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隠密ジョブのメレンゲレンジ  作者: タ別


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第二十話『フレンドチャット』




『カシー。生きてる?』


『生きてるよ』


『シールヴァルに撤退する』


『りょ』


 フレンドチャットでお餅と短くメッセージを交換する。

 ウララとお餅はシールヴァルに撤退。

 私は御者の無事を確認してから向かう。始まりの街の遊牧民で見捨てると盗賊になる原因だ。


「攻撃範囲外に来れたかな」


 消し炭にされた馬車は見つけた。御者は運よく村方面に逃れたらしい。

 崖伝いに街道を戻ってみると数キロに渡って炎が延焼している。モンスターも雲の子を散らすように逃げていた。主戦場から離れすぎると御者にとっては危険だった。


 御者を連れてシールヴァルを時計回りに迂回する。

 フィールドは切り替わってシールヴァルの南に広がる水霊の魔森に入った。


「ブライトウォーカーが出やがった……!!」


「ボスエネミーだね!」


 始まりの街からシールヴァルへの旅路で必ずポップするブライトウォーカーが水霊の魔森を騒がせた私たちの前に姿を現した。物理ダメージ無効の半自然族モンスターだ。


 【武器召喚】の召喚武器でダメージは通るし、アンデッド特攻の祭壇の大斧で苦労せずに倒せた。

 レベルはラピスワイバーンと変わらず、討伐難易度の低い序盤のフィールドボスで、魔除けの馬車だとポップしない。フィールドボスなのでドロップアイテムは5つだった。ジィーク・ジ・アルティメットはアイテム1つだったんだよね。クエストモンスターはべらぼうに経験値がいい。


「ウララに送っておこう」


 フレンドリストを開いてメッセージ画面を呼び出す。

 フィールド上ではフレンドチャットのみ使える。掲示板などは街中限定だ。キーボード操作しか出来ないので若干不便ではある。

 設定画面には思考入力のオンオフがない。『JCO』に共通するシステム操作の特徴だ。魔法やスキルは思考操作の感度が高い。


『ウォーカー討伐したよ』


『おめ』


『南門から街に入るね。王竜はどの辺り?』


『鉱山上空です』


 上手く撒いたかな? シールヴァルを滅ぼすのはよろしくない。


 爆撃機を撃ち落とせる火力がサービス開始1か月未満で存在するとは思えず、私はシールヴァルの南門広場でウララたちと合流した。


「素通りすると思った」


「怪獣リザードマンだよ? ヴァルハルリカの王恋毛だって」


「尻尾を斬りたかったです」


 戦利品のヴァルハルリカの王恋毛は2人に譲渡する。


 ウララは私が仕掛けてすぐに蜥蜴の尻尾へと攻撃を集中させた。

 尻尾は細長くて鞭のように振るわれる。

 角はないので部位破損する尻尾を狙ったウララだ。弱点はもう1つある。


「鱗に似せた三つ編みだったよ。ドレットヘアーならぬスケイルヘアー?」


「尻尾の先端も恐らく三つ編みです。リスポーン地点を更新して挑んでみますか」


「攻撃魔法を覚えたい」


「ブライトウォーカーは魔導書をドロップしますが」


「魔導書はなかったよ」


 そういえばウララは光と闇の大太刀だ。

 召喚武器の中で最も攻撃力が高く、派手さがないので隠密ジョブには最適。詳しく聞いてみると、ブライトウォーカーのドロップする【ライトジャベリン】の魔導書を使ったそう。


「【ダークジャベリン】の魔導書はギルドクエストで得られました。魔法職だと転職で獲得しますね」


「私は【キリングエッジ】だったよ。伝授は出来ないの?」


「継承スキルがいるようです。高位の魔導師が有するレアスキルで魔導書の大元です」


「魔女は覚える」


 お餅は自信ありげだ。魔法職だし覚えるかな?


 リスポーン地点を更新してから闇市で魔導書を探すことになった。

 シールヴァルは発展の遂げた宿場町だ。

 面積はハオーラ市街の5割未満で、廃坑まっしぐらの鉱山を抱えている。プレイヤーの進出によって鉱山は活気立っているものの、好き勝手に馬車を利用するのでシールヴァルの闇商人は増加の一途だ。


「【プロントランチャー】の魔導書があります」


「強いの?」


「発動速度が遅くて飛距離のある魔法です。十分使えますね」


 気前よく買ってくれるウララの資金力が気になりながら低品質のMP回復ポーションを買い占める。闇市には生産プレイヤーが熟練度上げで作ったアイテムが結構集まってくる。


 アイテムがデータの闇に消えることはない。『JCO』では街で消費される。

 インベントリには消去機能が標準で、市場にアイテムを流すか否かを決められる。ゴボーラの装備はこの街で売り払おうかな? 闇市に掘り出し物として転がっている装備で1等賞を取れる。


「防具屋を覗いてくるよ」


「分かりました。私は広場で情報を集めています」


「すぐに行くよ!」


 一旦ウララたちと別れた私は防具屋でゴボーラの装備を売却する。

 しめて30万コモン。

 墳塞下流域から現れる中ボス、ヴァルハコングの毛皮で製作。強化されたマントで素材の品質が高いとピンクに染まる。ゴボーラの連れていた騎士は見目麗しいヴァルハマントだった。ゴボーラの装備は強化数が5でヴァルハコングはかなり倒している。それと鉱山にポップするミスリルゴーレムだ。


 大自然族のプレイヤーは鉱山に集まってミスリルゴーレムのポップ率を上げている。

 あのゴボーラがパーティーを組んで討伐していたとは思えない。

 ましてや大自然族だ。あれだけ小馬鹿にして散々貶しておきながら大人しくパーティーを組む? 横からレアモンスターを掠め取って優越感に浸るド腐れ外道なのは身をもって経験した私だ。祭壇の大斧は有難く使わせて貰うよ。


「借りた3mは計画的に返済するよ」


「山分けですよね?」


 小金持ちになった私はウララにコモンを搾り取られて閑散とした広場をげっそりと見回す。


「シールヴァル騎士団が出陣するぞ!」


「おおっ! 王竜討伐か!?」


「倒してくれぇ! あいつに馬車を奪われたんだ!」


 御者の男が野次馬に混じって声を上げる。

 騎士団の登場だ。

 銀一色のフルプレートアーマーに身を包んだ30人余りのレイドパーティー、その先頭に立っているのは5人のプレイヤーだ。殿には三人のプレイヤーと騎士らしくないNPCが2人。攻略組なのは一目で分かる。討伐クエストが発生したんだろうか?


「行くぞ!!」


 プレイヤーの号令でシールヴァル騎士団は出陣する。


「私たちの出る幕はなさそう?」


「ないですね。しかし鉱山村に誘導出来るかもしれません。戦いやすいエリアです」


「騎士団は街道に向かったよね。そうしよう!」


 私たちは街道から離れた位置の鉱山村に向かう。ウララには目的地だ。

 明狂の銀鉱山。

 麓の鉱山村はモンスターの襲撃で廃村となって久しく、シールヴァルにほど近い鉱山村には奴隷NPCがいる。鉱山の半分を所有する鉱夫が鉱山村の長で奴隷を従えている。捕まったPKerが鉱山送りになって脱獄ライフを満喫する。よくある現象でPKerは一定数いる。





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