第十八話『セカンド放牧地』
「クエストアイテムですね。採掘地は王都周辺の洞窟です」
「貴族関連だよね?」
「港間を渡る配達クエストはそれ以外に考えられませんね」
ゴボーラがドロップしたのは草原の夜を切り取った拳大の宝石だ。
アイテム名はアーツクトゥイ皇妃蜂晶。
アーツクトゥイがどんな人物かはともかく、王都周辺にはアーツホーネットの洞窟があって、採掘ポイントが確認されている。
光に透かしてみると緑から赤みがかった色に変化する宝石でアクセサリーの強化素材として使える。三付華の帽子を強化したいので出所を知りたくなった。
始まりの街に到着してお餅はおめかししている。
ウララの持ってきたデミゲートディアの毛皮と街道にポップする中ボス素材はお餅装備に。装備を整えるだけで加護持ちは覚醒するからね。道中でお餅はレベル20に上がった。
ジィーク・ジ・オリジナルを提供して、瞬間風速で仲間を増やすことにした私だ。チュートリアルクエストは気長にクリアしてもいい。
「私は採掘を取ります。シールヴァル行きの馬車を探してくるので」
「気を付けてね、ウララ」
「念のため裏から出ていきます」
そこまでする必要はないよ? 隠密ジョブって変わり者が多いのかな?
「あ。私のポーチいる? 鉱石でも沢山入るんだよね」
「貰っていいんですか? チュートリアル報酬ですよね?」
「いいよ。私にはジャックがいるし」
ジャックとパーティーを組んでいるとインベントリは実質2倍。
ステータスは元通り以上になったので、ジャック・ザ・ポーチはウララに差し上げた。
「ジャンヌの場合でもポーチになるのかな?」
「1000キロは鬼畜です」
「王都まで這っていく勇者はいないかぁ~」
「勇者じゃなくて猛者か狂人です」
レイドイベントを見据えるウララはありがとうと感謝してから屋敷を出ていった。
ウララはコモン稼ぎで採掘を取る。
お餅は知力お化けでMP上げに勤しんでいる。魔法を使いまくるしかないんだよね。
「おっ。ジャンヌ情報がある」
掲示板にはジャンヌクエストに関する情報があった。
第1のジャンヌクエスト。シャフト100キロ。クリア報酬はトレインポーション1個。
第2のジャンヌクエスト。シャフト300キロ。クリア報酬はトレインポーション5個。
第3のジャンヌクエスト。シャフト500キロ。クリア報酬はトレインポーション10個。
トレインポーションはモンスターの出現率が2倍になるポーションだ。
製法は不明。NPC販売はされておらず、手軽に得られるのはジャンヌクエストのみ。
攻略組はレベリングにトレインポーションを使いたいので情報を広めている。
「トレインポーションしか得られないよね……攻略物資みたいだけど、チュートリアルは4段階。最後に貰えるアイテムは共通かな~。ジャック・ザ・コインは貰えないんだね」
極振りステータスの隠し職業は未発見なので調べる価値はある。
合計してシャフト1900キロだ。
高レベル帯のフィールドを駆け回るのは大自然族でも困難で、チュートリアルクエストは時間の無駄だと断じられている。ネタ装備で喜びたくなる神経を培うのがチュートリアルクエストの本質である。持論だよ? 『JCO』運営は確かにこのゲームを攻略させるためにチュートリアルクエストを用意した。
全クリは義務。
お餅にも諦めて欲しくないので悩ましげに逡巡する。
「カシー。屋敷の壺渡りが楽しくてハマった! やったことある?」
「私はないよ? お餅は採取スキルを取る? シャフトするには願いの大地がいいんだけど」
「この街でシャフる。畑を買って?」
「えーっ!」
「反対なの?」
そりゃあ渋るよ! 願いの大地があるじゃん!
「ハオーラは畑エリアの4分の1を持っているって」
「うん? どういうこと?」
「牧畜ギルドの管轄で魔女の土地だからハオーラは牧畜ギルドのマスター」
「……えっ!?」
そういうこと!? ハオーラが牧畜ギルドのマスター!?
「カシーなら買える」
「えっと、畑は間借りしよう? 買うのはちょっと」
「ジャンヌの放牧地にしていいか聞いてみて」
丁度、ハオーラが屋敷に戻ってきた。仕方ない。聞いてみるか!
購入には桁が1つ足りないと言われて、ウララに相談してみるとぽんと3mを渡された。
「髑髏宮は儲かりマルゲリータです」
「たまに着いて行けない時があるよ……」
ウララの資金力で畑エリアの4分の1、9ヘクタールの角地を購入することが叶ってしまった。
ハオーラの屋敷から近いため、お餅はいの一番にシャフトで向かった。
私とウララは柵でも立てようかと話し合って、話の流れで私は伐採スキルを取ることになった。
「伐採ギルドは何処にあるかなぁ」
「採掘ギルドの向かいにありました。行けば分かります」
「お餅に採掘ポイントを探すように言っておく?」
「あるんですか?」
「埋蔵金でも見つからないかと思って」
くすくすと笑うウララに釣られて私も笑った。魔女の土地に埋蔵金があって欲しいよ。
名のある商会が密集する中央広場を通過して伐採ギルドに入った。
カウンターの前で仁王立ちする大男がいたのでフラグでも踏んだのかと勘繰る。NPCだ。
「こんばんは。私に何か?」
「お前の名は?」
「カシーです。伐採スキルを教えてください」
「オレはギルド長のコアラだ。何か分からないことがあれば遠慮なく聞いてくれ」
握手の構えを見せると男は普通に応じてくる。
友好的なギルド長に見えるし、伐採ギルドはアットホームなのかな? って、コアラ?
「……生き方が。まさか」
「ではよろしくな」
のんびりした話し方でのそのそと歩き去る。コアラの耳は帽子で隠れていた。
ギルド長が獣人族という衝撃の事実に震えながら、その日は開墾クエストを受けてゴボーラの斧を有効利用する。ギルドに登録する手間などはなく、世界観的には鑑定で見分けが付く。
今は黄色のカーソルなので、ギルド長には警戒されたんだろう。
それとも世界樹の苗を持っているからか。ウララに一生着いて行こうと張り切って開墾する。
ゴボーラの斧はファンタジー金属、ミスリル鉱石で強化しまくった祭壇の大斧だ。
ウララが【武器鑑定】を持っていてアイテムの詳細を調べてくれた。
攻撃力1800。
自惚れるのも納得の破壊力だ。装備条件に筋力50と知力50があってかなり扱いやすい。武器にお金をかけるのは結構だよね。恨み神髄のゴボーラが目に浮かぶようだよ。
「開墾、楽しいなぁ」
誰でも受けられる開墾クエストで、木こりはレベリング出来てしまう。
木こりには職業補正でクエスト経験値の上昇がある。
開墾クエストは拓いた土地で得られる経験値が決まるので初心に帰った気分で没頭出来る。願いの大地では経験値にならなかったけど始まりの街周辺では経験値になる。
深夜過ぎまで開墾して伐採ギルドに戻ってくる。
開墾クエストの達成報告を行うと、レベル52からレベル55に上がった。




