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隠密ジョブのメレンゲレンジ  作者: タ別


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第十二話『旧ドビニモス領』




 隠し職業転職クエスト「土に宿りし花乙女」は海水を掬ってくるとクリアする。

 隠密系の隠しジョブで、大陸の縁に行かせたがる。

 まるでぴんと来なかったのでレイキーアに海に行くと伝えてその時に色々と聞いてみた。


「華人……女であれば魔女、か。やんごとなきお家柄だと貴族や騎士がベターになるよね。ダークサイドってことかな? まあ知ってた」


 竜人族や獣人族は文化が違う線もあるけど、主要3国の右端にある人族国家の更に右端にいる。

 攻略組はレイドマップの開拓で大忙しだ。

 王都まで辿り着いたプレイヤーも王都方面から開拓していてイベント待ったなしの状態だとか。


「東海岸に行くよりは王都センクシムに向かうよ! 感動の再会がそこにあるっ!」


「王都センクシムで感動の再会!?」


 ラブリー村から約2日の距離に海がある。

 しかし王都センクシムは巨大な湾岸都市とのこと。魔女の海水採取は王都センクシムしかない!


 岳灰の農場跡を出て人鬼の東森を通り抜けるとハオーラ市街が見えてくる。

 ここが始まりの街だ。

 殆どのプレイヤーが序盤に拠点とする街は、第2陣のプレイヤーたちでごった返している。大自然族が一人いても浮かないのはラブリー村で実証済みだ。ジャックを入れると2人だったね!


 ショートカットするつもりで街に入ったわけじゃないので、路地裏にひっそりと佇むハオーラ随一の雑貨屋に。魔杖の売っている店で、隠密ジョブの真が教えてくれた老舗だ。


「いらっしゃい。変わった杖だね?」


 エルフの杖職人は心なしか楽しそうに話しかけてくる。


「見て分かるんだ? 腕利きの職人が作ってくれたけど、武具強化は苦手だったみたいで。良かったらこの杖を見て欲しいな」


「ふむ。若造が作った杖にしては芯の座った造りの魔杖だね。この程度の魔杖では私は満足しないが」


 トランペットにされないかな? それは勘弁して欲しいよ。

 店内にはランプや宝石などの雑貨が所せましと置かれている。アイテム購入画面を見てみると、数種類の杖が売っていた。どれも魔法使いの杖だ。


「強化に必要な素材は分かる? なるべくしっかりとした杖にしたいんだよ」


「元の素材があればいくらでも強化のしようはあるが……かなりあるのだね?」


「集めてきたんだよ。これも使える?」


 ジャック・ザ・リッパーの枝20本とブラウニータートルの骨三本を取り出す。


「ブラウニータートルの骨とは珍しい。強化素材としてももちろん使えるだろうが、これだけあれば新たらしく魔杖を作れるね。どうする?」


「それなら魔女の箒を頼もうかな?」


 レイキーアにお願いしようか迷ったけど一抹の不安があった。

 何故ならネタ装備を作った男だ。

 魔女の箒を作るなら偏屈な大裁縫師よりも老舗の魔杖職人の方がいいに決まっている。


「服飾職人は知らない?」


「この辺りにはないから表通りに行くことだね」


「じゃあ行ってくるよ。箒はよろしくね」


 表通りの防具屋か~。大自然族には敷居が高いんだよね。

 ブランクダッシュで裏路地を抜けて、プレイヤーの行き交う表通りを見て回る。防具屋の看板はあれかな?

 貧民街に片足を突っ込んだ裏路地と石畳で舗装された表通りではがらりと景色が変わる。街の外壁に金をかけすぎたツケが各所に見え隠れする悪い街だ。大自然族には有難いけども。


「ど……どうぞ~」


「!?」


 冷や汗を流す店番NPC。私を見て驚愕するプレイヤー。

 顔無し女デュラハンがいると誰だってモンスターを疑うよね。私は控え目な装備だと胸を張っている。


「驚かせてごめんね」


「あ、いえ。自然族の方です?」


「大自然族です」


 獣人族の少女アバターで目をまんまるにしている。どう見ても透明人間だよね!


「この装備を進化してくれる裁縫師はいる?」


「……ハオーラでは難しいかと」


 始まりの街だし装備の進化までは行ってくれないか……手持ちの素材は乏しいから次の街で探そうっと。確かシールヴァルだよね。鉱山の街と聞いている。


「レベル15です! サーチベリーと言います!」


 暇潰しに防具のラインナップを見ていると獣人プレイヤーが自己紹介してきた。


「カシーだよ。私は羊飼いだから貧弱アバターなんだよね」


「でも強そうです。フレンドになってください!」


「フレンド? まあいいよ」


 本当に弱いからね? レベル15は格上プレイヤーだよ。

 強いプレイヤーとフレンドになれて嬉しいのは私なので注意して欲しい!


「アクセサリーで帽子は作れる?」


「それでしたら。しかし大自然族様の装備ですと難しいかもしれません」


「対応装備になっちゃうか。素材買い取って」


 道中で集めた素材を売って所持金は5万コモンを超えた。

 王都まで最低1週間の道のりだ。

 街間を移動する馬車があるのでほんの少し興味がある。ずるじゃないよね?


「カシーはパーティーを組まないです?」


「組まないよ。私はこの街に来たばかりだし、大自然族は移動方法が変わってるんだよ。レベリングなら少しの間付き合えるけど」


「次のフィールドでレベリングしたいです!」


「魔王平原・旧ドビニモス領だよね」


 長ったらしいフィールド名なので記憶に残っている。

 魔王平原は魔王が滅ぼして実質支配下にあるフィールドを指す。

 北方の魔王、南方の王竜が大陸における絶対の覇者で、レイドマップに出現するのも魔王の眷属か王竜の眷属。人族国家では魔王が活気立っていて、魔王の眷属たちが水面下で動いている。


 始まりの街で分かるのは大雑把な勢力図くらい。

 レイドイベントの発生は既定路線のようなので、魔王平原にプレイヤーが集中するのも時間の問題だ。


 魔王平原・旧ドビニモス領の適正レベルは20から30。

 ランプウルフを倒せると余裕で突破出来るフィールドだ。平原地帯で見通しも効く。


「ランプウルフは倒し慣れてるから街道を通る?」


「討伐クエストを知ってます!」


「なら受けてくるといいよ。ギルドクエスト?」


「ギルクエです」


「五十匹討伐は一人で大変だよね」


 サーチベリーは盗賊なので盗賊ギルドに向かっていった。

 私は牧畜ギルドを覗いてみる。ハオーラ市街で3番目か4番目に幅を利かせていそうなギルドだ。


「何かギルドクエストはある?」


「ええ、ございます」


 機械的に答えた受付嬢は気にせず私はギルドクエストを流し見する。


「……荷運びが多いね。魔女はいる?」


「ハオーラの魔女がおります」


 いるんだ、魔女。





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