第十一話『チュートリアルクリア』
チュートリアル20日目。
夏休みを折り返して新規プレイヤーを見かけるようになった。
その間、大自然族のプレイヤーと遭遇したのは1度で、私はラブリー村に向かって放牧地を広げつつ村の兵士から討伐クエストを受けた。チュートリアルクエストに用はないのだとシャフトシャフトパンチでやってきた。
-----
PN:カシー
種族:大自然族
職業:羊飼い
状態:ジャックの加護(小)
レベル:28
HP 5
MP 40
SP 35
筋力 13
敏捷 35
器用 16
耐久 10
知力 28
幸運 12
残存ステータスポイント 0
魔法 【パンチャーバレット】
スキル シャフト
ブランクダッシュ
フルスイング
フィニッシュソウル
テンタクルヴェール
ブランソレイユ
装備 ジャック・ザ・ステッキ シャフトラインドレス(+5) シャフトラインヘアー(+5) シャフトラインブーツ(+5) シャフトライングローブ(+5)
-----
レベルアップで能力値の自然上昇は6から7。
加護なしだとレベルアップボーナスでステータスポイントを5ポイント獲得する。
加護ありの私は自然上昇する能力値が高確率で7ポイントになる。
そんなこんなでようやくレベル1のプレイヤーと同じステータスを手に入れた。
気合の入ったレベリングで、スキルは新たに3つ増えている。
フルスイングは読んで字の如く。ジャック・ザ・ステッキを筋力1で振り回して獲得している。
テンタクルヴェールは与ダメージがない場合、装備の損耗を減らしてくれる優秀なパッシブスキル。
ブランソレイユは戦闘時にSPの自然回復を促進するパッシブスキルだ。
装備は村の防具屋で強化して貰って強化上限に届いた。
強化素材はジャックシープの毛だ。
1つの装備品を最大強化するのに15個。計60個で強化したので耐久は3倍以上になった。
そこまで準備してからランプウルフを狩りまくってやっとの思いでレベル28になった。
「熟練度100……熟練度100……それ以外は考えない!!」
「ゴールまで後少しだよ!」
シャフトに、そして願いの大地に親しみのある私はジャック・ザ・ツリーの植わったゴールを見据える。
第四の関門を突破する。
心のないチュートリアルクエストを4度もクリアするプレイヤーは私くらいだ。
熟練度のためにやってやる。
万シャフトで最前線に追いついてやるのだと私は闘志を燃やしていた。
「チュートリアルクエスト……これで4度目クリアだぁ~~~っ!!」
私は勝利のウィンドウを見上げる。
『チュートリアルクエスト「シャフト1000キロ」をクリアしました』
『アイテム「ジャック・ザ・ポーチ」を獲得しました』
『カシーはレベル28からレベル33に上がりました』
『隠し職業転職クエスト「土に宿りし花乙女」を開始しますか?』
うおおおおお~~っ!!?
チュートリアルクエストクリア!? 全クリした!? リアル5度目はなかった!!
というかレベル!! レベル5も上がってる!!
チュートリアルクエストをここまでクリアする奴はいないだろと高を括ったか!! でも確定レベル5だと終盤のレベリングで使った方が賢い? 隠し職業って?
ぱかーんっと、立派になったジャック・ザ・ツリーで果実が弾ける。甘酸っぱいザクロで鳥型のモンスターが飛んでくるようになった。
ジャック・ザ・ツリーの果実はラブリー村で高く売れるので鼻歌混じりに採取する。
装備のお陰で採取には困らなくなった。全種族対応の装備だとこうはいかないので、シャフトライン装備には強化に強化を施した。レイキーアにもいくつか持っていこう。
「今更歩いて移動するのもね。ジャック、ラブリー村に行くよ」
「ラブリー村だね!」
熟練度100が加算されてシャフトの熟練度は500を超えた。
夏休みが終わる頃には熟練度が1000になっても不思議はない。熟練度の上昇率は変わらないんだ。消費SPではなく移動距離が反映される。
「速い速い!」
ブランクダッシュを発動してシャフト移動で牧草地を駆ける。
これまでジャックのシャフトに引っ張られてシャフト移動の速度が上がっていた。装備なしだと空気抵抗がないのでその分の速度上昇もある。
シャフト移動で浮力が生まれるのも物理エンジンが正常に働いている証拠だ。大自然族は進化を重ねる種族なので飛ぶ鳥を落とす勢いでフィールドを突き進める。
「加護のお陰だよね! 頼りにしてるよ、ジャック!」
「うん! 僕だって戦えるよ!」
ブランクダッシュの熟練度は最大値が10000に固定された。
ジャックの加護があると機動スキル全般の習熟度が上がりやすくなる。恐らくシャフトに限らない。
ジャックは五つ子と言っていた。
機動スキル全般がジャックだとすると、攻撃、防御、補助、生産スキルの加護がある。
キャラメイク時に決まってしまうものではなく、大自然族のNPCとしてこの世界で出会えるんだ。
加護で得られるもの。それは強力なスキルに尽きる。
ジャックの加護で機動スキル全般は他のプレイヤーと一線を画す性能に昇華され、フィールド攻略の遅れを取り戻すには十分な力を得られる。チュートリアルクエストをクリアして私は強くなったんだ。
「到着っと!」
「そいつを捕えろ!!」
「え?」
待ち伏せしていたプレイヤーが門の兵士に命令する。何処かで見たことあると思ったらゴボーラだった。
「彼女は大自然族だと言っただろう!?」
「大自然族は害悪だ!!」
気のいい兵士を困らせるゴボーラは不遜な態度で道を塞ごうとする。
「通るよ、門番さん。ランプウルフ十匹、確かに倒してきたから」
「ああ。いつも助かる」
私は討伐クエストの報告をしてから新規プレイヤーで賑わうラブリー村に入る。
背後にゴボーラが回り込んだのでフルスイングでぶん殴った。ジャック・ザ・ステッキの攻撃力は鋼鉄の長剣並みだよ?
「ごぎゃあっ!?」
気絶状態になったので侮蔑の視線を向けて歩き去る。
ラブリー村は賑やかな村だ。
そして他種族にとても寛容な村人が多い。形だけでもホッガを助けたので居心地は良かった。
形だけになってしまったのは通りかかった馬車にホッガを乗せたから。
相手がゴボーラだしても頼っただろう。大自然族に友好度ゼロとは思わなかったけど……そういえば謀殺したんだっけ? ゴボーラが悪かったよね?
広場に軒を連ねる防具屋に向かって、鬼人族の女裁縫師にまとめて素材を売り払う。
「【服飾鑑定】は使える? 鑑定して貰いたいものがあるんだよね」
「使えるわ。見せて」
「これなんだけど」
鑑定魔法を持っていたのでジャック・ザ・ポーチを鑑定して貰った。
「どんなアイテムでも入れられるポーチね。個数は限られるけど種類は問わないみたいよ」
「重量制限はなさそう? 実際に使ってみるよ」
ジャック・ザ・ポーチを装備して、ジャックに預けたアイテムを収納する。
アイテム枠は3つで1スタックずつ。重量制限のない簡易インベントリだった。
「取り出しもしやすいね。ポーション入れにするのは勿体ないけど、強化は出来そう?」
「難しいわ。異空間に繋がるポーチよ?」
「異空間……分かったよ」
レイキーアに聞いてみるかな? 廃村まで地味に遠いんだよね。




