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空を翔ける辺境令嬢 ― 漆黒の瞳に映る、新しい世界 ―  作者: さざ波和音


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9/21

五 山に眠る青白い光

 会議が終わろうとしたとき、ヨハンが別の書類を取り出した。


「もう一つ、ご報告がございます」


「何だ?」


「北東の山にある魔石鉱脈についてです」


 エドガーは顔を上げた。


「採掘量に変化があったのか?」


「はい。先月の調査で、以前から採掘している坑道の奥に、新しい鉱脈の一部が見つかりました」


 ヨハンは、紙に描かれた鉱脈の図を広げた。


「青白い光を帯びた魔石です。大きさはまだ分かりませんが、品質は悪くないと考えられます」


「魔力の性質は?」


「調査中です。魔力を蓄える性質があるようですが、どの程度の力を保持できるかは、専門家による鑑定が必要です」


 魔石。


 この世界の山々には、普通の鉱石とは異なる、不思議な石が眠っている。


 石の内部に魔力を蓄える性質を持つもの、熱や光を生み出すもの、特定の魔法に反応するものなど、性質はさまざまだった。


 魔石は魔法使いだけが扱うものではない。


 魔力を操る技術を持つ職人たちは、魔石を加工し、日常生活に役立つ道具へと変えていた。


 夜の暗闇を照らす魔石灯。


 水を汲み上げる魔道具。


 寒い土地で部屋を暖める暖房器具。


 鉱山で空気を送り、暗い坑道を照らす作業用の道具。


 そうした品々は、魔石の性質と職人の技術によって作られる。


「魔道具の職人に鑑定を依頼できるか?」


「王都の魔道具工房と、領内の職人に相談するつもりです」


 アルベルトが興味深そうに図を覗き込んだ。


「魔石の品質が高ければ、魔道具の製作にも使えますね」


「ただし、採掘を急ぐことは許さん」


 エドガーは、ヨハンを見た。


「魔石の鉱脈は貴重だが、坑道の安全が第一だ。鉄鉱山の修繕も残っている。人手を無理に割けば、どちらも危険になる」


「承知しております」


「まずは鉱脈の規模と性質を調べること。採掘を増やすかどうかは、その後に決めよう」


 ヨハンは頷いた。


 魔石は大きな可能性を秘めている。


 しかし、その価値を知る者が増えれば、同時に利権を求める者も現れるだろう。


 エドガーは、そのことをよく理解していた。


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