハルリカへと立て続けに武器を薙ぐ。
伐採の斧で開墾の斧で、きっと飾られていた祭壇の大斧だ。大自然族殺す殺すマシーンと化したゴボーラの血と涙の結晶だ。騎士の武器にするのが勿体ない戦士の武器である。魔女は戦士だった?
「ていやっ!!」
果敢に攻めるお餅の攻撃でヴァルハルリカはよろめく。
溜めを作ったヴァルハルリカが首を引っ込めて、灼熱の息吹で周囲一帯を焼け野原に変える。
ムスペルシュートで投擲した祭壇の大斧に追従し、スリップダメージで死にかけながらポーションを取り出す。ヘイトを取ったのは私で回復を待ってはくれなさそうだ。
「【キリングエッジ】……!!」
「ぐっ!」
「ウララ!?」
ヴァルハルリカの爪を受け止めたウララが吹き飛ばされる。
大太刀を咥えながらってかっこよすぎじゃない!? 防御スキルで受け切って被ダメージは大したことない。刀2本は砕けてスキルエフェクトを纏っている。
「ごめん! 防具を変えるんだった!!」
「五分は持ちこたえます!! 村で整えてきてはどうですか!?」
ウララはヴァルハルリカの体当たりで瓦礫によるスリップダメージを受けながら迷いなく刺突を繰り出す。
ヴァルハルリカが飛翔し、明後日の方向を気にする素振りが奇妙に感じる。
『Cuaaaaaaaaaaaaa!!!』
「へえっ!? 首が柔らかすぎませんか!?」
「真下に潜った!?」
ぐにゃりと1回転して長い舌がウララを絡めとる。
触手みたいに分裂する気色悪い舌だ。まつ毛は舌で整えたのかな?
「きゃあああああああっ!!?」
「ウララぁあああっ!!」
『Cyaooooooooo!?!』
フルスイングで触手攻撃を解除する!! 口にイソギンチャクを飼ってるドラゴンなの!?
「た、助かりました。ドレイン攻撃です」
「スキルエフェクトが消えた!?」
「消えましたね。あれは食らいたくないです!」
「同感」
祭壇の大斧を食われなくて良かったと心底思いつつ、積極的に攻撃を行うお餅が風圧で飛ばされないように支える。尻尾は狙い目だ。ウララのスキル攻撃は通っている。
「意地でも竜窟広場に向かいます!!」
「私が殿かな?」
【パンチャーバレット】は魔力の無駄なので封印する。
祭壇の大斧は杖じゃないので、魔法攻撃の威力は乏しいのが難点だ。




