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隠密ジョブのメレンゲレンジ  作者: タ別


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第十三話『魔女カシー』




「助かりました、カシー! 次はパーティー組んでください!」


「パーティーは組めないよ」


 旧ドビニオス領の街道でランプウルフ50匹を討伐してハオーラ市街に戻ってきた。ランプウルフは3匹から5匹でポップするので、私がヘイトを取っている間にサーチベリーが1匹ずつ倒していった。


 ほくほく顔のサーチベリーは足取り軽く表通りの防具屋に向かう。

 サーチベリーはレベル22に上がったので装備を一新してからもう1度討伐クエストを受ける。パーティーは断ったものの安定して経験値を得られるのは助かるんだよね。ジャックのレベルがぐんぐん上がる。


 まあ今日はおしまいと断って、私は雑貨屋で箒を受け取った。




・石火の魔箒(大自然族専用)

攻撃力 250

魔杖職人の製作した石と火を象る箒。戦う目的を得た大自然族に寄り添い続ける。




 洗練された攻撃力を持つ箒に仕上がっていた。

 武器耐久値も折り紙付きで、予備の武器にするのは勿体ない。迷わずメイン武器に決めた。

 ジャック・ザ・ステッキと比較すると、攻撃力が劣る分のリーチがある。使い慣れると石火の魔箒でランプウルフを蹴散らせる。ジャック・ザ・ステッキはネタ装備なのが玉に瑕。


 石火の魔箒を標準装備にハオーラ市街の中心を散策する。

 ハオーラの魔女は変わった馬車に乗っている。

 トープトダイルの実を巨大化した堅牢な馬車で、それがハオーラの魔女を象徴する移動アイテムだ。


「馬車発見。ギルドの方からやってきたね」


 東西の門を繋ぐ大通りで馬車を見つけたので追ってみる。

 軍馬四頭に牽かれた馬車で速い。

 プレイヤーの足では追いつけそうにないので、ブランクダッシュで壁を登って屋根伝いに移動する。


「はっ!? 箒で空飛んでる!?」


「飛べるのか!?」


 土を耕すシャフトで一直線に飛翔する!

 石火の魔箒があるとシャフト移動しやすく、助走を付けて空を飛ぶことも出来てしまう。

 街中移動に特化したストーンシャフトがあるので、シャフトの熟練度を上げると似たような効果が生まれる。石火の魔箒は戦闘用だけど、大自然族の戦う目的は1つに限らず!


「おおっ、花畑のあるお屋敷? 魔女の拠点かな?」


 魔王平原から目と鼻の先にある屋敷に馬車が入っていく。

 小さな噴水に綺麗な花畑。

 魔女はお嬢様キャラ? 大商会の娘が暮らすような屋敷だ。あの噴水が気になる。


「魔女様、屋敷にお着きしました」


 御者の竜人族が声を発する。

 私は馬車に続いて屋敷に侵入すると噴水に隠れた。ぺろりと水を舐める。しょっぱい。


「花に水をやってちょうだい」


「畏まりました」


 気付かれた? 海水かもしれない水を採取して……あ、クエストクリアした!




『隠し職業転職クエスト「土に宿りし花乙女」をクリアしました』


『アイテム「三付華の帽子」を獲得しました』


『カシーは隠し職業「魔女」に転職しました』


『カシーはレベル33からレベル34に上がりました』




 魔女の屋敷に海水があった。1日でクリア出来るクエストだったよ!

 海水の湧き出した噴水は多分この屋敷にしかない。

 花畑に植えた植物も原産地は海岸付近なのか尖った葉が見え隠れしていた。


 御者とは鉢合わせないように馬車を挟んで屋敷の正面に立つ。水やりで海水を使うんだね。

 扉をノックすると魔女はすぐに出てきた。


「誰かしら?」


「魔女カシーです」


 クリア報酬の三付華の帽子を被って挨拶する。

 ハオーラの魔女はレイピアを携えたドレス姿の美少女だった。紺色の髪を腰まで伸ばしており、青い瞳は何処かチグハグだ。イヤリングとネックレスには赤い宝石。海の魔女っぽくはない。


「まあどうぞ。歓迎するわ」


「突然お邪魔します」


 ほんのり不貞腐れた表情なので無礼を詫びておく。いいなぁ~、広い屋敷!


