第十四話『ハオーラの願い』
拝啓、ウララスプーン様。
『JCO』をいかがお過ごしでしょうか? 私は魔女になりました。
魔女です。スリップダメージに強い、あの魔女です。シャフト暮らしがとても快適になりました。滑らかなシャフトで本日は廃村に住み着いた盗賊団を蹴散らそうと思います。
「ヒャッハァーーーーーッ!!!」
「「ぎぃえええええ!?」」
所詮はレベル10か20の盗賊たち。
遊撃として恵まれたステータスを有する魔女2人が突撃を仕掛けると一網打尽だ。王都でよろしくやっているウララスプーンには呪いのことを黙っていることにした。
「久方ぶりに旧友の顔を拝みに来たと思ったら……やるじゃねえか!!」
「っ!?」
「ハオーラ!」
盗賊団の親玉が煤けた深紅の大盾でハオーラを突き飛ばした。
上半身には鎧。両腕と両足に装備はなく、狂戦士じみた風貌のNPCだ。
「必殺【パンチャーバレット】!!」
「なんだぁお前はよ!!」
魔箒の後端で片脚を2連撃。
魔法攻撃と同時に魔箒のかぎ爪でダメージを与える。ブランクダッシュの速度補正と魔女の高いステータスで刺突攻撃を繰り出せる。本命は上段からのフルスイング!!
「軽い!!」
「ハオーラ、脚を狙って!!」
「ええ! 【フレイムアロー】!!」
「ぐっ!? がはッ!?」
確実に態勢を崩させるとジャックの進化したスキルが脳天まで貫く。
シャフトスタンで回避が間に合わず、倒れかかる親玉にハオーラのレイピアが届いた。
「お前……は、ハオーラなのか」
「……ええ」
「大きくなったじゃねえか! オレを覚えてないか!? 魔女になるとはお前の兄も滑稽だなぁ!!」
旧友はレイキーアだと? 盗賊団の親玉と繋がりがあるとは……【キリングエッジ】!!
押され気味なのはハオーラだ。
そこにはレベル差がある。それに知人という迷いがある。
「ハオーラ!! こいつを倒して話を聞くよ!!」
「オレを倒す? 言ってくれるなぁ!!」
武器の相性は悪くない。シールドバッシュはフルスイングで相殺する。
「あなたを倒すわ、ガリトー。【アイスジャベリン】!!」
「チィッ! 魔女は厄介だな!!」
「それは私のこと?」
空っぽの胴体は武器にも防具にもならないので、足払いに石火の魔箒を追従させて多段ヒットを狙う。
「うおらああああっ!!」
ガリトーは深紅の大盾で大地を裂いた。
「どうだ見たか!? オレは死なずの大地で蘇った戦士だ!! 不死身なんだよ!!」
人外じみた跳躍に暗色のエフェクト。
HPが半分を下回って強化系のパッシブスキルが発動した。筋力と敏捷の強化だ。
「【キリングエッジ】!!」
「食らうか!!」
防御の反応速度すら上がっている。
徐々に隙のなくなる硬派なスタイルで狂戦士は見せかけみたいだ。HP減少がトリガーになるスキルはもうないと思いたい。
機動力で上回る私はガリトーの攻撃を見極めつつハオーラと挟撃してスキルを吐き出させる。
「斬撃は効きにくい! 気を付けて!」
「いい目をしてるじゃねえか!!」
「目があるように見えるの? いい帽子でしょ?」
三付華の帽子で自然回復速度が心なしか上がる。
HP、MP、SP全てだ。
ジャックの加護(中)になって、MPとSPは100を超えている。
手数の少なさは飛び道具で補える。
ジャック・ザ・ポーチという便利アイテムがあるので、攻撃力50の鋼鉄のダガーが10本入っている。ラブリー村で受けた討伐クエストのクリア報酬だ。鋼鉄のダガー10本で鋼鉄の短剣を作れる。
「只者じゃないよ、カシー!」
「そうだね。時間経過で効果が上がるスキルだった!?」
「お前からなぶり殺しにしてやろうじゃねえか!!」
ガリトーの機動力が上がった。
時間経過による敏捷上昇まで備えている。戦闘開始から5分がトリガーみたいだ。
「私が誘き寄せる!!」
「分かったわ!」
「逃げたって無駄だ!! お前らは生かして返さねえよ!!」
「それはこっちの台詞!!」
ガリトーは死なずの大地と言った。
レイドマップの裏側にあるフィールドで、アンデッドモンスターがひしめいている。
かつて北方の魔王が布陣して、人族国家を脅かした主戦場。
死なずの大地で蘇ったアンデッドが目の前にいるんだ。レイキーアは無事なのか心配になってくる。
「ハオーラ! 今!」
「【アイスジャベリン】!!」
「ぐがっ!」
形振り構わず攻撃する私ににたりと嗤ったガリトーに氷の槍が直撃した。
井戸に落とそうとしたのはお互い様で、ハオーラの攻撃が好機となって【パンチャーバレット】をぶつける。ジャックスタンはここぞとばかりに威力を発揮する。
「効くかぁあああッ!!」
「らああっ!!」
フルスイングで深紅の大盾を留め、ハオーラが間合いを詰めて一閃。
「ガーデンスピア!!」
鬼特攻の攻撃スキルがガリトーを貫いて倒し切った。
「カシー、様子がおかしいよ!!」
「が……ハハハハハハッ!! 蘇る!! オレは蘇ル!! ゴガアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
死んだはずのガリトーは全身が獣に飲まれてモンスターと化す。
「序盤のボスで第2形態!?」
レベル85。ジィーク・ジ・アルティメット。
NPCが化け物になったのはクエスト進行におけるボスだからか? 巨人の血を色濃く引き継いでいる設定だった? いやいや、呪われたNPCなんだよね!?
「ジャック! ジィークに聞き覚えは!?」
「ジィークは僕の兄弟だよ! 死なずの大地に住んでいるんだけど……」
「ハオーラ! 隠れて!!」
「わ、分かったわ!」
「ゴガアアアアアアッ!!」
フルスイングで打ち合って箒を掴まれながら反撃を行う。ダメージないと言っても怖い!!
「【キリングエッジ】!!」
「ガァアアアアッ!!」
「いまいち効いてないかぁ! ステッキの方が戦えるかな!?」
シャフトで距離を取って素早く装備を変更する。
ジャック・ザ・ステッキの攻撃力は300。石火の魔箒よりはダメージを入れられる。筋力1でも振り回せる超軽量杖なのが最大の強みだ。
「ガアアアアアアアッ!!!」
「動きは鈍重!! HP15000? 上等!!」
「援護するわ!」
「ハオーラは魔法攻撃で弱点を探って!」
ハオーラはレベル37。魔法は【フレイムアロー】と【アイスジャベリン】の2つ。
威力を見込めるのは【アイスジャベリン】だ。発動コストが高いのでMP回復を待つしかない。
第一形態でMPを使い切って、私は攻撃の隙を伺うので手一杯だ。それはハオーラも同じ。
「盾ゲット! 逃げるのもありだけど!」
レイキーアには迷惑この上ないよね! ごめん! ちゃんと倒すから許して!!
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