ep9〜お義兄様と手紙〜
第九話投稿です。
少し短め?です。
「…皆様に相談があるのですが…」
「相談、ですか?」
不思議そうにわたくしに聞き返すシンディ。
入学から3ヶ月。わたくしたちは今、以前計画を立てたユリシス公爵邸でのお茶会をしている。中々皆の予定が合わず、開催まで3ヶ月もかかってしまった。
参加者は予定通りわたくしとお義兄様とシンディと殿下。
殿下は『楽しみにしてたんだ!ほら、土産だ!』と王室御用達のパティスリーのケーキを大量に持ってきてくださった。
こんな量どうしろと?とは思ったが、使用人達全員に配ればどうにかなるかということでありがたく受け取った。
シンディも甘い物は好きだし、色々食べられるなら嬉しいでしょう。
そんなシンディは最初『本当に王太子殿下までいらっしゃる…ああ目眩が…』と殿下がいることに倒れかけていたけど、その後思いの外殿下と話が合ったようで魔法研究について熱く語っていた。
殿下も楽しそうに研究について語るシンディが気に入ったのか、優しい目をしながらにこにこ話を聞いている。これはもしや、未来の王太子妃はシンディになるかも…と内心思ったけど、よく考えるとわたくしはそういう方面に疎いので何も言わずに見守ることにした。
そんな楽しい会の最中、ここ1ヶ月わたくしを悩ませるあることについて切り出す。
「ええ。実はお義兄様にも言っていなかったのだけれど、最近妙な手紙がわたくしに届くの…」
わたくしはつい先日使えるようになった空間魔法の中から20通の手紙の束を差し出した。
宛先はわたくし。でも、送り主はわからない。
内容は『貴女を愛しています』『貴女を迎えにいくその時まで、どうか待っていて欲しい』『貴女の薔薇のような瞳に魅入られた』のようなものばかり。
それがいつもカバンの中に入っていて…。
あまりにも届くので、最近では下校の前に机の中やカバンを確認してから邸へ帰るも、自室で見直すとなかったはずの手紙が入っている。
これを見た時は流石に怖くなった。
本当はすぐにでもお義兄様に相談したかったけど、丁度その間お義兄様はお養父様の代行で領地へ視察に行っており、すぐに連絡ができなかった。
蝶々は預かっていたのだけれど、王都から領地までの距離だと繋がらないようで昨夜遅くに帰ってきたお義兄様に迷惑になるかもと思ってこの時間まで黙っていた。
一応担任のトーリ先生には相談した。
トーリ先生は『放課後に見回っておく』と言って警戒してくれているものの、未だ改善はされていない。
ということを3人にあらかた説明したところで、お義兄様から真っ黒な魔力が漏れ出していることに気づく。顔は笑っている。しかし完全に怒っている様子。
カフェテラスで見せたあの冷たい表情よりも数倍冷たいもの。
「……私が離れていなければ…」
「お、お義兄様?ごめんなさい、もっと早く伝えるべきでしたわ…」
「いや、エリファは悪くないよ。被害者なんだから」
「そうですよ!エリファ様はただ怖い思いをしただけです!…でも、普段わたくしもずっと一緒にいますけど、手紙を入れている人なんか見たことないですね?」
「メルバ嬢もエリファ本人も気づかない内に入れているのか…どうやってるんだ?」
そう。それが本当にわからない。
警戒されている中どうやってわたくしに届けているのか…。
「まぁ十中八九魔法を使ってるだろうね。…20通近くあると言うことは毎日届けていると言うことだ。そしてカバンの中に入れているのなら放課後までの間に確実にこの送り主はエリファの席付近にいるはず」
お義兄様はそこで一息つき、また続ける。
「まぁ私が帰ってきたんだ。もう好きにはさせないよ。月曜日に罠にかけて…火曜日にはどうにかなるはずだ。エリファ、怖いかもしれないけど手伝ってくれる?」
「わたくしが…ですか?…ええ。わたくしの問題ですし、勿論お手伝いしますわ」
わたくしだって曲がりなりにもSクラスの生徒だし、何かの役には立てるはず。
「ありがとう。…ジークも手伝え。送り主の逃走先で待機しておいてほしいんだ」
「なに?逃走先の予想がついてるのか?」
「2箇所候補があってね。一つはジークなら入れる。もう一つは生徒なら誰でも入れる場所だ。そっちは私の蝶を忍ばせておくが、そこに来る可能性は低いだろう」
お義兄様は何故送り主の予想がついているのか。
それが誰なのかはなんとなく聞くことを憚られる。
「じゃあわたくしはエリファ様のお側をかたときも離れず放課後まで一緒にいます!」
「助かるよメルバ嬢。ジークは後で詳細伝えるよ」
「わかった」
「わかりました!」
「よし、では今日はそろそろお開きにしようーーー」
◇
俺の最近の日課は、この気持ちを密かに手紙にしたためて彼女に伝えることだ。
俺の愛おしいただ一人の女性。
俺にいつも優しく微笑んでくれる女性。
そんな彼女も、俺を愛してくれている。
でも今はまだ君を迎えに行くことはできない。
少し待たせてしまうけど、必ず迎えにいくから。
俺の気持ちが伝わっているのだろう。
彼女は手紙の送り主を探していた。
姿を見せることができないのがこんなにも心苦しいだなんて。
悪いとは思っている。寂しい思いをさせているね。
大丈夫。俺はいつも君の側で見守っているから。
ああはやく君を迎えにいって、君に直接愛を伝えたい。
もっと間近で君の瞳に俺を映したい。君の唇を奪いたい…。
本当にその日が楽しみだ。
その素晴らしい未来を、彼女も待ってくれている。
彼女は中々一人になることがない。
放課後も寄り道などしないですぐに帰宅している。
だからいつもこっそりと彼女のカバンの中に手紙を転移させておく。
俺は自分を転移させる程の魔力はないが、視認している場所に手紙くらいの小ささのものならそれも可能だ。
帰り際にそっと転移させれば誰にも気付かれずに彼女へ想いを届けられる。
驚かせたいから、帰宅してから見つかるよう仕掛けを施して手紙を忍ばせている。俺も彼女が驚く顔を直接見たいが、それはもうしばらくの辛抱。
帰り際、カバンを開けて俺の気持ちが入ってるかを確認する彼女のなんといじらしいことか。
邸に帰ったら受け取れるから、安心してほしい。
そんな風に密やかに俺と彼女は愛を育んでいたが、どうやら彼女の方が我慢できなくなってしまったらしい。
朝のHR後、俺の教本の間に一通の手紙が入っていた。
宛先は俺の名前。でも、送り主はわからない。
俺の手紙と同じ書き方。
こんな形で手紙を送ってくれるのは一人しかいない。
彼女だ。
封を切って中を取り出す。
そこには
『今日の放課後、教室で待っています』
と流麗な文字で書かれていた。
ああ駄目だよ。俺はまだ君の気持ちに応えられない。
せめてあと数ヶ月。
あの邪魔な男がいなくなってからでないと。
でも、気持ちは嬉しいよ。ありがとう。
それを伝えるために、俺は放課後あの教室へ向かった。
俺と彼女の愛の巣である教室へ。
はやる気持ちを抑え、歩みを進める。やはり彼女の隣に立つなら紳士的でいないと。
あと5m。数歩歩けば彼女の待つ部屋に辿り着く。
そう思っていたのにーーーーー
気持ち悪い男がマイルドになって登場。笑
お読みいただきありがとうございました!
また次話でお会いしましょう!