 巨人族でも不便のない造りに大自然族の行き来可能なインテリア。

 ハオーラの魔女は正義のヒロインだ。

 食堂でお茶を頂いてしょっぱい味に魔女だなーと改めて思う。お茶? フリーサービスだよね?

 使用人はおらず御者が1人のみ。プレイヤーが忍び込んでも生きて帰ってこれる。


「名前を窺っても?」


「ハオーラよ」


「この果実、美味しいから食べてみて」


 ジャック・ザ・ツリーの果実でハオーラのご機嫌を取ってみる。

 ハオーラの魔女がハオーラ。この街のヒロイン。牧畜ギルドであくせくと働く一面がある? 可愛いなぁ。大自然族ではなさそうだし人族の魔女だよね?


「酸っぱくて美味しいわ」


「ジャックが栽培してくれたんだよ。出てきて、ジャック」


「僕はジャックだよ!」


「願いの大地にいる……あなたがジャックなのね」


 ハオーラは器用に果実の粒を食べるので俄然気になってくる。


「ハオーラはこの街に住んでどれくらい?」


「生まれも育ちもこの街よ。今は私が屋敷を切り盛りしているわ。兄上が戻ってこなくてね」


「お兄様がいるんだ。食べ方がレイキーアにそっくりだよ」


 がたりと椅子が動いた。


「あなたは兄上をご存じなの!?」


「うん」


 変わった屋敷でエントランスホールにフルプレートアーマーと杖の形をしたランプがあった。屋敷の客人が見えるような配置ではなく、屋敷にいる主人が物憂げに見るような配置だった。

 それだけなら騎士を想像するけど、知り合いでハオーラと似ているNPCがいた。レイキーアその人だ。


「人鬼の東森を越えた先の廃村にいるんだよ。大自然族だから辿り着けたんだよね」


「……兄上のことだからカラクリがあるわ。廃村なんでしょ? 探すわ。手伝ってくれる?」


「いいよ。仲違いしたわけじゃないよね?」


「分からないわ。私が魔女になったせいなのかも」


 発生したクエストでは読めない裏事情がある。ハオーラの願いは何としても叶えよう。




『NPC「魔女ハオーラ」がパーティーに加わりました』




 クエストを受注するとハオーラがパーティーに加わってしまった。


「あ、不味い。パーティーメンバーになると弱体化が……あれ!?」


「どうしたのかしら?」


 ちょ、ちょっと待って! ヘルプヘルプ! ジャックの加護が進化したぁ!?




-----


PN:カシー

種族:大自然族

職業:魔女

状態:ジャックの加護(中)

レベル:34


HP 10

MP 53

SP 49

筋力 15

敏捷 43

器用 20

耐久 10

知力 31

幸運 16

残存ステータスポイント 366


魔法 【パンチャーバレット】

    【キリングエッジ】


スキル シャフト

     ブランクダッシュ

     フルスイング


     フィニッシュソウル

     テンタクルヴェール

     ブランソレイユ


装備 石火の魔箒 シャフトラインドレス(+5) シャフトラインヘアー(+5) シャフトラインブーツ(+5) シャフトライングローブ(+5) 三付華の帽子


 -----




 ステータスがぶっ壊れた!? い、いや正常化されたの!?

 ジャック・ザ・リッパーの呪いに打ち克っている!! 魔女って呪いが効かない感じ!?


「……え、っと、ハオーラ。魔女って呪いに強いの?」


「強いわよ。当たり前じゃない」


 知らなかった……!! 私は勝ったんだよね!? チュートリアルクエストに勝ったぁ~~!!


「ステータスポイント、他のプレイヤーよりも1ポイント多く貰えてるし」


 366なので内訳は32レベル分の5ポイントと1レベル分の6ポイント、それと初期ステータスポイントの200だ。ジャックの加護(中)だとレベルアップで獲得するステータスポイントが2割増になる。


 ジャック付きの魔女は強い。

 ハオーラの状態にもジャックの加護(中)が付いたので滅茶苦茶強くなる。





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