第十七話『ジャンヌと水切りお餅』
ラピスワイバーンの縄張りを通過して始まりの街から願いの大地までショートカット。
ウララスプーンがモンスターを瞬殺するので私はみっちり機動スキルを鍛えられた。ステータスではレベル68のウララスプーンと同等で切実にパーティーを組みたい。
「ジャックが二人になるんだよね」
「探すのが大変です」
「草を刈るしかないかな?」
みりあと待ち合わせをしているので、小動物を探す感覚で放牧地を探索する。
大自然族のプレイヤーは見当たらない。
カーソルを見つけるのが難しくて、土に埋まっているとまず発見は不可能。ジャックの放牧地には牧草ジャマーが働いていて、見えないものを見つけるには探知スキルが鍵となってくる。
「カシー! ウララスプーン! あっちに誰かいるよ!」
「ジャックが見つけてくれた!」
「ブラウニータートルがいます。倒しますか」
「パーティーを組むとドロップが2つになるよね?」
「知りません」
そんな……! ドロップアイテムはシェア出来るよね!?
ウララスプーンがさくっとブラウニータートルを倒すとブラウニータートルの骨をドロップした。パーティーを組んでもドロップアイテムは2つにならない。
「来てくれた。私を助けると思ってステータスポイントを恵んで」
「ポイントの譲渡は不可能であります」
真っ白な花が独りでに揺れる。ジャックじゃないの?
「どちら様で?」
「私はジャンヌであります。ジャックの母です」
「ジャック・ザ・ママーなの!?」
「ザは余計です」
大自然族は大家族だった!? ジャックの母なら残り2人のことも知っている……?
「……僕はこの人のこと知らないよ?」
「ジャンヌ。お前を火刑に処す」
「私のハークシャーーーっ!!」
水切りお餅の命令でいち早く動いた私は火打石で真っ白な花を燃やす。身体が勝手に!
「嘘吐きジャンヌですか。どんな出現条件なのか分かります?」
「大自然族の羊飼いで10回ガチャしてみた。ステータスポイントは残らず知力に注がれた」
「ジャンヌの加護で? 掲示板では有名なの?」
「加護で調べると出てきます」
極振りの加護まで実装されているとは。しかもナチュラルに嘘を吐く狂人AI。
「ジャンヌの加護(小)だよね?」
「うん。加護(中)にして大どんでん返し」
「装備条件に知力のある装備を作りますか。呪い耐性は難しいですが」
「ジィーク案件だからね」
私はガリトーを打ち倒して3つのスキルを得た。
1つは呪い耐性。
パッシブスキルで加護の力を高めるには呪い耐性の熟練度を上げることが先決だ。可能ならジィークの加護を得てから解放したい。レイドイベントが待ち遠しくなる。
水切りお餅はレベル8だった。
ジャンヌの加護でステータスポイントは知力に極振りされる。
「鉢植えを持ってきたよ。小さいのはジャンヌ用ね」
「放牧地の土を持っていく給仕がいります」
「ウララスプーン?」
特大軽量スプーンを取り出したウララスプーンは鉢植えに土を入れていく。ダジャレかい。
「私とパーティーを組んでパワーレベリングですね」
「私は鉢植え持ってるよ~」
加護に全ステータスを作り変える力はないので、高レベルのプレイヤーはパーティーに編成させられる。加護の力が重要だと分かった頃には手遅れだ。
しかしジャンヌの加護にステータスポイントの返還はない。スキル系統は不明。
「カシーは敏捷が高い。それともスキル効果?」
「ジャックは機動スキル全般に成長補正のかかる加護なんだよ。ジャンヌは?」
「私の加護は力の神髄であります」
「なぞなぞになってないよ」
チュートリアルクエストはジャンヌの加護でも変化なし。
大自然族がチュートリアル種族で、大自然族の羊飼いに限ったものじゃない。
加護は切り離して考えるのがプレイヤーだ。
ジャンヌの加護はランダムで極振りになる。
システム的には最も高い能力値にステータスポイントが自動割り振りになるらしい。
「ジャンヌ・ダ・ルークの呪いが大元」
「う~ん。極振りプレイヤーの損なった部分を補うから……よく分からないよ」
「お餅が加護で得たのは【クイックソナー】です。索敵系のスキルではないですか?」
「索敵魔法があるもんね」
【クイックソナー】、MP消費は15。使えない魔法を寄こすなと言いたくなるよね。
「それで何の苗を植えたの、ウララスプーン?」
「ウララで構いません。能力値の上昇補正が付与された世界樹の苗です」
鉢植えに苗を植えたウララは平然と言う。
「世界樹の苗? 凄いアイテム?」
「王城に忍び込んでお姫様を脅して手に入れたそうです。1株いくらで売っていました」
「王都怖い」
騎士団の足止めに誘われたウララスプーンである。
10万人のプレイヤーがいるんだ、王都ではっちゃける輩も出てくる。
後ろ暗いアイテムは闇市で取引される。
ウララは墓地で出会ったプレイヤーに話を持ちかけられたらしい。怖すぎる。
「王都地下の髑髏宮がいい狩場です。そういえば髑髏姫の椅子を探していましたか」
「髑髏姫の椅子って?」
「お仕置きモンスターを封じるキーアイテムです。カシーの見つけた骨で作れますか」
「採取したくなるね~」
そんな話をしていると一番会いたくないプレイヤーとエンカウントした。華麗にスルーしよう。
「……カシー? カシーだと!? なんだそのアバターは!!?」
駿馬に乗った山賊もどきの騎士が声を荒げる。怨敵ゴボーラだ。
「敵に注意して」
「分かりました」
「ま……待てぇええええええ!! ここで会ったが百年目だぁああああッ!!」
安易に街道でランプウルフ狩りをするんじゃなかったと小さく項垂れる。
「【武器召喚】」
「武影の刀かぁああッ!! この俺のッ! 邪魔をするなああああッ!?」
ウララは雑魚を見る目でゴボーラを斬った。
レベル差は歴然。
ゴボーラのHPは一撃で風前の灯火となった。容赦するつもりはないのでフルスイングで撲殺する。
「山賊だよ。ドロップが美味しいね」
「レベル15になった」
「カーソルの色が変わってしまいましたか。黄色はセーフですね」
PKでカーソルの色は変化する。
黄色はAIが裁定中。
ウララは緑色なのでPKしたのは私だけだ。コモンが大量に入ってきた。
「20万コモンだよ? また来ないかなぁ」
「ウララは大丈夫でカシーだけアウト?」
「前にボロクソ言われてMPKした相手なんだよね。あ~、すっきりした!」
「私は変わらなかったんですか」
撃退だとまた狙われる。
PKしてゴボーラは装備一式と換金アイテムの宝石をドロップした。武器の両手斧は更新していて恥ずかしげもなくマントを身に着けていた。PKされると裸一貫になる、と。




